空白 2016年11月

戸惑い 10

 またマネージャの車が現れた。事務所から帰る用意をしていた私を乗せて走る。
 サエと何度か入った白壁のホテルだ。
「大変な目にあってるね。妹の強姦ってやっぱり気にするよね」
「耳に入ってるのだな」
「先程までサエと話していたのよ。お祝いを置いて来たわ。子供に係きりで寂しい思いをしてるって抱いてあげてと頼まれた。さあ裸になって蒲団に入って私も欲求不満になっている」
「東田透26歳か」
「あの記者に聞いたのね。彼『白薔薇』に訪ねて来たよ。頭取もいろいろ防波堤を作っているようだけど、一度綻び始めると難しいようだわ。明日の新聞に後任の第2課長を殺したとチンピラが出頭した記事が出るわ。伊藤が指示をしたと証言する」
「そこまでする必要はないのじゃ?」
 カオルは話しながらゆっくり私のものを口に含む。恥ずかしいくらいすぐに反り返る。
「飢えてるね?」
と言ってそれを穴に導く。カオルも相当飢えている。いつもより濡れている。
「それはあなたから目を離そうとしているのよ。検察は私より修司の方が情報を持っていると踏んでいる。修司を消そうとしたのは伊藤じゃなく頭取だと見ている」
「どうして?」
「第2課の女性が連絡簿に記録を残していたのよ。押収物にあったようよ。頭取から今からいつもの部屋に行くようにと指示があったと。あの日修司は『白薔薇』に来てビールを飲んでからエレベーターを上がったと店の子が証言している。
急に予定もなくやってきた修司に私は驚いた。それで店に下りたらあなたの部下が上がってきたのを見て隠れた。彼は手袋をして真っ青な顔をして合鍵でドアを開けてガス栓をひねった」
「逃がしてくれたのか?」
「ええ」





スポンサーサイト

戸惑い 9

 記者が会いたいと電話を入れてきた。それでいつもの小料理屋で会う約束をした。
「遂に『白薔薇』のママも呼ばれたな」
「知っている」
「悪いが伊藤と頭取とママの三角関係を書かせてもらった。もちろん第2課長のことは一切触れていない。それでもここまで踏み込んで書かれたのは初めてで、業界だけでなく地検からも電話を貰った」
 拡げられた週刊誌に目を通す。検察もそうだがまだ総理までには至っていない。頭取はここのラインを遮断しようとしている。でもそれは口にできない。
「ママの名は東田透だ。これは次回に載せる。伊藤と出会ったのは16歳の時だ。その時はまだ手術をしていない。当時の同僚の女に確認してきた。17歳に伊藤の店に出ている。手術費は伊藤が持ったらしい」
 記憶が全くない。
「頭取にママを紹介したのは伊藤だ。店には一度も頭取が現れたことがない。いつも第2課長が来て連絡係をしていたそうだ。頭取は直接ママの部屋に入った。その頃はビル自体が伊藤の会社から頭取の関連会社に名義移転されている」
「詳しいですね」
「ママが頭取の女になったのは19歳のときだろうと思う。その頃さらにそのビルは東田透の会社名義になっている。伊藤はその頃すでに大阪に来ている。そこから計算するとママはまだ26歳と言うことになる」
 まだそんなに若かったのか。実はサエの年齢も分からないのだ。
「新堂修二それがあなたの名前です。どうもすでに知っておれれるようですね?今年で32歳。第2課長は大抜擢だったそうです。あなたは新橋支店で営業成績を上げて本店に呼ばれたそうです。あなたはママとよく新宿の店で飲んでいた。店の主人は仲のいいカップルと言ってました」
 そんなに楽しい時間があったのか。
「あなたが逃げ出したのは頭取にばれたからではありませんか?」
「分かりません」







戸惑い 8

 サエは子供の世話でまったく相手にしてくれない。それに飲み屋に行っても本人とは知らず妹を孕ませた噂が飛び交っている。ここまで悪者にされては飲んでいても気分が悪い。夜中に妹の体を縄で縛って入れたと言う話がまことしやかに伝えられている。そこまで勝手に話をでっち上げるなと暖簾を出る。
「ホテルで飲まない?」
 流し目の女アヤだ。腕を抱えてそのまま路地の奥のホテルに入る。今日は思いっきり抱きたい気持だ。
「SM顔負けの噂で持ちきりよ。考えただけでおつゆが湧いてきそう」
 鮮やかに素っ裸になって酒を手渡す。
「針で入院してたのじゃないのか?」
「先生が言ってたのね?後は少し残っているけど腫れは引いた。私って撮影でも本気になってしまうの。相手もその気で太いので背中を縫われて」
「痛くないのか?」
「痛い時がいいのよ」
と言いながら抱き合うようにして中に入れる。
「あんた何かしたの?」
「どうして?」
「知り合いの刑事があんたのスーツ着た写真を見せた。何度か逮捕された仲だから気安いの。何度も抱かせてあげたしね」
「まさか言わなかっただろうな?」
「男を売らないよ。どうも東京の大きな事件の証人だって言ってたよ」
 もう体を激しく揺すり出して話にならない。









 

戸惑い 7

 その夜カラオケが済んでからママ連の飲み会に若頭の代理で出席させられた。ママは上機嫌で帰りに他のママにみせるように濃厚なキッスをした。公認でなければ殺されるところだ。帰りの若頭からまた貸付の封筒を預かっている。
「あんた評判悪いよ」
 書類を見ている横で姉さんがちょっかいを入れてくる。余程サエを取られたことが悔しいらしい。とは言ってもサエが男だと言うことはできない。彼女も黙っておれない性分なのだ。
「まあ、サエと同じ部屋でいたらわしでも差し込むわ」
と親分は笑っている。
「若頭の貸付はどうや?」
「どうもITMファイナンスの不良債権でしょうね。道頓堀の一角ですね。金額は3億。これも半年です。どうも隣の雑居ビルが上がらないらしいです。調査をして稟議を早急に上げます」
「どうもメインバンクは早急に債権額を下げたいようやのう。伊藤の案件はやくざ絡みやから素人では無理や。しばらく若頭と付き合うのはええようやな。そやけどやくざに借りだけは作ったらあかんで」
 そう言うとステッキをついて病院に出かける。
「親分病院から帰り道にまたカラオケバーに行ってるみたいや」
「酒はだめ言われてるのじゃなかった?」
「だめよね」
「いい女が入った?」
「番頭が時々来てるみたいやの」
「また番頭か」







