空白
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記憶 3

「お前なあ」
 肩幅の広い男が天上から降りてきて、しょぼくれた男に怒鳴っている。今日も3本目の指を折るのだろうか。男が私の髪を掴んで顔を上げさせる。
「お前の名は?」
 私は首を振る。
「とぼけるな。お前の名はイサムだ。金融屋の部長だ。公園の前のある金融屋だ」
 全く記憶がない。私は銀行員の修司だ。
「組員が言っていたが口がきけなくなっている。やりすぎたんだ。それに組長からも出て行けと言われたんだぞ」
「どうしてや。分け前も出すって話してあるんやろ?」
「組の上の方から何かあったようや」
「そんなら早く吐かそうや」
「そんな余裕ない。晩にホテルに運ぶ。何せ俺の組は預かりで手下も使えない。それに頭取のルートもたたれている。軍資金も底をついてきた。この組も上から睨まれるのを恐れている」
 グローブのように膨れた指を持ち上げて、
「もう1本で落ちるのやがな」
と残念そうに言う。
「取りあえずそこにある蒲団で包んで夜のうちに運ぶ。上に運ぶのは誰も手伝ってくれんからな。ライトバンの運転手は手配した。だが中身を見せられない。ここの組長にも内緒にしている」
「どうして?」
「上からイサムと言う名が出ていて手を出すなと言われている」
「そんな大物じゃないですよ」
「いや、ITM事件の重要参考人だ。それで俺の兄貴もぶち込まれた」
 どうも頭取が始め組んでいた横浜の組と係わりがあるようだ。














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記憶 2

 揺り動かされて水を飲む。どうもやくざの子分みたいで目に憎しみはない。
「何やらかしたんや。素人にはきつすぎるわな」
と言ってから猿轡をはめて隣の押し入れのところまで引きずっていく。
「今日はな。ここでショーがあるんや。えげつないショーやで。見るんやったらここのテープ剥がしてやるから見たらええ」
 とくに鍵は掛けた様子ではなく何かの箱を置いたようだ。穴からはシーツを引く男たちに混じって客たちが下りてきて思い思いに座っている。30分ほどして部屋が真っ暗になって音楽が流れる。全裸の女が檻から運ばれてきて逆さに吊るされる。ストロボが至る所で弾ける。どうも穴からT字に広げられた毛のない裂け目が見える。
 これは時々カオルがするディルドのプレイだ。男が巨大なディルドを2本持っていて、まずは膣の中の深々と刺し込んでいく。潮がもう溢れていて足を伝わる。次はそれより長いのがアナルに突き刺される。その状態で吊るされた女が回転する。ディルドが抜かれると男がアナルの中に片腕を入れていく。
 指を折られて押し込められているのに思わずカオルとのプレイを思い出して下のものが反り立っている。カオルの場合は肘のところまで入って、へその当たりに指の押上げが見える。この女も同じ状態まで見せているが、裂け目から赤い血が垂れている。
 さすがに疲れて壁にもたれる。ライトがすでに落ちていて荷物を片付ける音がしている。
「明日はできんよ。傷が広がったわ。ゆっくりするの分かった」
 女の声がしてそれから静かになる。
「やっぱりただ見客がいた」
 女の顔が覗く。
「カノンや!分からんの?」
 どうも顔見知りのようだが記憶がない。



記憶 1

 暗い穴倉のような部屋だ。どれほどの時間眠っていたのか思い出せない。天井窓が開いて男が二人降りてくる。同時に眩いほどの照明が点く。一人は背の高い肩幅の広い男でもう一人は見るからのしょぼくれている。どうも私は両手両足を縛られているようで感覚がなくなっている。どちらも覚えのない顔だ。
「今日はもう1本折るからな」
 しょぼくれた方が楽しそうにペンチを手にしている。
「まあ、慌てることはない。まず左手を見せてやれ」
 左手の一指し指がグローブのようになっている。パンパンに張れているところに釘を刺す。
「今日は中指だな」
「そのくらいで吐いた方がいいぞ。こいつは楽しみでやっている」
「君らは誰だ?」
「あまりの痛さに記憶をなくしたか?お前は金融屋の部長のイサムや。ふいにやってきてめちゃめちゃにされたんや。最低5本の指は貰うまで吐くなよ」
「待て、貸金庫の鍵は?」
 そうだ。私は貸金庫の鍵を持って逃げてきたのだ。それでガードを越えた道路で跳ねられてた。彼らに捕まったのだろうか。でも死んでもいいと思っていた。私は敬愛する上司の頭取に捨てられたのだ。やはりカオルに手を出したのが不味かった。でも逃がしてくれたのは確かにカオルだ。私を捕まえたのは頭取か伊藤か。
「やりまっせ」
と言うなり中指をペンチで捻る。
「こいつまた記憶失ったんやろうか?」
 その言葉とともに暗闇の中に落ちておく。






