空白

戸惑い 11

「抱いてもらった?」
 サエが朝帰りしてきた私のズボンを叩く。
「反応もなし。ちょっぴり妬ける。ママのあれ凄いから」
 もうミルクを飲ませたらしくおとなしく寝ている。
「ママもう乳母車をプレゼントしてくれたわ。住民票も取れるって」
「しばらく入籍はできないよ」
「それも聞いた。でも名前は考えてね。それと話していなかった私のこと。イサムって私の最初の父の名前って言ってたよね」
「そこまで聞いていた」
「3人目の男が旅回りの劇団で子役をやっていた私に日常も女の子の格好をさせたの。母は言いなりで男は勝手にサエと呼んでいた」
「その時からサエだったのか」
「ママは透だけど私は剛よ。好きじゃなかった。いつの間にか女の子の格好をしているうちに女の子になりきっていたわ」
 財布からお守り袋に入った写真を出してみせる。
「可愛いなあ」
「母が若い芸人と駆け落ちしてから、同じ布団で寝さされた。酔ったら口に含まされて最後には太いのを入れられた。そのたびに血だらけになって逃げまわっていた。気持ち良いと感じたのはイサムが初めて」
「この前やぶ医者と飲んだ。ホルモン注射を打ちに行ってたのやな」
「ええ、あの逃げた日にやぶ医者にお尻の治療してもらったの。手術をしたのはカラオケバーでお金を貯めてから」
「カオルは26歳だったけどサエは?」
「17歳」
「こんなおっさんと子供を抱えていいのか?」
「今凄く幸せ!」







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戸惑い 10

 またマネージャの車が現れた。事務所から帰る用意をしていた私を乗せて走る。
 サエと何度か入った白壁のホテルだ。
「大変な目にあってるね。妹の強姦ってやっぱり気にするよね」
「耳に入ってるのだな」
「先程までサエと話していたのよ。お祝いを置いて来たわ。子供に係きりで寂しい思いをしてるって抱いてあげてと頼まれた。さあ裸になって蒲団に入って私も欲求不満になっている」
「東田透26歳か」
「あの記者に聞いたのね。彼『白薔薇』に訪ねて来たよ。頭取もいろいろ防波堤を作っているようだけど、一度綻び始めると難しいようだわ。明日の新聞に後任の第2課長を殺したとチンピラが出頭した記事が出るわ。伊藤が指示をしたと証言する」
「そこまでする必要はないのじゃ?」
 カオルは話しながらゆっくり私のものを口に含む。恥ずかしいくらいすぐに反り返る。
「飢えてるね?」
と言ってそれを穴に導く。カオルも相当飢えている。いつもより濡れている。
「それはあなたから目を離そうとしているのよ。検察は私より修司の方が情報を持っていると踏んでいる。修司を消そうとしたのは伊藤じゃなく頭取だと見ている」
「どうして?」
「第2課の女性が連絡簿に記録を残していたのよ。押収物にあったようよ。頭取から今からいつもの部屋に行くようにと指示があったと。あの日修司は『白薔薇』に来てビールを飲んでからエレベーターを上がったと店の子が証言している。
急に予定もなくやってきた修司に私は驚いた。それで店に下りたらあなたの部下が上がってきたのを見て隠れた。彼は手袋をして真っ青な顔をして合鍵でドアを開けてガス栓をひねった」
「逃がしてくれたのか?」
「ええ」