戸惑い 6

 サエが子供を産んだという噂は町中に広がっている。この発生元は約束していたやぶ医者のものようだ。腹痛と飛び込んできたサエがその日からつわりを起こして翌日出産。どうもやぶ医者が隣の兄ちゃんに故意に話したようだ。この町は噂に尾ひれがつくことこの上ない。兄が寝ている妹を犯したと異母兄妹も故意に飛ばされている。私はちょっとした犯罪者のように白目で見られている。
 今日は姉さんに散々嫌味を言われて、痛風で病院に行っている親分を置いて、地上げの短期貸付の抹消手続きに昼から信組の応接室に到着した。
「思ったより早かったですね?」
「ああ、ITMファイナンスの影響や。短期資金が底ついてきてる。売り手も妙に心配して粘らんようになってると言う話だ」
 スーツ姿でも派手な赤いネクタイの若頭が笑う。取引が終わって司法書士は法務局に出て行き、銀行員は返済の処理をしている。部屋には不動産子会社の社長だけである。
「伊藤はどうなるんですかねえ?」
「これは噂やが関東やくざに沈められたという噂だ」
「そんなことってあるんですか?」
「よくあるさ。俺だっていつ鉄砲玉に狙われるか。伊藤のように派手にやったら消えるしかないわ。しゃべると困る人が仰山いてる」
と言って携帯を取る。
「これからカラオケに行くから車を回せ」
と言って切ってから、
「ママあんたに気があるみたいや。今夜は付き合ってやってな」







戸惑い 5

 夕食を済ませてサエをベットに誘ったが拒まれた。
「今日の記念すべき日にやりたくないわ」
 その一言である。サエは子供を抱いてベットでミルクをやっている。
 その時フロントから電話が入っていると知らせてきた。
「おめでとう。お父さんね」
 カオルの声だ。
「替わろうか?」
「いえ、サエとはよく話をしているから。とうとう昨日私も任意で地検に呼ばれたわ。伊藤との係わりと頭取の係りを聞かれた。これは頭取とも話の筋を合わせていたわ。ここにはほとんど大きな嘘はないわ。頭取にも聞いているらしく頷いていた」
「第2課長の件は?」
「殺された彼は警察が調べているらしく検察は修司のことを盛んに聞いてたよ。銀行は無届欠勤で解雇になっている。どうも頭取と私の関係も知っているようだわ。これは伊藤がしゃべっていたらしいけど証拠はないわ。それよりあのマンションが調べられたよ」
「パソコンは?」
「3日前に全面改装して募集を始めた。もちろんこれはマネージャーに動いてもらった」
「伊藤は?」
「あれから会っていない。どちらにしても大阪の店に行くわ。今日はこれからお楽しみね?」
「それが母親になってしまったよ」
「へえ、子供ができると変わるんだ。今日は淋しくマスターベーションやねえ」







戸惑い 4

 やぶ医者の協力を得てサエと博多に出かけることにした。親分にはサエの急病で付添すると申し入れをした。それで二人での初めての旅となった。新幹線で並んで弁当を食べてあかちゃんの話が尽きない。まるで自分で子供を産むようだ。ここ2日夜なべして肌着を縫ったりおしめを作ったり、フミコにはすでに子供を産むと打ち明けたらしく、昨晩にはミルクなどが運ばれてきた。
 博多に着くとタクシーに乗って警察ではなく病院に向かう。どうやら犯人は挙がって警察の手は離れたようだ。サエが何度も病院と話を続けている。病院に入ると手続きを済ませて思わず簡単にあかちゃんが籠に入れられて引き渡しを受ける。
「これが亡くなった人の鞄です。中は警察が調べてすべて戻されています。ここにイサムさんへの手紙も入れておきました」
 サエが手紙とカラオケバーでみんなで撮った写真を見ている。
「これはいつか娘が大きくなった時に渡します」
「いいのか?」
「本当の親を知らないのは不幸です。これから無縁墓地にお参りします」
 今日のサエは別人のようにしっかりしている。
「どうも尻にひかれそうだな」
「母になるんですから」
「父になるのか」
 まだ実感がわかない。
「今日はカオルさんが博多のホテルを取ってくれています」
「カオルにはもう話したのか?」
「お姉さんだから。喜んでくれていたわ。しばらく東京を離れられないと言ってたけど」







戸惑い 3

 始めてやぶ医者を飲みに誘った。もうすでにこの小料理屋では二人とも常連に数えられている。
「どこかに行っていたのか?」
 やぶ医者が最近は明るくなったように思う。
「あの女は相変わらず出たり入ったりですか?」
「ああ、最近は針のプレーでばい菌が入ってう~んう~ん言ってた。君のことを心配してたぞ」
「それよりサエは2週間に1度先生のところでホルモン剤を打ってもらっていたのですね?」
「男と女の関係になったわけか」
 やはりやぶ医者だけはサエが男であることを知っていた。
「カノンが殺されたことは?」
「うちに来る情報通から聞いた。赤ん坊を生んで死んだようだな」
「それがその赤ん坊が私の子供のようなのです」
「厄介なことだあ。今日はその話があったんやなあ」
 美味しそうにコップ酒を飲みながら、
「そういやサエは子供が生みたいと行ってたな。医学的にはそれは無理だと言っておいたが」
「引き取ると言ってるのです」
「サエならそう言うだろうな」
「引き取ったら力貸してもらえますか?」
「異母兄妹が子供を産むか。えらい話題になるぞ」
 笑いながらビールを注いでくれる。
「そのお返しは覚悟しておけよ。サエは子供産んだら最強のいい女だわ。大切にせい」






