空白 ミステリー

空白2

 カオルだ。私は乗り出してテレビを覗き込む。やはり17年ぶりだ。私が大阪に戻ってからカオルは表舞台から姿を消した。
「日本にいなかったのねえ?」
 ラスベガスの有名なカジノを日本人が買い取った。
「カオルに間違いないな?」
「ええ」
 サエも確信している。
 赤坂は私の記憶では1000憶はカオルの手元に入ったはずだ。私は10年後に貸金庫を開いた。証拠書類はすべて処分した。架空口座にあった5憶はまだ手をつけてない。
 カオルは謎の日本人と伝えられている。43歳になる。だが30歳代に見える。
「アメリカにいたんだ」
「『白薔薇』はまだ私のところに仕事をくれている」
「ちいママが運営してるのだ」
「私も顔を薄っすら覚えてるよ」
 ユイが言う。
「会いたいな」
 サエが懐かしそうに言う。
「そうだな」
 いつの間にかスマホで懐かしい記者を呼び出す。彼は今週刊誌の編集長になっている。
「今のテレビ見たか?」
「ああ懐かしい!久しぶりのリバイバル記事を書こうと思っている」
「一度飲まないか?」





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空白1

 あれから17年が矢のように過ぎた。私も50歳を迎える。サエの店も阿倍野ののっぽビルに入った。本社は相変わらずそのままのところに置いている。サエも私の妻となって籍に入り、娘のユイもサエのことを聞いて少し反抗期があったが、今日も仲良く買い物に出かけている。私は年齢相応に年老いた良きサラリーマンの顔になっている。
 サエは一向に年齢を感じさせず、いまだ周辺の誰も男とは思わない。久しぶりにボンの店でビールを飲んでいる。ボンは髭を蓄えて私より年上に見える貫禄だ。5人の子供を作ってさらに6人目が出来るという。
「最近はサエとはやらないのか?」
 小さな声で言う。
「ユイに見られてからはサエに拒まれている」
 ボンとは正直な話ができる。ボンの妻のフミコは未だにサエが男だと知らない。私に会うとなぜ二人目を作らないと言い続ける。ボンはやりすぎて玉がなくなったと冗談を言う。確かにやりすぎたのだと思う。
「ほらここにいた!」
 いつの間にかユイが腕を組んでいる。サエが後ろで控えめに笑っている。
 ボンが黙ってビールとサイダーを抜く。
「ユイちゃん彼氏出来た?」
 フミコが奥から声をかける。
「私も男に生まれたかった」
 これがユイのいつもの帰し文句になっている。サエが困った顔で笑う。今でも時々ユイがサエの布団に潜りこむ。私はそれを見ていて妬ける。
「あれ!」
 サエの声でテレビの画面を見る。




足掻き13

 衆院選が始まった。私はカオルと銀行の応接室にいる。副頭取が直々に銀行員の指示をしている。フィクサーも甲府から出てきている。元頭取は部屋の端でテレビを見ている。今日で赤坂は終わるのだ。上場会社の社長も向こう側に座っている。
「書類に不備はないですね?」
と言い副頭取が資金の振り込みを行う。それを合図に購入側は立ち上がって部屋を出て行く。
「頭取と会長は?」
 元頭取が振り返って副頭取に声をかける。
「すでに辞表を預かっています。会長をお願いしますよ」
 院政を敷く準備が整ったらしい。
「勝ったな」
 テレビに元総理が側に座り新総理に握手している。与党に大差をつける結果になった。政権が代わる。元幹事長の新党は大半が議席を失って第5党まで落ちた。ここも院政が敷かれた。
 カオルと私は肩から力が抜けてマネージャーの車に乗って、そのまま八重洲に行き地下の寿司屋に座る。
「帰るの?」
「乾杯だ。泣きべそをかくな」
「明日にならない?」
「永遠の別れじゃないんだ」
「でももう出て来ないでしょ?顔に書いてある」
 赤坂が終わったらカオルの仕事から手を引いてサエの仕事を手伝うと話している。寿司屋のカウンターに番頭が掛けていて、外に若い衆が2人立っている。ここでカオルと道が分かれる。
 長い空白の時間が終わる。






足掻き12

 元頭取の関連の雑誌に元幹事長の資金が銀行から不正融資で出ている記事が発表された。合せて元幹事長と今は死んだ秘書との密会の写真と手帳の一部が載せられた。この部分は会長が追加させた部分だ。検察が銀行に査察に入り、警察が手帳を押収した。
「サエ、ユイは元気か?」
「お父ちゃんはって言ってるよ」
「悪いな。もうすぐ片が付く」
と言って携帯を切る。今日は現地で赤坂の境界の確認で相手の会社のチームと廻る。カオルは今日は警察に呼び出されていて会長の事故の防犯ビデオの立ち合いをしている。
「修司?」
「カオルか?終わったのか?」
「殺人犯が見つかったようよ」
「見つかった?」
「毒殺されてたの」
「やはり殺したのだな」
「今から番頭を連れて検死に立ち会うわ。お金は送った?」
「朝一番送金しておいた。元総理も元頭取ももう黒幕だな」
「そうね。新旧交代ね」
「カオルは怖いファィクサーか。抱いたら殺されそうだな」
「溜まりきっているから今日は朝まで頑張るのよ」




足掻き11

 元幹事長の新党党首が再び野党再編を呼びかけた。現政権から3大派閥の一つが離党届を出した。だが今回は新党党首には資金がない。それに検察と警察に纏わりつかれている。
 今日は珍しくカオルと私が元総理が泊まっている赤坂のホテルに呼ばれている。カオルは長男の会社の金を止めて今回の元幹事長との提携の裏を取った。グループはすべてカオルの会社の資金で動いているのだ。総帥を会長はカオルに譲ったのだ。
「へえ、頭取もいたの?」
 元総理の横に元頭取が座っている。
「儂ら3人はカオルを挟んで兄弟だよ」
 元総理が笑っている。
「次の衆院選で野党から与党に返り咲く。それで私の子飼の党首を立てるのさ」
「またお金でしょう?」
「頭取は?」
「今の副頭取を頭取にする。会長と今の頭取は元幹事長に押さえられている金を担保で5億を貸した」
「それをじっと見ていたのですか?」
 さすがにそのしぶとさにあきれる。
「幾らいるの?」
「8億。だがこれは赤坂の斡旋料として帳消しにしてくれよ」
「会長の言っていた売り先というのは総理の先だったのね。政治家と銀行員は怖いわ」
「両性のカオルの方がもっと怖い」








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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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