空白

鏡の向こう 3

 カオルの部屋に入って化粧を落として風呂に入る。それからサエが用意してくれた下着に変えてパジャマ姿になる。机にはパソコンとUSBが置いてある。指先がUSBを掴んで差し込む。これは体が覚えているようだ。
 これはITMファイナンスが融資している大口先の全リストである。○●△というマークがついている。ちなみに京都駅裏は●になっている。とくに●の横に*印が入っているのが多い。この印は私がつけたそんな気がする。これは伊藤がバックをとっている案件ではないだろうか。
「少し思い出してきた?」
 いつの間にかステージ衣装に着替えたカオルと夕食を運んできたマネージャーが入ってくる。
「このUSBは?」
「あの部屋のパソコンに入っていたものよ。相当な量があるからゆっくり見た方がいい。それよりこっちを見ておいて」
 無造作にビデオをつける。マネージャーはテーブルに豪華な食事を並べてビールを抜く。
「今日は12時の最終のショーに出るから寝ておいて」
 そう言うなり部屋を出ていく。ビールを注ぎながらテレビの画面に釘付けになる。
 全裸に両足と両手を縛られた大股開きにされたカオルだ。白髪の大柄な初老の男が上半身裸で鞭を持って立っている。
「お前らは3人で組んでいたのか?」
 この男の声には覚えがある。鞭が何度も振り下ろされる。カオルの白い肌に赤い血筋が何本も浮かぶ。
「私は知らない。でも伊藤は修司を誘っていたのは事実よ」
「お前の浮気を認めていたのが間違いだった。お前があそこまでのめり込むとはな」
 鞭がカオルのそそり立ったものに目がけて振り下ろされる。男もかなり疲れてきたのか肩で息をしている。カオルのものは無残にも弾けて鮮血が流れている。悲鳴をあげない。
「分かった。修司を呼んで来い」





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鏡の向こう 2

 八重洲口に先に出ていた年配のマネージャーが車で迎えに来ていた。周りの目が興味ありげに二人の姉妹を見つめている。ゆっくりドアが開いて驚いた目でマネージャーが二人を見比べて、
「新宿のマンションはあの時のままです。部屋には頭取から見張りが張り付いていてくれます」
「新宿に住んでいたのか?」
「そう、覚えてないのね。私と会うために新宿に2年前に引っ越ししてもらった。今回修司が消えてからこの部屋は伊藤と頭取双方から家探しされた。でも何も見つからなかった」
「それでもママは今まで家賃を払い続けてきています」
 マネージャがバックミラーを見ながら言葉を添える。車は混雑に巻き込まれることもなく新宿の裏町に止まる。さっそく入口に黒づくめの男が立当ている。エレベーターを二人で登ると止まった階にあのサングラスの関東のやくざが立っている。思わず体が引ける。男は私とは分かっていないようだ。そっとドアを開ける。
「彼は伊藤の?」
「関東のやくざは今は頭取側についている。何度も襲われたようね」
 殺風景な部屋に大きすぎる机がある。
「これはね。専務から頭取になった時に修司が譲られたものなの。ここで執務をとっていた。それだけ修司は可愛がられていた。それが頭取になると守りに入った。猜疑心が強くなったわね。私もここに泊まって除夜の鐘を聞いたこともあるのよ」
 机を触っているとふと本棚を少し押してみた。そこに『カオル修司』という傷跡があった。
「これが記念碑よ」
 指先だけに記憶が戻ってきたような気がした。





 