戸惑い 2

「迷惑をかけてすいません」 
ソファに座っている親分に頭を下げる。いつの間にか姉さんとも普通に会話を交わしている。
「ねえ、あのカノンが殺されたと聞いている?」
 姉さんが興味半分に大衆誌を買っていてみせる。驚いた風をしてページを開く。親分はステッキで歩けるまでになったので公園に人夫出しに出かける。私の机に休んでいる間に新規で貸付したのと完済したもののファイルが積み上げられている。
「そこにここのカラオケバーのことが書いてあるの。出産した子供はその店の常連だったそうよ」
 イサムの名前はさすがに出ていない。
「カノン結構際どいことしてたけど、本番はしてなかったと思うけど。私も2度ホテルに誘ったけど私では子供できないものね」
「姉さんは男には興味がないからな」
 何の気なしのページを繰っていたら、地元の博多の中州に『白薔薇』が来ると言う記事が出ていて、カオルの大写しの写真が出ている。購入予定のビルはITMファイナンスの不良物件で任意競売で手に入れたとある。これがマネージャーが言っていた店舗展開らしい。
「私男だめだけど、このママなら抱きたいわ。でもこういう男女はあれが細いって言うけど?」
 姉さんはこういう話になると際限がない。私は自分より立派なカオルのものを思い浮かべてしまっている。ここで口を滑らしたら。ふと思いついた。
「実はサエとやっちまって」
「異母兄妹って言ってたよね!」
「血は繋がっていない」
「イサムはとんでもない男よね」












戸惑い 1

 この時間だとサエはまだ店にいるだろうと、ちいママと別れてタクシーに乗った。大阪の店からだと20分ほどで着く。念のためにガラスの眼鏡をかけた。予想通りまだサエの店は赤々と電気が灯っている。今晩は朝まで抱きたい気分だ。覗き込もうとしたらフミコの顔とぶつかる。もうこちらの店に来ているのだ。
「フミコ頼む閉めて帰って」
 サエが腕を抱えるように路地の中に引っ張って馴染らしいバーに入る。
「どうしたんだ?」
「電話でカラオケバーのマスターに会うって言ってたよね」
 鞄から丸まった新聞を出して見せる。妊婦が追ってきた横浜のやくざに刺されたとある。妊婦は8時間後死亡したが赤ん坊は無事だったと書いてある。
「殺されたのはカノン」
 彼女は大阪から逃げる最後の夜に私が抱いた。記憶が蘇ってきた。
「カノンはカラオケバーの名刺を出してサエに伝えてと最後に言ったそうよ。この子はイサムの子だと」
 こんなことってあるのだろうか。たった一度の射精で。
 出されたビールをサエに注ぐ。次の言葉が出てこない。目を見るが怒りも泣きもしていない。
「いろいろ考えたよ。カノンとイサムの子なら可愛いだろうなって。私とイサムじゃ何万回やっても子供は生まれない。イサムの子はほしい」
「サエはどうするんだ?」
「おばちゃんでいいかなって」
「駄目だ。それなら夫婦になるべきだ」
「腹違いの兄妹が夫婦はだめだよ。それに私は男よ」
「それももともと作り話だ」
「引き取る。そこからスタートよ」






鏡の向こう 11

 翌朝目覚めると全裸のカオルが死んだように寝ている。ゆっくり唇を吸うと、
「今日は残念だけどこれだけ」
と言って食事を済ませると、女装にかかった。
「午後一番の便で大阪に行く。頭取の予想よりも検察が早く動いた」
「検察?」
「そうらしい。今朝任意で頭取が検察に呼ばれた。ITMファイナンスに対する不正貸付の容疑だそうよ」
「伊藤が吐いた?」
「いえ。伊藤はまだ監禁されているから無理ね。警察は修司の後釜の第2課長が殺されたとみている。それで家宅捜査をしたら押し入れの鞄の中から1000万の札束が出てきた。その封筒に伊藤とメモがあったようなの」
「詳しいな?」
「現場も情報網があるらしいわ」
「頭取は後任の課長には総理は紹介していないと言ってる。ここから何かが出てくることはないだろうと言っていたわ」
 話しながらどんどん器用に化粧していく。
「私もいずれ呼ばれるそうよ」
「頭取は今修司が記憶を失っていることが天佑だと言ってた」
「消えてなくなればみんなにとっていいのだなあ」
「私はいつでも会いに行く。今日は念のためちいママと一緒に帰ってもらう。個室で彼女としてはだめよ。彼女他人の化粧は苦手だから」




鏡の向こう 10

 サエに電話を入れてよいといことになり、マネージャーが外していた回線を繋ぐ。
「今日はママは?」
「大阪の店に新しい女の子を連れて行ってます。こちらの店で1か月ほど教育して送っているのです」
「体は?」
「ママは社長です。大阪の次の店舗を考えておられます。私達の働く場所を作るのが夢なのです。私の果たせなかった夢でもあるのです」
「それで夢を選んだというわけだ」
 それにはマネージャーは返事をせず部屋を出ていく。今頃はサエは店に着いた頃だろう。
「・・・」
 しばらく呼び出しているが出てこない。それで切ろうとしたらサエの声がした。
「すいません」
「サエか?」
「イサムね?」
「頭取とは話が付いた。もうすぐ帰れる。記憶は戻らない」
「店の方に巡査が回ってきてイサムのスーツ姿の写真を見せて行ったわ」
「何か言っていたか?」
「尋ね人としか。ボンの店にも来たと言っていた。それで朝ボンが週刊誌を届けてくれた。少し読んでみるね。ITMファイナンス事件は伊藤の解任で終わらない。メインバンクの頭取とも深く関与しているとみていて、行方不明の第2課長が事情を知ってると・・・」
「今度は警察か。カオルが言うようにしばらくはまた変装だな」
「それと今晩前のカラオケバーのマスターに呼ばれているの」
「それも?」
「どうもまた違う話のようなの」