戸惑い 9

 記者が会いたいと電話を入れてきた。それでいつもの小料理屋で会う約束をした。
「遂に『白薔薇』のママも呼ばれたな」
「知っている」
「悪いが伊藤と頭取とママの三角関係を書かせてもらった。もちろん第2課長のことは一切触れていない。それでもここまで踏み込んで書かれたのは初めてで、業界だけでなく地検からも電話を貰った」
 拡げられた週刊誌に目を通す。検察もそうだがまだ総理までには至っていない。頭取はここのラインを遮断しようとしている。でもそれは口にできない。
「ママの名は東田透だ。これは次回に載せる。伊藤と出会ったのは16歳の時だ。その時はまだ手術をしていない。当時の同僚の女に確認してきた。17歳に伊藤の店に出ている。手術費は伊藤が持ったらしい」
 記憶が全くない。
「頭取にママを紹介したのは伊藤だ。店には一度も頭取が現れたことがない。いつも第2課長が来て連絡係をしていたそうだ。頭取は直接ママの部屋に入った。その頃はビル自体が伊藤の会社から頭取の関連会社に名義移転されている」
「詳しいですね」
「ママが頭取の女になったのは19歳のときだろうと思う。その頃さらにそのビルは東田透の会社名義になっている。伊藤はその頃すでに大阪に来ている。そこから計算するとママはまだ26歳と言うことになる」
 まだそんなに若かったのか。実はサエの年齢も分からないのだ。
「新堂修二それがあなたの名前です。どうもすでに知っておれれるようですね?今年で32歳。第2課長は大抜擢だったそうです。あなたは新橋支店で営業成績を上げて本店に呼ばれたそうです。あなたはママとよく新宿の店で飲んでいた。店の主人は仲のいいカップルと言ってました」
 そんなに楽しい時間があったのか。
「あなたが逃げ出したのは頭取にばれたからではありませんか?」
「分かりません」







戸惑い 8

 サエは子供の世話でまったく相手にしてくれない。それに飲み屋に行っても本人とは知らず妹を孕ませた噂が飛び交っている。ここまで悪者にされては飲んでいても気分が悪い。夜中に妹の体を縄で縛って入れたと言う話がまことしやかに伝えられている。そこまで勝手に話をでっち上げるなと暖簾を出る。
「ホテルで飲まない?」
 流し目の女アヤだ。腕を抱えてそのまま路地の奥のホテルに入る。今日は思いっきり抱きたい気持だ。
「SM顔負けの噂で持ちきりよ。考えただけでおつゆが湧いてきそう」
 鮮やかに素っ裸になって酒を手渡す。
「針で入院してたのじゃないのか?」
「先生が言ってたのね?後は少し残っているけど腫れは引いた。私って撮影でも本気になってしまうの。相手もその気で太いので背中を縫われて」
「痛くないのか?」
「痛い時がいいのよ」
と言いながら抱き合うようにして中に入れる。
「あんた何かしたの?」
「どうして?」
「知り合いの刑事があんたのスーツ着た写真を見せた。何度か逮捕された仲だから気安いの。何度も抱かせてあげたしね」
「まさか言わなかっただろうな?」
「男を売らないよ。どうも東京の大きな事件の証人だって言ってたよ」
 もう体を激しく揺すり出して話にならない。









 

戸惑い 7

 その夜カラオケが済んでからママ連の飲み会に若頭の代理で出席させられた。ママは上機嫌で帰りに他のママにみせるように濃厚なキッスをした。公認でなければ殺されるところだ。帰りの若頭からまた貸付の封筒を預かっている。
「あんた評判悪いよ」
 書類を見ている横で姉さんがちょっかいを入れてくる。余程サエを取られたことが悔しいらしい。とは言ってもサエが男だと言うことはできない。彼女も黙っておれない性分なのだ。
「まあ、サエと同じ部屋でいたらわしでも差し込むわ」
と親分は笑っている。
「若頭の貸付はどうや?」
「どうもITMファイナンスの不良債権でしょうね。道頓堀の一角ですね。金額は3億。これも半年です。どうも隣の雑居ビルが上がらないらしいです。調査をして稟議を早急に上げます」
「どうもメインバンクは早急に債権額を下げたいようやのう。伊藤の案件はやくざ絡みやから素人では無理や。しばらく若頭と付き合うのはええようやな。そやけどやくざに借りだけは作ったらあかんで」
 そう言うとステッキをついて病院に出かける。
「親分病院から帰り道にまたカラオケバーに行ってるみたいや」
「酒はだめ言われてるのじゃなかった?」
「だめよね」
「いい女が入った?」
「番頭が時々来てるみたいやの」
「また番頭か」







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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