空白 ミステリー
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真相 9

 再びドアを開けると調書のファイルが先程より増えている。
「続いて聞きますよ。伊藤と『白薔薇』の東田とITMファイナンスの社長は週刊誌に出ているような関係だったのですか?」
「記憶にありませんが『白薔薇』のママからはそう聞きました」
「伊藤の行方は?」
「知りません」
「あなたは銀行で第2総務課長のポストにいたと聞いています。第2課長は頭取の直属としての仕事をしていたと?」
と言いながら頭取の調書を開いて長い文章を見せる。ITMファイナンスの伊藤との調整役と書かれてあるが、総理の件はどこにも出ていない。
「頭取がそう説明されるならそうです」
「たとえば議員などの交渉も?これは第2課の社員の発言にあります。よく国会議事堂に行かれていたと」
「憶えていません」
「あなたは銀行でパソコンを調べましたがスケジュール表は大半記号ばっかりですね」
 検察官がコピーを見ながら、
「Tは頭取、Iは伊藤と読めますが、よく出てくるKとNが分かりません。引き継いだ第2課長はKともNとも接触してないようですね」
 とくに返答は期待していないようだ。
「これによるとあなたは行方不明になる日、Tの指示でKに会いに出かけています。その時部下の係長、後に第2課長になる彼のメモに頭取から『白薔薇』に行くように指示が出ています。Kは『白薔薇』ですね。彼のメモにはチャンスが来たとあります。彼は何を指示されて『白薔薇』に行ったたのでしょうか?後の調査で彼の鞄からお金が出てきています。これについては東田は彼が伊藤からお金を貰っていたと証言しています。でも問題はNが誰かです」







真相 8

「掛けてください」
 見晴らしの良い部屋の大きなガラス窓から大阪の町が見下ろせる。正面の席に検察官、その横に事務官がパソコンのキボードに指を置いて待っている。検察官は附箋のたくさん付いたファイルを順番に並べている。
「サングラスの男に車を当てられたのはこの時期でいいですか?」
 日付を示す。私が頷く。
「その前の記憶は?」
「ありません」
「その時持ち物は?」
「黒鞄です」
「何が入っていましたか?」
「200万少しの現金です。他は何も入っていません」
「その鞄提出してもらえますか?」
「ええ」
 今度はファイルを置き換える。
「『白薔薇』のママとは会ったことがありますか?」
「ホテルの取引で偶然に」
「その時顔を思い出しましたか?」
と日付も見せる。
「いいえ。その日付だと思います」
 どうもすでにカオルの調書を取っているようだ。
「東田透はあなたに新堂修司だと告げましたか?」
「はい」
「それから合わせて何度会っていますか?」
「今回の写真と盗聴を貰った2度です」
「食事を済ませたら1時からお願いします」








真相 7

 何度か根回しを行ったうえ、新聞社の車で大阪地検に向かうことになった。車の中であの記者が朝刊を見せた。
「雑誌の記者が朝刊の一面記事を書くのは始めただと言うことです」
 彼の名前が入っている。新聞の記事は今朝私が地検に出頭したと言うことで、今までのITMファイナンス事件を整理して私の証言の重さを伝えている。本番は週刊誌の方で載せるようだ。そのゲラ原稿を車の中で見せる。ここには私が逃亡して現在に至る経緯が書かれている。
「ここの監禁についての記述は私も記憶にはありませんが、私をひき逃げしたのは黒サングラスの関東やくざで伊藤の配下と調べがついています。それに『白薔薇』のママは黒サングラスに狙われていると言ってます。伊藤とママが共謀してと言うのは?」
 カオルを悪者にしたくないと言う意思が働いている。
「写真の頃伊藤とママは組んでいた時期があるですね?」
「ええ」
「それと担ぎ込まれた病院の名前は伏せてください。迷惑がかかります。金融屋も同様です」
「分かりました」
 即座に赤を入れていく。
「今日は?」
「東京から来ています。それと指名手配はされていません。任意の出頭です。記憶喪失の件は伝えてあります」
 ゆっくりと車がビルの地下に入っていく。警察官がすでに警備態勢に入っている。
「地検の話の話せる範囲でよろしく」
 私は頷くと1歩踏み出す。






真相 6

 小料理屋で記者と待ち合わせすることにした。やはり今日も定位置でやぶ医者が飲んでいる。私は早めに番頭の店を覗いてくると事務所を出た。
「いや前は手柄頂きましたよ」
「どうですか反響は?」
「局長賞ですよ。でも検察に呼ばれてニュースソースを出せと」
と言いながらにこやかにビールを注いでくれる。
「これもオフレコにしてください。実はあれは『白薔薇』のママから渡されたものです」
「まさか?どうして不利な情報を出すのですか?」
「私には記憶がないので分かりませんが、ママが言うのには伊藤が地下に潜って動いていると言うのです。一時あの写真のように3人で密会していたようです。それが社長が暴露する側に回ったので。ママも伊藤に脅されているようでした」
「それなら分かりますがでも話だけでは記事にできません」
「私も居場所がばれたので安心できないのです」
 今度は私が記者にビールを注ぐ。
「私を極秘に地検に会わせてください。記憶喪失と言うのも伝えなければと思うのです。その上で答えられるものは答えます。もちろん今まで内緒にしてきたのはそちらの記事に」
 彼の顔が急に晴れやかになる。
「これから社に戻って対策を立てます。詳しい流れは明日電話します」
と言うなり金を払うのも忘れて飛び出した。








真相 5

 新聞にITNファイナンスの社長が告発を取り下げ、頭取が背任を取り下げた記事が出ている。これは誰かが間に入ったことだと記事は書いている。それをこの記事は『白薔薇』のママが絡んでいると書いている。社長が『白薔薇』のママと会ったのも確認しているとある。カオルはわざと自分に目を引き付けているようだ。
 親分を車に乗せて姉さんが警察から戻ってきた。
「どうだった?」
「さんざんよ。番頭の身元引受の話をしたら、執行猶予にはならないと言われたわ」
「ノミ行為ではなかった?」
「あの店で麻薬を売ってたようなの。関東系の組が絡んでいるらしいわ。でも親分はなぜあそこまで庇うの?」
「親分は?」
「また足に激痛が走って病院に運んだわ」
 そのとき電話が鳴って姉さんが取る。
「またあの女よ」
と投げ出すように受話器を差し出す。
「あのサングラスのやくざの男が指名手配された。頭取が慌てているわ」
「何の件で?」
「後釜の第2総務課長を殺した殺人罪で。ホテルの防犯カメラに映っていたようよ」
「不味いな」
「それで例の出頭を早めてほしいの。例の録音と写真は私から渡されたと言って」
「それは不味いよ」







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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