鏡の向こう 9

「スカートを下げて」
 仰向けになったカオルが苦しそうに言う。私はマネージャが用意してくれた湯に浮かべたガーゼと塗り薬をベットに置く。スカートを下げると真っ赤に染まったパンティーに指が止まる。
「頭取は懲罰の気持ちか興奮の為か、何もかもを無理矢理入れるの」
 湯をしませたガーゼで丁寧に血を拭う。
「今まではプレイで切れたらマネージャーが治療をしてくれた。でも今日はブランディの瓶を入れられて、流石に興奮どころではなかった。かなり怒り心頭なの。でも私の体と修司の隠したものには我慢せざるを得ないのよ。本当はそんなに悪い人ではないのよ。こちらの方が悪いって言っちゃ悪い」
 顔をしかめながら笑っている。
 アナルの周りに薬を擦りこむ。
「駄目そんな優しい治療では。我慢するからアナルを広げるの」
 血がにじみ出してくる。カオルは自分の指で思い切りアナルを広げている。それから息むと鮮血して腫れた大腸が盛り上がる。
「そこに丁寧に刷り込んで。そうしないとしばらく使えなくなるもの。後2日か3日でサエに帰してあげるから。でも帰るまでにはもう一度したいわ。私って変態ね。もう少し中まで塗って。なんだか痛いの忘れそうよ」
 そういうカオルの泣き笑いの顔が可愛い。
「昔ね。修司に大腸を舐めてもらったことがあるの。覚えてないね。男の女は体中で愛を感じないとダメなのよね。でも今日はおとなしく横で寝ているから」






鏡の向こう 8

 翌日遅くなってもカオルは帰って来た様子はない。夕食はあのちいママが運んできてくれた。マネージャーが夕方出かけたという。仕方なく食事をしながらUSBの見過ごしたの部分を見てゆく。
 総理のNとは伊藤は面識がないようだ。この日記を見るとTと初めて国会議事堂の中で会っている。これからの繋ぎは私がやるという顔見世だった。Nにはいつも私設秘書がいた。でも彼と単独で会った記録はない。Nが紹介された頃、彼はまだ総理ではなかった。月に1度くらいの割に鞄を持って国会議事堂を訪ねている。これにはTは同席していない。会った日付に●の印が付いている。これが2つの時もあれば3つの時もある。●は1千万を表すのだろうか。そして党首選の3か月前、◎の印があった。この金はどこから用意されていたのだろうか。
 Nが総理になった夏、Tの指示でNを迎えに行ってKの店に連れて行った。この日は私設秘書が同席していなかった。N一人?とメモがある。この頃はすでに私はカオルとはできていてすでに新宿のマンションにカオルが頻繁に遊びに来ていた。決して店では遊ばない。カオルの部屋にはTがよく泊まりに来ていたのだ。
 やはりその日のことを記録している。私は店でお茶を飲んで待っていた。どうせショーが終わればNを送らなければならない。だが店を見渡してもNの姿もKの姿もなかった。
「明日9時に迎えに行け」
と言う短いTの不快そうな指示が入った。その日があのビデオをが撮られた夜だったのだ。
 急にドアが開いて、ちいママに背負われたカオルとマネージャが入ってきた。さっそくカオルはベットに寝かされて顔をしかめている。
「私が」
とマネージャが言うのをカオルが遮った。
「修司のしてほしい。戦った私を慰めて」







鏡の向こう 7

「頭取は帰ってきてるわ」
 ガレージに車を入れてそのまま応接に入る。年配の家政婦が待っていたようにお茶を運んでくる。
「ここは待合室のような部屋よ。ビデオも盗聴もされている」
 1時間ほど待たされてあのサングラスの男が迎えに来る。カオルと並んで2階に上る。一番奥の部屋の前で声をかける。中から頷く声がする。部屋が開けられて書斎の椅子にカオルに鞭を振っていた男の顔がある。
「新堂君だな」
「・・・」
「記憶を失ったらしいな?」
「ええ」
「カオルからも聞いたと思うが、確かに私はガス栓をひねるように指示した。だがカオルが逃がした。初めは伊藤と3人して裏切ったと思った。カオルに言われて君を連絡係にしたのも不味かった」
 カオルが頭取に勧めたのだ。
「二人の関係は伊藤に言われて知った。それでカオルも始末しようとも考えた」
 カオルは無表情に頭取を見ている。
「だがカオルの体に溺れてしまっている。カオルは君を生かすことで私に抱かられる約束をした。それはそれで飲もうと思っている。ただ私一人のことでは済まない事態になっている。その話を今までしてきた。それで提案だが君が持って逃げたものを返してもらえないだろうかね?」
「残念ですがその記憶もありません」
「ないものは返せないか」
 どういう結論を出したのだろうか。
「もしその証拠が現れたら必ず私は君たちだけでなくサエという恋人も殺す。今日はカオルを置いて帰りなさい」