一区切り 9

 最近サエとは穏やかなセックスになっている。同じ布団で寝てその日の気持ちでキスだけの日もある。今度の日曜日に動物園にユイを連れて行って、その後食事をしようと約束した。ここ3日とくにボンの店は目立ったことは起こらず、従業員も板長を除いて戻ってきた。それでもフミコは常連には人気で子供をベビーシッターに預けて夕方からカウンターに立つ。
 サエの店は常連の男女の人形のような子が入った。元々自分で服を作っていたらしく腕がいいようだ。今日は作業台を一台増やすので私も直行で手伝いに入っている。最近は作業がサエだけではこなせないようになっている。彼女は自分で服も作るので修繕はすべて任すようだ。ちょうど宅配で大きな袋が届く。
「カオルさんところの衣装の修繕を受けている。新着の衣装の依頼も3着来てるの」
 その時電話が鳴ってサエが出る。頷いて私に受話器を渡す。
「事務所に入れたらここだと。頭取から横浜のやくざの逮捕された組長の弟が大阪に入っていて、どうも修司の持っているものと交換を申し出ているのよ?あの黒サングラスを殺す計画をしたのは彼だそうよ。あの探偵に調査は依頼した。それで心配で」
「とくに動きはないがなあ」
「頭取から総理への約束の資金を私が引き渡した。向こうは編集長が来ていたわ。一度電話を入れてくれと言ってた」
 さっそく伝えられた電話に入れる。
「やあ、これで総理への約束は果たしたことになるが、問題は反対派閥が君の持ち物に注目している。何か動きが出るのか心配だよ」
 外に出ると路地を抜け公園に出る。もう人夫出しは終わっていて労働者の姿も少なくなっている。いつも姉貴が乗っているトラックの姿もない。ここから事務所が見える。私の横にブラックのワゴンカーが目に入る。急に目の前が真っ暗になる。ソファーに押し付けられ腹に強烈なボディブローを受けてそのまま気が失われていく。







一区切り 8

 翌日やはり従業員は誰もボンの店には来ない。新しい板長が急遽仕入れをして入る。フミコが開店からボンと並んでカウンターに入る。小頭が若いものを連れて頻繁に覗く。私も昼は姉さんとボンの店で食べる。
「ゆっくり歩くのでガードのトイレから後ろに付いて来ている奴を見てくれ」
 小声で姉さんに伝える。それからのんびりと通りを抜け路地を曲がる。そこからやぶ医者の裏口に隠れる。今度は姉さんの後ろからゆっくり付いていく。後ろの目隠し帽をかぶった男は慌てて路地に入って走り出す。姉さんの肩を叩いて逆に跡をつける。男は何度か角を曲がりながら事務所にたどり着いている。明らかにイサムと知った追跡だ。
「あれは番頭の背格好よ」
「確かに」
「一緒に付いていくわ」
 公園から今度はどんどんと早足で商店街を抜けていく。
「親分のところだわ」
 病室も心得ているらしく、そのまま親分の個室に入る。30分ほど廊下の隅で待つ。今度はジャンバーのポケットに封筒をねじ込みながら出てくる。
 姉さんが番頭の姿が消えてすぐ飛び込むように部屋に入る。
「また金を貸したんじゃ?」
 親父はばつが悪そうに頭を撫でている。
「近々金が入ると言うので100万都合した」
「まさかボンを脅す気では?」
 姉さんが愚痴をこぼす。あり得ない話ではない。番頭は私にとっては厄病神なのだ。だが彼にとっても厄病神だろう。







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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