鏡の向こう 1

「サエの目色っぽかったわ。女の修司にも惚れたようよ」
 新幹線の個室に籠りっきりの私に弁当と缶ビールを運んできてカオルが笑う。
「中にいる時くらい化粧を落としたいんだが」
「駄目よ。ここまでにするのには2時間もかかったんだから。化粧がなかったらここでもやりたいくらいなんだから」
 つんつんとスカートの中のものを突く。
「着くまで約束事を確認しておきたいの。頭取はおそらく伊藤の始末を始めていると思うの。ただ頭取も伊藤がどこまで知っていて少しでも証拠になるものを持っていないか聞き出しているはずよ」
「やはり君が伊藤を呼び出して?」
「それも修司を助ける条件の一つ。私が嘘をついている。修司がギリギリのところで伊藤と組もうとしたと言ったわ。頭取があなたをガス自殺で殺そうとしたのはその恐れを感じていたからなの。それほど伊東は執拗に修司を誘っていたわけ。だから修司が消えた時には伊藤の嘘に騙された」
「そのために私も頭取の拷問を受けた。トイレにいけないほど一本鞭を受けたわ。痛みで熱が出て寝込んだ。でも吐かないので私の嘘を信じかかっている。修司はガス栓をひねったのは部下であり頭取の命令だと知っていた」
 私は現実にはどうだったのだろう。
「それで伊藤と組もうとした。でも伊藤も同様情報を独占するために修司を監禁した。それで証拠の品を持って逃げだした。実際修司がどこまで伊藤に話したか知りたがっている。でも今は修司は記憶を失っている。それを確かめたいのよ。でも頭取が昔通り戻ってこいと言ったらどうする?」
「サエのところに帰る」
「焼けるわ。でも3人でするの約束して。確かに一時私は修司を裏切った。その罪滅ぼしはするわ」






向き合う 10

「最後のプレイには私も入れてね」
と言って私とカオルに用意していた食事と飲み物を出して店に出る。代わりにあの年配の男が明日からのスケジュールと宿泊場所などをメモした紙を持ってくる。新幹線の個室を取っているようだ。宿泊先は『白薔薇』の東京だ。食べながらサエが買って来た鞄に下着や旅行用具を詰め込む。
 10時になって今日は青いチャイナ服を着たカオルが入ってくる。ここは定時に30分ほどのショーが何度も朝まである。これは週刊誌で読んだ知識だ。その後に客は思い思いの女性を指名して部屋に消える。
「もうやっているにかなって心配した」
 笑いながら寝室を開く。
「明日はちょっと化粧に時間がかかるから2時間で寝ましょう」
 言うなりカオルはもう裸になっているし、男のものがそりかえっている。サエはつられたようにそれを口に含んでいる。ひょっとしたらこれが最後の営みになるのかもしれないそんな緊張が3人にはある。私は飛びつくようにサエのスカートを下げてサエのアナルに差し込む。するとカオルが体をひねって突き立ったものを私の中に入れる。
「だめだあ」
 カオルがもう発射してしまっている。
「踊りながらやるのを考えていたら我慢できなくなっていた」
 サエがカオルのものを綺麗に舐めている。
「明日はサエも手伝ってよ。修司いえイサムをニューハーフに変身させて東京入りよ。伊藤は怖くないけど、警察が動いているわ」
 カオルはすでに警察の動向を捕まえている。
「それに頭取も手ごわいから。今日は川の字で寝ましょう」







向き合う 9

 黒鞄の中にあった鍵をネックレスにぶら下げてサエの首に掛ける。これはたぶん貸金庫の鍵だろうと思っている。ただサエはこれが伊藤や頭取達が血眼になって探しているものとは思っていない。ただ私の手掛かりになる重要なものという認識はある。
 昨夜またカオルが車で修繕する衣装を運んできて、明日の晩二人で来てほしいと告げて手紙を置いて帰った。カオルと東京に行くと言うことだ。会う相手は頭取だ。1週間欲しいとある。
「大丈夫?」
 胸から顔を上げたサエが心配そうに言う。
「その鍵がなければ殺されることはない。それにここまで来たらカオルに掛けるしかない」
「信じるわ」
「万が一も考えてフミコのところに泊めてもらうといい。困ったことが起これば姉さんに相談するのがいい。頼れる男のような女だからな。カオルと姉さんに抱かれるなら嫉妬しない」
「記憶が戻ったら?」
「その時はカオルに頼んでおく。これは想像だが、ここに逃げて来る前まで相当カオルに仕込まれていて男を愛す体になっていたと思う。ほれ、今でもサエに見詰められるだけでこんなに立ってしまっている。カオルはサエを妹のように思っている」
「うん」
「彼女も危険な綱渡りをしている。私も同じ綱を渡らなければならない。3人とももう隠すものも何もない。裸であそこまで愛し合ったんだから」
「戻ってきたらこの町に逃げてきた話を聞いてね?誰にも話さなかった恥ずかしい話」






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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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