鏡の向こう 6

「彼女ばれたと言っていたよ」
 車に乗り込むと隣のカオルが笑っている。今日は運転手は年配のマネージャーだ。
「彼女ちいママなの。まだ22歳だけれどやり手よ。小さいと言われてしょげていた。サエと同じくらいかな。サエは20歳というけど、まだ18歳にもなってないと思う。寂しい?」
「電話を止められているからな」
「頭取と話がまとまるまで今の情報を流されたくないから辛抱してね」
 部屋の電話の線が外されている。
「昨日は?」
「久しぶりに頭取と寝た。あれから私の部屋には泊まらない。いつも鎌倉の別荘まで行くの。用心深くなっているわ」
「伊藤は?」
「やはり修司から証拠を貰ったというのは嘘ね」
「どうなる?」
「それは頭取と関東の親分が決める。今日は私達が着くまでにある人と会っている。別荘が近くにあるの」
「それはNか?」
「USBをかなり見たようね。そうNです。まだマスコミは頭取とNの関係までたどり着いていない。その前に手を打つ気よ」
「まさか罠に?」
「修司を罠にはめるならこんなに苦労しないよ」
「ママは真剣です」
 バックミラーにマネージャーの厳しい目が映っている。







鏡の向こう 5

 その日私は一人車で帰された。何のための演技だったのか理解が出来ない。部屋に戻ると時間が知らされていたのかテーブルに早い夕食の準備が出来ていた。ビールの小瓶を抜いて夕食を摘まみながらパソコンを開く。ふと指を止める。これは私の覚書のような日誌らしい。第2課長になってから記録が始まっている。すべてイニシャルで記入されている。カオルはKだ。伊藤はIだ。それから頻繁に出てくるのはTの頭取だ。
 最初はTからIを紹介されている。頭取になるまでは伊藤が一番の部下のようだった。伊藤から半年ほど細かい引継ぎをされている。結構頻繁に伊藤に連れられてあちこちの店に飲みに出かけている。
「面白い女を紹介してやる」
と言われて初めてKの店に来ている。私は想像で頭取の連絡係でカオルに会ったと思っていたが、実は頭取にKを紹介されたことはなかった。
「俺の元カノ今は頭取の彼女だよ。ただ俺より立派なものを持っているさ」
 余程印象に残っていたのかその時の言葉を書いたようだ。忠実に記録するタイプだったのか。それから私は頭取に隠れてこの店で飲んでいたようだ。Kに睡眠薬を入れられたとある。どうもカオルからちょっとした遊び感覚で仕掛けられたようだ。それが互いに舞い上がってしまった。
 それからNがTから紹介されている。Nとは誰だろう。
 いつの間にか瓶が5本も空いてしまっている。ベットルームに移ってすぐ睡魔に襲われた。真っ暗な部屋の中にドアの開く音がした。食事を下げに来たのだろうとまた目を瞑る。次の瞬間パジャマのズボンを下げらっれて口に含まれている。
「戻って来たのか?」
と言いながらカオルのものを含む。
「細い!」
「やっぱりだめか!」







鏡の向こう 4

 朝起きると全裸のカオルが胸の中で眠っている。
「2年ほどこうして私は修司の胸で寝ていた。いつまでもこんな関係が続くと思っていたけど、二兎追うものは一兎も得ずだったのにね」
「それは?」
「修司は頭取の下で出世を考えていた。私はお金儲け。でもほら私のものも修司のものもビンビン。今日はこれから店が始まるまでに行くところがあるから駄目よ」
「また化粧するのか?」
「今日はいい」
 ガラスの眼鏡をかけて毛糸の帽子を被って車に乗る。今日の運転手は坊主頭のやくざの男だ。
「しばらく目隠ししてください」
と言われて1時間ほど車は走ってシャッターの中に吸い込まれる。
「ここから中を見てください」
 部屋の中の壁にある鏡を覗く。そこには疲れ切った伊藤の姿があった。彼の前にあのサングラスの男が座っている。
「伊藤は捕まってずっとここにいる。彼がどこまで情報を持っているか。証拠を誰かに預けていないかを調べている」
 カオルが説明する。
「でも進んでいない」
「これも頭取の指示?」
「そうなるかしら」
「何すれば?」
「伊藤と同じように手錠をはめられてドアを開けて顔を見せてほしいの。一言も言わなくていい。その眼鏡を掛けてくれていいわ」
 ゆっくりドアが開く。伊藤が驚いて目を剥く。















鏡の向こう 3

 カオルの部屋に入って化粧を落として風呂に入る。それからサエが用意してくれた下着に変えてパジャマ姿になる。机にはパソコンとUSBが置いてある。指先がUSBを掴んで差し込む。これは体が覚えているようだ。
 これはITMファイナンスが融資している大口先の全リストである。○●△というマークがついている。ちなみに京都駅裏は●になっている。とくに●の横に*印が入っているのが多い。この印は私がつけたそんな気がする。これは伊藤がバックをとっている案件ではないだろうか。
「少し思い出してきた?」
 いつの間にかステージ衣装に着替えたカオルと夕食を運んできたマネージャーが入ってくる。
「このUSBは?」
「あの部屋のパソコンに入っていたものよ。相当な量があるからゆっくり見た方がいい。それよりこっちを見ておいて」
 無造作にビデオをつける。マネージャーはテーブルに豪華な食事を並べてビールを抜く。
「今日は12時の最終のショーに出るから寝ておいて」
 そう言うなり部屋を出ていく。ビールを注ぎながらテレビの画面に釘付けになる。
 全裸に両足と両手を縛られた大股開きにされたカオルだ。白髪の大柄な初老の男が上半身裸で鞭を持って立っている。
「お前らは3人で組んでいたのか?」
 この男の声には覚えがある。鞭が何度も振り下ろされる。カオルの白い肌に赤い血筋が何本も浮かぶ。
「私は知らない。でも伊藤は修司を誘っていたのは事実よ」
「お前の浮気を認めていたのが間違いだった。お前があそこまでのめり込むとはな」
 鞭がカオルのそそり立ったものに目がけて振り下ろされる。男もかなり疲れてきたのか肩で息をしている。カオルのものは無残にも弾けて鮮血が流れている。悲鳴をあげない。
「分かった。修司を呼んで来い」





