空白
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初恋 2

 サエに地図を書いてもらってボンの店に立つ。板長も替わって落ち着いたような雰囲気だ。詳しい話はサエに聞いている。
「まだ母とは時間がかかる」
「まあ、時間をかけたらいい」
 大瓶を抜いてもらって鱧皮を頼む。
 手を上げて金融屋のやっさんが入ってくる。
「厄介やな。若頭が死んで組の纏まりがなくなった。今回の地上げ地の買い上げは姉さんに承諾して貰ったが、誰が組を継ぐかでもめている。そちらの言うように早く土地を引き上げるのがベストや」
 この措置は親分にすでに説明している。記憶が戻るのではなく知識を埋め込んでいくという作業だ。
「犯人は特定された?」
「新聞記者によると警察は同じ組の武闘派をマークしているということや。これは彼の書いた週刊誌の記事や」
 手に持っていた週刊誌を拡げる。
「武闘派の5人グループが当日アリバイがなく、今も誰も見つかっていない。その中に横浜の組長の弟がいるというのが彼の推理だ。警察も同じ推理で動いているらしい」
「ITM事件の延長上だと書いてるな。『白薔薇』のママのシリーズは?」
「ああ、あれな、事件ものから自伝ものになって第2弾を書いるわ」
 カオルは16歳の時に家出少年として上野に出てきた。この週刊誌にはその頃の東田透の写真が載っている。どうもカオルが取材を受けたようだ。丸坊主からは今のカオルが想像できない。この頃の話は私も聞いたことがない。その頃は町工場で働いていたようだ。それから職業を転々として17歳で伊藤と会っている。




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初恋 1

 マンションに戻って同じ布団に潜る。二人とも体が固まったようだ。そっと形のいい胸を吸う。反り立ったものを見て同じ男とは思えない。どうも初恋の時のときめきだ。カオルの時は惚れたと言うより彼女のテクニックに誘われた感じだった。そのうちの彼女の沼から出れなくなったのだ。だがサエは心がときめくのだ。
「晩は迎えに行こうか?」
「いいよ。仕事が溜まっているから。それより気を付けてね」
 ボン達が下りてきていてモーニングを取って先に私が出る。わざわざ事務所の地図を書いてもらっている。
「どう?私の顔も忘れた?」
 大柄の女性が顔を寄せてくる。これが姉さんだと呟く。
「最後に貸した任意売約の土地を整理しないと。これは調べてみたのだが、若頭の姉さんの承諾を貰わないとダメだが、息子の組長で買い上げをして貰ってそれから買い先を調べてみるしかない」
「任せるわ」
 まずやっさんに電話を入れて姉さんと組の根回しをしてもらう。それから頭取に電話を入れた。
「ようやく総理が動き出した。助けてもらった」
「ちょっと力を貸してもらえませんか?」
「いいぞ」
「大阪の阿倍野のITMの任意の物件なのですか?」
「ああ、あれはS社が引き取る予定だ。あそこの社長に声をかけておこう。ところでサエとやったか?」
「カオルから聞きました?」
「焼き餅焼いていたさ。初恋のように抱き合っていたと」
 そう言えばあの夜カオルは部屋に帰ってこなかった。
 事務所を早めに出るとサエの店を覗いた。小柄な女の子がドアを開いた私を見て驚いている。
「お帰り私のイサム」
 サエが飛び込んできた。





記憶 11

 打ち合わせを済まして2人は帰る。カオルはステージに顔を出すと言って降りた。部屋のFAXに次々と貸付の書類が送られてくる。それを見ながら緊急度合いと対策を記入していく。マネージャーが少し遅い夕食を運んできた後ろに子供を抱いたカオルより小ぶりの女性がおどおどと入ってくる。
「サエとユイだな?」
「分かるの?」
「今この頭に教え込んでいる」
 ユイはすやすや寝込んでいる。小さな籠が運び込まれてきてそこに寝かせる。
「カオルが良ければ私は引くよ」
「私はイサムだ。サエに拾われたイサムだ」
 ゆっくりとサエを抱きかかえる。それからベットに押し倒すと、サエは目を閉じて震えている。
「店はどうだ?」
「新しい子と2人でやっている。カオル姉さんが仕事を回してくれるので大繁盛。指はどう?」
「腫れはもうなくなった。舐めてもいいのか?」
「うん」
 でも恥ずかしそうだ。口に含むと反り返ってくる。次はサエが含む。彼女に口の中で弾けそうだ。
「いつまでも一緒にいてくれるな?」
「捨てないで!」
「サエのこと一杯教えてほしい。でもこの感触は覚えている」
 サエのアナルの中はカオルより狭いがくねっていて吸い付いてくる。
「イサムだ!」
 サエの目から洪水のように涙があふれてくる。








記憶 9

「カオル、総理とも寝ていたんだな?」
「そんなこと話していた?頭取が私を抱かせたの。まるで貢物のようでしょう?」
 帰ってきた私を東京駅で迎えて一緒に大阪に向かう。探偵はここでお別れだ。
「昨夜番頭が殺されていたそうよ」
「どこで?」
「横浜の港に浮いていた。大阪の組に確認したら内々で横浜の組に引き渡したそうよ。これ以上頭取に睨まれたくないと考えたのかしら。頭取から今回金が出ていたようなの。火消しね」
「よく大阪に行くのを拒まれなかったな?」
「もう、親父みたいになってるわ。それと横浜の元組長の弟が逃げていると言ってたわ。まだ用心しないとね」
「彼も殺される?」
「それがねえ、どうも大阪の武力派の組に匿われたようよ。大阪もITM事件の後若頭独り勝ちに武闘派が不穏な空気を醸し出してるという噂。修司は若頭とは親しかったのね?」
「金融絡みでずいぶん貸している」
「これからどうするの?」
「金融屋に戻りサエとの生活を取り戻す。もう修司には戻れないからな。これからはサエに付けてもらったイサムで暮らすよ」
「カオルも忘れないでよ!」
「いつまで3人でやれるだろうかな」
 サエの写真を定期入れから出して眺める。ここ1日に何回もサエの写真を取り出してみている。何となくほんわりとサエも顔が浮かんでくるようになっている。
「貸金庫はどうするの?」
「しばらく封印だな」





記憶 8

「サエと会ってからに?」
「いやすぐに戻ってくる。動物園に3人で行こうと言っていたと伝えて」
「記憶が戻ったの?」
「いや、サエの約束をメモしていたんだ」
 探偵と翌朝一番に新幹線祈り、昼には私設秘書の用意した赤坂のホテルに入った。廊下に5人ほどのボディガードが並んでいる。鞄の中身と服装検査を受けて部屋の中に入る。入口で私設秘書が苦笑いをしながら招いてくれる。
「久しぶりだ。記憶が戻ったらしいね?」
「ええ。鮮明に。でも手前の記憶をまた失ってしまいました」
「そうか。記憶は鮮明か」
 鞄の中から2日かけて再現したピーナッツの記録とスケジュールを重ねて作った。それを私設秘書が受け取って総理のスケジュール表と合わせている。無言の1時間が過ぎて、
「一致しますね」
「そうか」
「いい加減腹をくくってください。これ以上足掻くと総理経験者として君臨できませんよ」
 私設秘書が強い口調で言う。
「分かった。分かったと頭取に伝えてくれ」
「分かりました」
と手帳をテーブルに戻す。
「白髪が増えましたね?」
「ああ、カオルにもよろしく伝えてくれ。いい思い出だ」
 カオルは総理にも抱かれていた!?





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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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