鏡の向こう 2

 八重洲口に先に出ていた年配のマネージャーが車で迎えに来ていた。周りの目が興味ありげに二人の姉妹を見つめている。ゆっくりドアが開いて驚いた目でマネージャーが二人を見比べて、
「新宿のマンションはあの時のままです。部屋には頭取から見張りが張り付いていてくれます」
「新宿に住んでいたのか?」
「そう、覚えてないのね。私と会うために新宿に2年前に引っ越ししてもらった。今回修司が消えてからこの部屋は伊藤と頭取双方から家探しされた。でも何も見つからなかった」
「それでもママは今まで家賃を払い続けてきています」
 マネージャがバックミラーを見ながら言葉を添える。車は混雑に巻き込まれることもなく新宿の裏町に止まる。さっそく入口に黒づくめの男が立当ている。エレベーターを二人で登ると止まった階にあのサングラスの関東のやくざが立っている。思わず体が引ける。男は私とは分かっていないようだ。そっとドアを開ける。
「彼は伊藤の?」
「関東のやくざは今は頭取側についている。何度も襲われたようね」
 殺風景な部屋に大きすぎる机がある。
「これはね。専務から頭取になった時に修司が譲られたものなの。ここで執務をとっていた。それだけ修司は可愛がられていた。それが頭取になると守りに入った。猜疑心が強くなったわね。私もここに泊まって除夜の鐘を聞いたこともあるのよ」
 机を触っているとふと本棚を少し押してみた。そこに『カオル修司』という傷跡があった。
「これが記念碑よ」
 指先だけに記憶が戻ってきたような気がした。





 

鏡の向こう 1

「サエの目色っぽかったわ。女の修司にも惚れたようよ」
 新幹線の個室に籠りっきりの私に弁当と缶ビールを運んできてカオルが笑う。
「中にいる時くらい化粧を落としたいんだが」
「駄目よ。ここまでにするのには2時間もかかったんだから。化粧がなかったらここでもやりたいくらいなんだから」
 つんつんとスカートの中のものを突く。
「着くまで約束事を確認しておきたいの。頭取はおそらく伊藤の始末を始めていると思うの。ただ頭取も伊藤がどこまで知っていて少しでも証拠になるものを持っていないか聞き出しているはずよ」
「やはり君が伊藤を呼び出して?」
「それも修司を助ける条件の一つ。私が嘘をついている。修司がギリギリのところで伊藤と組もうとしたと言ったわ。頭取があなたをガス自殺で殺そうとしたのはその恐れを感じていたからなの。それほど伊東は執拗に修司を誘っていたわけ。だから修司が消えた時には伊藤の嘘に騙された」
「そのために私も頭取の拷問を受けた。トイレにいけないほど一本鞭を受けたわ。痛みで熱が出て寝込んだ。でも吐かないので私の嘘を信じかかっている。修司はガス栓をひねったのは部下であり頭取の命令だと知っていた」
 私は現実にはどうだったのだろう。
「それで伊藤と組もうとした。でも伊藤も同様情報を独占するために修司を監禁した。それで証拠の品を持って逃げだした。実際修司がどこまで伊藤に話したか知りたがっている。でも今は修司は記憶を失っている。それを確かめたいのよ。でも頭取が昔通り戻ってこいと言ったらどうする?」
「サエのところに帰る」
「焼けるわ。でも3人でするの約束して。確かに一時私は修司を裏切った。その罪滅ぼしはするわ」






向き合う 10

「最後のプレイには私も入れてね」
と言って私とカオルに用意していた食事と飲み物を出して店に出る。代わりにあの年配の男が明日からのスケジュールと宿泊場所などをメモした紙を持ってくる。新幹線の個室を取っているようだ。宿泊先は『白薔薇』の東京だ。食べながらサエが買って来た鞄に下着や旅行用具を詰め込む。
 10時になって今日は青いチャイナ服を着たカオルが入ってくる。ここは定時に30分ほどのショーが何度も朝まである。これは週刊誌で読んだ知識だ。その後に客は思い思いの女性を指名して部屋に消える。
「もうやっているにかなって心配した」
 笑いながら寝室を開く。
「明日はちょっと化粧に時間がかかるから2時間で寝ましょう」
 言うなりカオルはもう裸になっているし、男のものがそりかえっている。サエはつられたようにそれを口に含んでいる。ひょっとしたらこれが最後の営みになるのかもしれないそんな緊張が3人にはある。私は飛びつくようにサエのスカートを下げてサエのアナルに差し込む。するとカオルが体をひねって突き立ったものを私の中に入れる。
「だめだあ」
 カオルがもう発射してしまっている。
「踊りながらやるのを考えていたら我慢できなくなっていた」
 サエがカオルのものを綺麗に舐めている。
「明日はサエも手伝ってよ。修司いえイサムをニューハーフに変身させて東京入りよ。伊藤は怖くないけど、警察が動いているわ」
 カオルはすでに警察の動向を捕まえている。
「それに頭取も手ごわいから。今日は川の字で寝ましょう」







向き合う 9

 黒鞄の中にあった鍵をネックレスにぶら下げてサエの首に掛ける。これはたぶん貸金庫の鍵だろうと思っている。ただサエはこれが伊藤や頭取達が血眼になって探しているものとは思っていない。ただ私の手掛かりになる重要なものという認識はある。
 昨夜またカオルが車で修繕する衣装を運んできて、明日の晩二人で来てほしいと告げて手紙を置いて帰った。カオルと東京に行くと言うことだ。会う相手は頭取だ。1週間欲しいとある。
「大丈夫?」
 胸から顔を上げたサエが心配そうに言う。
「その鍵がなければ殺されることはない。それにここまで来たらカオルに掛けるしかない」
「信じるわ」
「万が一も考えてフミコのところに泊めてもらうといい。困ったことが起これば姉さんに相談するのがいい。頼れる男のような女だからな。カオルと姉さんに抱かれるなら嫉妬しない」
「記憶が戻ったら?」
「その時はカオルに頼んでおく。これは想像だが、ここに逃げて来る前まで相当カオルに仕込まれていて男を愛す体になっていたと思う。ほれ、今でもサエに見詰められるだけでこんなに立ってしまっている。カオルはサエを妹のように思っている」
「うん」
「彼女も危険な綱渡りをしている。私も同じ綱を渡らなければならない。3人とももう隠すものも何もない。裸であそこまで愛し合ったんだから」
「戻ってきたらこの町に逃げてきた話を聞いてね?誰にも話さなかった恥ずかしい話」






向き合う 8

 朝リヤカーでビールを運んでいるボンと会う。
「あれからサエがめっちゃ明るくなった」
 そう言うと路地の中に消えて行った。あの日から二人は同じ布団の中で寝ている。
 今日は地上げの進行をチェックしがてら新聞社の近くで記者と待ち合わせしている。
「ITMファイナンスの最近の情報は?」
「そうですね。どうも伊東退任だけでは済みそうにありませんね。これは東京のライバル誌ですが」
と言って白黒の写真を見せる。
 そこには伊藤と話している『白薔薇』のママの写真が載っている。
「これはいつくらい撮られた写真なのですか?」
「10日ほど前でしょう。『白薔薇』のママの後ろ盾は頭取とはこの業界では周知の事実です。それに大蔵省がメイバンクの頭取を呼びつけていますよ。負債は銀行も入れると1500憶では済まないと言われています。バブルを抑える意味でも政府は厳しい手を打つだろうと言われています」
 記者もまだ頭取と総理の黒い関係は知らない。
「伊藤の行方は?」
「関西で消えたと言われていましたが、どうして東京のホテルで『白薔薇』のママと会っていたのでしょうかね?」
 身の危険を感じていた伊藤がどうして東京まで出掛けたのか。これはカオルが例の証拠を持ち出したのだろうか。
「これはオフレコですが、警察が第2総務課長の自殺の調査に加えて前任の課長の行方不明も調査を始めましたよ。その眼鏡だけでは危ないですね。警察の写真はスーツ姿で髭もないですから」
 私が警察に上げられたらカオルの絵はすべて壊れるだろう。ひょっとして殺されることも。







向き合う 7

「今日は『白薔薇』のママの指示ではなく自発的に来ました」
 初老の男性が珍しく歩いて事務所を覗いた。それで商談に使う喫茶店に案内する。明るいところで見ると表情に元女だった感がある。それに気付いたのか、
「元々私は伊藤の店でママをしていました。年を取って男に戻りました。ニューハーフは年を取ると惨めなものです」
 カオルもサエもそれを口にする。
「ところでママの話ですが、実は頭取との話はそんな簡単なことではなかったのです。それをしっかり理解してもらわないとママが大変な危険に状態に陥ります」
「頭取とは話ができたと?」
「いえ、そんな生易しい話ではなかったのです。あなたの部下が頭取の指示で閉じ込めた部屋のガス栓をひねった話は聞きましたか?」
「ええ、それで逃がしてくれたと」
「それで今度は頭取にママが監禁されたのですよ。電話がかかってきて私が迎えに行った時は全身ムチの傷で2日も熱を出して寝込みました。その後ママはその時に雲隠れしていた伊藤を綱渡りで関東やくざに引き渡したのです。これも頭取との約束事だったようです」
「頭取と関東やくざは?」
「関係があります。関西やくざとも。でもその仕事をしていたのがあなただったのですよ」
「とんでもない銀行員だったわけですね」
「でもママには優しかった」







向き合う 6

 サエは『白薔薇』の衣装をまとめて受けるようになった。それで友達の一人をアルバイトで雇ったようだ。どうも竿を持った少女のようだ。
 帰りがけに珍しく金融ブローカーのやっさんが覗いた。その足で定番の寿司屋に行く。
「ようやく京都駅裏の土地がまとまった。悪いけどまた一緒してや」
と言いながら週刊誌を開く。
「例の伊藤な、ITMファイナンスを解任されたで。800億ほどの焦げ付きが出ているようや。メインバンクが会社整理をするという噂や」
 やはりカオルが言っていたことだ。頭取が腹をくくった。例の証拠が伊藤のもとにないと判断して片をつけにかかった。
「それがあの記者曰く伊藤がその日に消えてしまったと言うてる。若頭は関東のやくざに連れ去られたと言うてる」
「でも伊藤は元々関東のやくざと組んでいたのでは?」
「伊藤は関東のやくざの金も運用してたんや。それも焦げ付かせとおる。金蔓も失って身柄を確保したそうや。しばらく安全やが伊藤が苦し紛れであんたの秘密をゲロしたら危ないと言ってたで」
 やっさんは私がなぜ狙われているのかは知らない。
 それにカオルは信じられるが、頭取が何を考えているのかはわからない。カオルの言うように早い時期に頭取に会わないといけない。何より記憶のあった時の私が逃げ出したのにはわけがあるはずだ。本当に信用していたら逃げ出さなかっただろう。ひょっとしたら頭取と会ったら記憶も戻るかもしれない。
「伊藤が生きていると困る奴がうようよいるのさ」
 頭取もその一人だ。






向き合う 5

 12時までにマンションに送ってもらった私とサエだが、言葉を失って並んで壁にもたれている。私は体中でサエとカオルを感じている。不思議なことには二人は私の中では一体だ。部屋に入った時からサエが私の手を握りしめている。商店街の明かりが消えて部屋の中も真っ暗になる。
「男の私でいいの?」
「男のサエがいい。記憶は戻らないがカオルに体の記憶を戻してもらった。カオルを抱くのはいやか?」
「彼女も好きになった。一緒に抱かれたい。でも捨てないで」
「いつまでも一緒にいたい。カオルとは話をした?」
「ええ、しっかり話をしてもらった。男女は愛する人を見つけるのは難しいと。私は女になったけど私を愛してくれる男の人は諦めていた。そんな時にイサムを拾って燃え上がった。カラオケバーにいた時は戻ってきてオーナーニーばかりしていた」
 この狭い部屋で一人しごいているサエの姿が浮かんだ。
「カノンが時々私をホテルに誘った。彼女はイサムに抱かれたとも言っていた。3人でやらないそれは悪魔の響きだった。でもやっと私はイサムの女として求められるようになって幸せだった。でももし男と分かったらと。だから私はカオルと勝負する気でいた。場合によれば殺していたかもしれない。カオルはイサムを裏切ったと言ってるけど、イサムのためにぎりぎりのことをしたんだと思う」
「まだ後始末があると言っている。これは私の仕事だと思っている」
「私も協力する。それにまた3人でやりたい。私って変態ね。もうまた立ってきている。私いつまでも綺麗でいれるように頑張る」








向き合う 4

 テーブルの上に小瓶を並べてテレビ画面のスイッチを入れる。そこに真紅のベットに寝かされているサエが映っている。
「その気になったら入ってくるのよ」
と言うなり画面にカオルが入ってくる。カオルは鮮やかに全裸になる。
「私は頭取から不倫するような気持ちで修司に薬を飲ませてこの道に誘ったわ。あなたは最初は戸惑っていたけど、私の奴隷になった。私のを吸わせアナルにも何度も入れさせた」
 カオルはサエの布団をめくり上げる。薄暗がりで見ていたサエの裸が鮮明に画面に映る。
「あの頃は自分は性に狂った雌犬だと思った。やりたくてやりたくて狂いそうだった。でもみんな同じものを持っていると今は分かっている。修司に無理やり私の小便をコックから飲ませた。口の中に大便を押し込んだ。なのに修司じゃなく頭取を選んだ。でも修司が消えて狂いそうになった。頭と体が別々なの」
 カオルの口の中のサエのものが吸い込まれる。サエのものがそりくり立っている。カオルは自分の中にサエを迎え入れる。カオルのものも見事に怒ったようにそり立っている。
「カオルも私も修司を求めているのよ。修司の体の記憶は残っているわ」
 いつの間にか私は素裸になって隣のドアを開けている。驚いたサエの目がそこにはあった。カオルの尻に重なった。これは体が勝手に動いている。
「修司の体は覚えてる」
 カオルの声が耳元で響く。
「イサム捨てないで!」
 サエの声が背中からして私の中に入ってくる。
 私はこんな世界に住んでいたのだ。







向き合う 3

「乗ってください」
 あの初老の男が車から顔を出した。やはりなぜか迎えに来るだろうと思った。姉さんに手を上げて車に乗り組む。カオルはサエを何かの意図があって呼び出したと思う。無言の時間が過ぎて元ラブホテルの建物の中に車がゆっくりと入る。ボーイが立っていてエレベータの最上階のボタンを押す。
「来てくれたのね」
 エレベーターのドアが開くと向こう側の部屋の扉も開いて純白のドレスを着た『白薔薇』のママが椅子に掛けている。
「サエが来ているはずだ」
「ええ、昨日は泊まってもらったわ。今は疲れて休んでいる。起きるまで少し昔のように飲まない?」
「サエを人質に?」
「そう言えばそうなるかも。でも彼女と引き換えなんて卑怯なことは考えてない。修司はビールだったね?」
 冷蔵庫から小瓶を2本取り出して抜く。それをそのままごくごく飲む。
「これが修司の飲み方。覚えている?おととい頭取がここに泊まった。それで話をつけたの」
「修司は記憶を失っていない。もし今後サエに手を出したら公表すると修司に脅されたと言った。頭取は私が監視することで話は成立した。でも修司は私と約束しないとこの契約は成立しない。それにそれを破ったらサエを殺す。もちろん修司がサエと別れるというならまた別の契約がいるわ」
「サエとは別れない。君の契約とは?」
「昔通りに時々サエも入れて一晩暮らすのよ」
「それは私一人では決められない」
「彼女のOKは取ってるのよ」
「抱いたのか?」
「もちろん。立派なあれがついてたわ」






向き合う 2

 案の定サエのだんまりが始まった。もうこの状態が3日間続いている。窓ガラスだけは管理人に言って直してもらった。
「妹と言っても腹違いだからやっちゃったわけだね」
 この管理人はいつ見てもエロ雑誌を読んでいる。ボンの言うのには毎月飛田に通っているという話だ。さすがに今日はサエにきっぱり頭を下げて謝ろうと思い、仕事が引けてから残業してるだろうサエの店を覗いてみた。前に来ると店はカーテンが閉まっている。中から光も漏れて来ない。背中からボンの声がした。
「大変な騒ぎだったね」
「ちょっと飲めるか?」
「ああ、いいよ。最近親父はほとんど店に顔を出さなくなったので少しサボれる」
 立呑み屋の暖簾を潜る。
「もうサエとはできてると思っていたんだけど?」
「ちょっと当たり所が悪かった」
 確かに当たり所が悪かった。
「ボンは一度あれを銜えてもらったと言ってたな?」
「一度きり。その時おっぱいを揉ませてくれた。すぐ立つからって」
「前を見た?」
「変な質問だな」
「ボンだけに話すんだがサエにあれが付いているんじゃないかという奴がいる」
 まさかという返事を期待したが、ボンはビールをゆっくり注ぎながら、
「昔カラオケバーにカノンという女がいたね?」
「黒髪の女だな」
「そう。そのカノンがサエの腰を見て男の腰だと言っていた。それにこの店ニューハーフの得意さんが多いんだ。さっきもサエの姉さんみたいな人とタクシー乗って出かけて行ったよ」
 『白薔薇』のママのカオルが来ていたのだ。










プロフィール

FC2USER015477MKZ

Author:FC2USER015477MKZ
学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

FC2USER015477MKZ

Author:FC2USER015477MKZ
学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR