空白 2017年01月

記憶 4

 水を飲まされて蒲団に巻き込まれた。折られた指はもう感覚がなくなっている。それに彼らの言っていたように言葉が出ないよう見なっている。体を持ち上げられ階段をゆっくり上がっていく。どこかに移されるようだ。しばらくして荷台に転がされる。それからゆっくり車が走りだす。
 布団で包まれているので息が苦しい。車は何度か細い路地を曲がった時激しくぶつかる音がして後ろのドアに叩きつけられる。喚き声がして蒲団ごと外に運び出される。もう一台車が来ているようで蒲団ごと運び込まれる。
「私よ分かる?」
 カオルが蒲団から顔を出す。私はうんうんと首を振る。
「走り出すのよ。後は小頭に任せるの。部屋に医者を呼んでおいて。指が潰されているわ。段取りは東京から来てくれた探偵がしてくれた」
 探偵の顔も覚えている。
「カノンが見つけてくれて知らせてくれたが覚えてる?」
 首を横に振る。
「鞄のありかを教えた?」
 首を振った。鞄は覚えているが、どこに隠したかは覚えていない。すっかり車にぶつかったところから記憶が消えてしまっている。
「記憶は戻ったけど、イサムの時の記憶が消えたんだわ。サエは?」
 サエと言う名前に覚えがない。
「こんな日が来るのを恐れていたわ」








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記憶 3

「お前なあ」
 肩幅の広い男が天上から降りてきて、しょぼくれた男に怒鳴っている。今日も3本目の指を折るのだろうか。男が私の髪を掴んで顔を上げさせる。
「お前の名は?」
 私は首を振る。
「とぼけるな。お前の名はイサムだ。金融屋の部長だ。公園の前のある金融屋だ」
 全く記憶がない。私は銀行員の修司だ。
「組員が言っていたが口がきけなくなっている。やりすぎたんだ。それに組長からも出て行けと言われたんだぞ」
「どうしてや。分け前も出すって話してあるんやろ?」
「組の上の方から何かあったようや」
「そんなら早く吐かそうや」
「そんな余裕ない。晩にホテルに運ぶ。何せ俺の組は預かりで手下も使えない。それに頭取のルートもたたれている。軍資金も底をついてきた。この組も上から睨まれるのを恐れている」
 グローブのように膨れた指を持ち上げて、
「もう1本で落ちるのやがな」
と残念そうに言う。
「取りあえずそこにある蒲団で包んで夜のうちに運ぶ。上に運ぶのは誰も手伝ってくれんからな。ライトバンの運転手は手配した。だが中身を見せられない。ここの組長にも内緒にしている」
「どうして?」
「上からイサムと言う名が出ていて手を出すなと言われている」
「そんな大物じゃないですよ」
「いや、ITM事件の重要参考人だ。それで俺の兄貴もぶち込まれた」
 どうも頭取が始め組んでいた横浜の組と係わりがあるようだ。














記憶 2

 揺り動かされて水を飲む。どうもやくざの子分みたいで目に憎しみはない。
「何やらかしたんや。素人にはきつすぎるわな」
と言ってから猿轡をはめて隣の押し入れのところまで引きずっていく。
「今日はな。ここでショーがあるんや。えげつないショーやで。見るんやったらここのテープ剥がしてやるから見たらええ」
 とくに鍵は掛けた様子ではなく何かの箱を置いたようだ。穴からはシーツを引く男たちに混じって客たちが下りてきて思い思いに座っている。30分ほどして部屋が真っ暗になって音楽が流れる。全裸の女が檻から運ばれてきて逆さに吊るされる。ストロボが至る所で弾ける。どうも穴からT字に広げられた毛のない裂け目が見える。
 これは時々カオルがするディルドのプレイだ。男が巨大なディルドを2本持っていて、まずは膣の中の深々と刺し込んでいく。潮がもう溢れていて足を伝わる。次はそれより長いのがアナルに突き刺される。その状態で吊るされた女が回転する。ディルドが抜かれると男がアナルの中に片腕を入れていく。
 指を折られて押し込められているのに思わずカオルとのプレイを思い出して下のものが反り立っている。カオルの場合は肘のところまで入って、へその当たりに指の押上げが見える。この女も同じ状態まで見せているが、裂け目から赤い血が垂れている。
 さすがに疲れて壁にもたれる。ライトがすでに落ちていて荷物を片付ける音がしている。
「明日はできんよ。傷が広がったわ。ゆっくりするの分かった」
 女の声がしてそれから静かになる。
「やっぱりただ見客がいた」
 女の顔が覗く。
「カノンや!分からんの?」
 どうも顔見知りのようだが記憶がない。



記憶 1

 暗い穴倉のような部屋だ。どれほどの時間眠っていたのか思い出せない。天井窓が開いて男が二人降りてくる。同時に眩いほどの照明が点く。一人は背の高い肩幅の広い男でもう一人は見るからのしょぼくれている。どうも私は両手両足を縛られているようで感覚がなくなっている。どちらも覚えのない顔だ。
「今日はもう1本折るからな」
 しょぼくれた方が楽しそうにペンチを手にしている。
「まあ、慌てることはない。まず左手を見せてやれ」
 左手の一指し指がグローブのようになっている。パンパンに張れているところに釘を刺す。
「今日は中指だな」
「そのくらいで吐いた方がいいぞ。こいつは楽しみでやっている」
「君らは誰だ?」
「あまりの痛さに記憶をなくしたか?お前は金融屋の部長のイサムや。ふいにやってきてめちゃめちゃにされたんや。最低5本の指は貰うまで吐くなよ」
「待て、貸金庫の鍵は?」
 そうだ。私は貸金庫の鍵を持って逃げてきたのだ。それでガードを越えた道路で跳ねられてた。彼らに捕まったのだろうか。でも死んでもいいと思っていた。私は敬愛する上司の頭取に捨てられたのだ。やはりカオルに手を出したのが不味かった。でも逃がしてくれたのは確かにカオルだ。私を捕まえたのは頭取か伊藤か。
「やりまっせ」
と言うなり中指をペンチで捻る。
「こいつまた記憶失ったんやろうか?」
 その言葉とともに暗闇の中に落ちておく。






一区切り 9

 最近サエとは穏やかなセックスになっている。同じ布団で寝てその日の気持ちでキスだけの日もある。今度の日曜日に動物園にユイを連れて行って、その後食事をしようと約束した。ここ3日とくにボンの店は目立ったことは起こらず、従業員も板長を除いて戻ってきた。それでもフミコは常連には人気で子供をベビーシッターに預けて夕方からカウンターに立つ。
 サエの店は常連の男女の人形のような子が入った。元々自分で服を作っていたらしく腕がいいようだ。今日は作業台を一台増やすので私も直行で手伝いに入っている。最近は作業がサエだけではこなせないようになっている。彼女は自分で服も作るので修繕はすべて任すようだ。ちょうど宅配で大きな袋が届く。
「カオルさんところの衣装の修繕を受けている。新着の衣装の依頼も3着来てるの」
 その時電話が鳴ってサエが出る。頷いて私に受話器を渡す。
「事務所に入れたらここだと。頭取から横浜のやくざの逮捕された組長の弟が大阪に入っていて、どうも修司の持っているものと交換を申し出ているのよ?あの黒サングラスを殺す計画をしたのは彼だそうよ。あの探偵に調査は依頼した。それで心配で」
「とくに動きはないがなあ」
「頭取から総理への約束の資金を私が引き渡した。向こうは編集長が来ていたわ。一度電話を入れてくれと言ってた」
 さっそく伝えられた電話に入れる。
「やあ、これで総理への約束は果たしたことになるが、問題は反対派閥が君の持ち物に注目している。何か動きが出るのか心配だよ」
 外に出ると路地を抜け公園に出る。もう人夫出しは終わっていて労働者の姿も少なくなっている。いつも姉貴が乗っているトラックの姿もない。ここから事務所が見える。私の横にブラックのワゴンカーが目に入る。急に目の前が真っ暗になる。ソファーに押し付けられ腹に強烈なボディブローを受けてそのまま気が失われていく。







一区切り 8

 翌日やはり従業員は誰もボンの店には来ない。新しい板長が急遽仕入れをして入る。フミコが開店からボンと並んでカウンターに入る。小頭が若いものを連れて頻繁に覗く。私も昼は姉さんとボンの店で食べる。
「ゆっくり歩くのでガードのトイレから後ろに付いて来ている奴を見てくれ」
 小声で姉さんに伝える。それからのんびりと通りを抜け路地を曲がる。そこからやぶ医者の裏口に隠れる。今度は姉さんの後ろからゆっくり付いていく。後ろの目隠し帽をかぶった男は慌てて路地に入って走り出す。姉さんの肩を叩いて逆に跡をつける。男は何度か角を曲がりながら事務所にたどり着いている。明らかにイサムと知った追跡だ。
「あれは番頭の背格好よ」
「確かに」
「一緒に付いていくわ」
 公園から今度はどんどんと早足で商店街を抜けていく。
「親分のところだわ」
 病室も心得ているらしく、そのまま親分の個室に入る。30分ほど廊下の隅で待つ。今度はジャンバーのポケットに封筒をねじ込みながら出てくる。
 姉さんが番頭の姿が消えてすぐ飛び込むように部屋に入る。
「また金を貸したんじゃ?」
 親父はばつが悪そうに頭を撫でている。
「近々金が入ると言うので100万都合した」
「まさかボンを脅す気では?」
 姉さんが愚痴をこぼす。あり得ない話ではない。番頭は私にとっては厄病神なのだ。だが彼にとっても厄病神だろう。







一区切り 7

 若頭の貸付を実行した。頭取に権限があるうちに決めておこうと私も若頭も暗黙に同意している。カオルから事務所に電話が入って頭取が新しい店の上の部屋に泊まっていったと報告した。
「少し使えるようになったみたい」
 精神的に落ち着いてきたのだろう。
 ボンの店の報告を小頭から受けた。どうも板長とボンの母親とは10年程の体の関係があるようだ。その板長を紹介してきたのが今宮戎のところにある組だと言う。組本部は同じだが若頭と敵対する武闘派である。この組はITMファイナンスと関西では組んでいて今資金的にはパイプを失っている。
 ボンは昨日は寝込んでいる親父と話し合った。本店を任せてほしいと訴えて珍しく親父が頷いたとのことで今夜板長と話し合いがある。私が彼の補佐で入ることになっている。
 9時過ぎに近くの喫茶店に向こうは板長と組の人間が座り、私とボンが店じまいを確かめて遅れて入る。
「あんたみたいなチンピラで店は賄えんわ」
 最初からけんか腰だ。
「親父から本店の運営を任されている」
 ボンが精一杯答える。
「明日からみんな来んよ」
「来た人で続けて行きます」
「若造が!」
 隣の男が吠える。私はそのタイミングでボンの腕を取って立ち上がる。鞄の中には小頭から借りた盗聴器が入っている。小頭も顔を出せないが近くの飲み屋に若いのを連れてきてくれている。どうも向こうもそれらしい男達が路地にいるようだ。
「明日の仕入れから親分の紹介者に入ってもらう。他の店員は?」
「分からないのでフミコに頼んでいる」
「子供は今度サエが預かる」





一区切り 6

 今夜は記者から誘いを受けてやぶ医者の馴染の小料理屋に行く。
「今度の記事でキャップになりました。今日はそのお礼です」
「いえ、お互い様ですよ」
 私から記者にビールを注ぐ。
「あなたは頭取と何か取引をしたのですか?」
「もう記事取りですか?」
「今回の合併延長もあまりにもすんなりしています。それに『白薔薇』のママが姿を現せて動き回っています。どうもママとあなたは恋人同士だと今更気づきました」
「私には子供を産んだ女性がいますよ」
「あなたには二人のあなたが住んでいると思うのです」
「二人の?」
「つまりイサムであり修司でもあるのです。記憶は戻らなかったが、記憶に相当する情報と感情が戻ったと思うのです」
 記者はサエが男でカオルとも寝ていることは知らない。でも二人を愛する私を感じているのだ。
「これからITM事件はどうなるのでしょうか?」
 彼は頭取の後ろに総理がいることは知らない。どこまで最後を飾るかは二人にかかっている。あるところまでの準備はできたがこれからは手が出せない。
「『白薔薇』のママのシリーズは続くのですか?」
「次は銀行合併です。どうもITM事件は根元はここのような気がするのですよ」
「それは正しいと思います」
 どうも彼はこの答えを期待していたようだ。




一区切り 5

「少しボンの力になりたい」
 サエを抱きながら昨日の夜の店の様子を話す。どうも本店の板長が従業員をまとめているようだ。
「一度フミコからも話を聞いてくれ」
「分かった。ボンにはお世話になってるものね」
 事務所に出ると小頭に会いに行く。組事務所には入らず喫茶店に入る。
「地上げビルの件なら組に来てくれたらいいのになあ」
「その報告もある。あの周りはやはり若頭が買うことで貸し付けをすることになった。ビルの購入は指値することになったよ。数字が決まったら組長に報告する」
「何か話があるようやな?」
「ああ、ボンの店のことなんだが、親父が倒れてどうも本店の板長がボンを追い出そうとしている。どうも板長だけの動きではないように」
「あの店はなあ。この辺りでは小金持ちで知られているさ。とくに新世界ではいい場所に店を4軒も構えている。欲しがっている店も多い。それにあそこはうちの組の敵対している組と親しい。一度調べてみるわ」
 小頭は色々な店の面倒見がいい。貸付に際しては私も意見を貰っている。
「それとなあ。そちらの番頭が執行猶予でその組の世話になっている。これは姉さんから調べを頼まれている。どうも親分の病院に出入りして金をせびっているようや」
「知らないうちにいろいろあるんですね?」
「街の情報はいくらでも入る」






一区切り 4

 念入りに調査をして親父の入院している病院を姉さんと訪ねる。姉さんは着替えを整理している。
「確かに大きいな?」
と言いながら手帳を開いて見ている。
「それぞれの担保を入れてどれくらい借りれる?」
「二つは地上げ中ですから担保に取らないでしょう。大きい土地は更地になっているので15億は可能かと」
「なら今の根担保で8億は出る。それで手元現金は?」
「2億残ります」
「たまには息子を儲けさせんとな。会社は娘に継がせるからなあ」
「そんな気の弱いことを言わんでくださいよ」
 了解を取るとさっそく若頭とやっさんに連絡を入れる。その足で信組の理事長に融資申し込みを上げる。最近は姉さんにも仕事の流れを覚えて貰うために同行している。
 帰りがけリヤカーを引いているボンを見つけて降ろしてもらう。
「少し飲むか?」
 二人で飲むのは久しぶりだ。
「元気なさそうだな?」
「親父が寝たきりで本店の店員が言うこと聞かんのや。母にいろいろ告げ口してこのままやったら店から追い出される」
 どうもボンは親父だけでなく母親とも旨くいってないようだ。
「これから本店に飲みに行く」
 ボンにはお世話になりっぱなしだ。




一区切り 3

 ボンのところで預かってもらっていた鞄から5百万を出してきて3百万をカオルに2百万を探偵に送金する。さっそく事務所に、
「冷たいね」
とカオルから電話が入る。
 今日は久しぶりに若頭にスナックに呼ばれている。
「どうや、記憶は戻ったか?」
「記憶は相変わらずですが、事実は積み重なってきました」
 いつものようにママと3人だと思っていたら金融ブローカーのやっさんも同席している。
「まず仕事の話だ」
 ファイルを3束出してきてやっさんが説明する。どれもITMファイナンスのものだ。1時間ほど彼が説明して私が質問する。若頭は時々メモを取る。ママはゆっくり寿司を大皿に並べる。どうやらやっさんの持込案件のようだ。
「合わせて23億ですね?」
「すべて6カ月短期勝負や」
 若頭は長期案件はめったに手を出さない。最後のファイルを睨んでいると、
「それは金額が大きいか?」
 それは15億の兄貴の組長の囲み地だ。確かに若頭の最高実績は17億だ。
「金額もあるので即答はできません。それとこの案件の真ん中のビルは親父さんの息子に貸しています」
「それも分かっている。値段は指値してくれ。お互いにギブアンドテイクでいいさ。この先の売り先は彼の力ではどうにもならん」
 どうも紐付きのようだ。
「ところでなあ。横浜の経済やくざの失態が関西にも影を落としているわ。武闘派が元気を出してきた」
 笑いながら言っているが目は笑っていない。







一区切り 2

 銀行の合併が案の定延期になった。しばらく頭取が業務を続けることになったわけだ。これは総理も承諾済みだし会長も知っているだろう。それを待っていたように他行の合併話が2件新聞に発表された。3面記事に横浜の組長が収監され組も本部預かりとなったと書かれている。
「大変だったようね」
 久しぶりに顔を出した事務所で姉さんから声をかけられた。
「こちらこそ勝手をして」
「その代り毎日サエのところに行ったから楽しかった。ユイがはいはいしたよ」
「親父さんは?」
「1度事務所に顔を出したけど、歩けないからね。それと兄貴が相談に来るって」
 言い終わらないうちに表に車の止まる音がして、小頭と組長が顔を出した。
「待ちかねていたんだぞ」
「あの雑居ビルの件ですね?」
 小頭が立退き状況説明する。心配をよそに思ったよりのスピードで立退き合意が取れている。資金は出来るだけリスクのないように最大に後ろに引っ張る作戦だ。
「問題が出たんだ。あのITMファイナンスの差押え地が任売になるようなんだ。それが若頭が噛んできたんだ」
「どうします?」
「戦争などできんわ。今の立退きを仕上げたら売渡の間に入ってほしいんや。親しそうだからな」
「一度会って打診してみます」
 若頭はITMファイナンスの不良債権を買い漁っているようだ。確かに兄貴のような小さな組は口の出しようがない。だが何とか親父さんの気持ちを立てていい値段を付けようと思う。






一区切り 1

 10日ぶりの帰阪だ。安全のためにマネージャーが新大阪まで車で迎えに来て店まで運んでくれる。すでにテーブルには肉料理が並んでいてカオルとサエがお揃いの衣装を着て並んでいる。どうも見ても姉妹だ。
「修司はビールの小瓶だよね?サエもそうか?私はブランティを頂くわ」
 話してる部屋に携帯が鳴る。
「はい。着きました。よく言っておきます」
とカオルが答えて携帯を切る。
「頭取から。総理と条件整理に入ったそうよ。よろしく抱いてやれって」
「それは余分だろ?」
「頭取にはサエのことも話してあるし、3人でよくやるとも言っているわ」
「頭取にあのことも言っている?」
「ええ、確認の電話も前にあった。東京の店の最上階に今手を入れている。頭取の部屋を作っている。親父と娘時として男と女って言う話になっている。もちろん修司に抱かれてもよしと了解とっている。サエにもとったよ」
「いいのか?カオルのあれは大きいからな」
「私にはユイがいるし、3人で抱かれるのも好き」
「でも凄いのよ。この前サエとやった時私の全部飲み込んでしまうの」
「ねいさんが無理やり」
「あれは無理やりの顔じゃない」
 




模索 11

「サエをたっぷり抱いたよ」
 朝サエの電話にカオルが出た。
「頭取と会った。会長の話勧めるよ」
「ええ、頭取とは妙な愛情が湧いているのよ。でも欲求不満は修司が責任を取るのよ。ちいママとしっかりやった?」
 カオルの指図でちいママが夜に押しかけてきてもうへとへとになっている。
 下の喫茶店から編集長の外線が入る。もう下に来たようだ。
「どうでしたか?」
 編集長がコーヒーを手にのんびりと話しかけてくる。朝一番に探偵からこの編集長の調査を貰っている。どうやら今は政財界のブラックジャーナルの編集長らしい。そのきっかけは総理の秘密を暴露したことから始まっている。余程冷たい仕打ちを受けたのだろう。
「夢のようなポジションではなく、もう少し実体のあるものを用意せてもらえば引退は考えていますよ」
「でしょうね。たとえば日本の金融再編成の有識者・・・」
「さすがに頭が切れる。引き際としてはきれいですね。Nは近く禅譲の予定です。それは追及を受けている反対派閥ではなく身内に近い派閥です。それで頭取にはもう少し資金を応援いただきたいと。もちろんNにではなくその後継者にです」
「そのためにはしばらく時間が入りますよ」
「そのために私は他派閥の今回の合併疑惑を書きます。Nはそれで合併をしばらく見合わせてもらいます」
「分かりました」
「へえ凄い美人がロビーから出て来ましたよ」
 それは化粧を直したちいママだ。
「男かもしれませんよ」







模索 10

 なんと大胆に編集長は頭取の応接に私を送り込んだ。カオルは今大阪に出かけてサエと会っているだろう。カオルは今後のことを考え始めている。サエにいろいろ説明すると言ってくれている。
「どうだ記憶は戻ったのか?」
 頭取から声をかけてくる。
「戻っていませんが、あの頃の状況はかなり掴みました」
「恨んでいるか?」
「いえ、カオルを寝取ったのですから仕方ないと。でも私は今カオルを守る立場です」
「そうか分かった。私もとことん追いつめられたものよ」
 寂しそうに笑ってコーヒーを勧める。
「カオルはいい女だ。もう交わる力も失った。面倒を見てやってくれ」
「頭取はこれからどう考えているのですか?」
「総理は逃げ腰だ。おそらく今のポジションも実現しないだろう。お互い夢を持って組んだ。一方は足を踏み外してこのざまだ。総理はもう朋友ではない。私には動いてくれる味方がいない。自業自得だな」
「カオルからも手伝いしてほしいと言われています。金融再編はなったのですが、どうも総理も頭取もそれを横取りされた格好になってますね?」
「よく分かるな?」
「USBを見ているとよく分かります。でもこれ以上進まれると危険です」
「だがその向こうには何も見えんのだ」
「幾つになられました?」
「今年で67歳だ」
「引退してカオルの会社の会長でもされたら?」
「カオルには君がいる」
「カオルには悪いのですが私には今サエがいます」
「らしいな。カオルは嫌がるだろう?」
「これはカオルの提案です」









模索 9

「この間は失礼しました」
と名刺を出す。編集長の肩書だ。
「なぜ検察と一緒にあの席にいたのか不思議だろう」
「そうですね」
 案内されたのは永田町にあるビルの編集室の奥にある応接室だ。
「当時のNの私設秘書でした。あなたとも仲良くさせてもらっていましたよ」
と私とグラスを傾けている写真を1枚置いた。
「あなたが行方不明になった頃、裏作業が閉鎖になり私も独立の道を選びました。それが今になってNから再登場させられた。我儘な人だ」
「頭取とNの間はどうなのですか?」
「よくない。だが戦争を始めたわけではない。ただ和解の案がまとまらない。私も動いてみたが接点を見つけるには至っていない。まずITM事件をこれ以上拡大させない手を打った。頭取は資金の流れを横浜の組から変えた」
「私に何をしろと?」
「今のままではまだ『白薔薇』のママもあなたも危険だ。2人は組の命綱になっている。Nも頭取もあなたのカードを気にしている。私が思うに記憶がないあなたなら逆に情報に基づいて冷静な判断ができるのではと。昔も私とあなたは我儘な主人のお世話をしてきた」
「でもNは頭取を切りたいと思っているでしょう?」
「もちろんそうですが、Nも派閥の裏の追及を受けています。それに現実資金不足になっています。Nも資金パイプを失っているのです。合併の新頭取は他の派閥のパイプです。私が頭取とあなたを安全なところで合わせます。まず頭取の意思を確かめてください。その後私とあなたの立場も含めた摺り合わせはどうですか?」












模索 8

 早くも警察が関東やくざのナンバー3の横浜の組長を任意同行した。合わせて組事務所の捜索が始まった。どうもあの検察の人物の動きのように見える。新聞には日本1位となる合併の詳細が載せられている。ただこの決定には閣内の反対もあるようだと書かれている。この2行だけの合併では認められないという意見だ。
 カオルは朝一番の私との濃密な交渉を終えてマネージャーのワゴンで『白薔薇』に戻った。私は次の作戦のために大阪の若頭の携帯に電話を入れる。
「そろそろ掛かってくる頃かと思ってたぞ」
「もう少し東京に仕事を残しています。横浜の組はどうなるのでしょうか?」
「そのことだな。組としては出過ぎたようだ。裏情報ではどこから手を回したのかタイに行っていた子分がゲロしたようだ。これは仲間内の抗争になったようだ」
「そういうことってあるんですか?」
「金と力だ。私だっていつそうなるかもな。関東のやくざの金の流れが変わってきている。どうもナンバー2の武闘派に誰かが金を流している」
 今敵対しているのは頭取ということになるが。
「これはここだけの話だが、あの黒サングラスの身内が親分を売ったと噂だ。関西もこれから厄介なことになる。関東と連携している武闘派が動き出した。今度の銀行の合併でもやくざ界は大変動になる。金の流れが変わるのだからな。その頭取と早く話を付けた方がいい」
 若頭の電話を切った途端内線のランプが点いた。
「外線からです」
「・・・」
「先日検察の幹部と同席したものです。今から車を迎えにやらせましたがもう一度会えませんか?」
 確かにあの横にいた男の声のようだ。あの時は漠然と見ていたがどこかでよく見た顔だったような気がしていたのだ。
「やはり記憶がないようでしたね」







模索 7

 朝サエに生存確認の電話を入れた後、カオルが引き継いで長電話をしている。今日は第1課長の車で検察の庁舎に入った。すでに会長から原本のUSBのコピーが渡されている。部屋に入ると事務官もいなく背広姿の男性がソファーに2人掛けている。向こうは名刺は出さずに記録もしないようだ。
「USBを見ました。頭取が積極的にITMファイナンスに関与していたのはよく分かりましたが、不良債権については伊藤氏の比重が大きいでしょうね。これはすでに検察では見解が出ています。問題は頭取とNの係わりです。どうもこの部分はあなたが担当していたようですね?」
「記憶は戻っていないのですが、確かに担当していたようです」
「NはNのままで話してください。伊藤氏の過去の証言では裏金の半分を頭取にバックしていたようです。伊藤氏の裏通帳は確認しましたが、すでに全額引き出されています。調査では関東の組だろうと考えています。頭取側の裏金は全く調査できていません」
「それは記憶にありません」
 貸金庫は墓場まで持って行こうとカオルと話してる。
「ただUSBを見て金融再編を考えていたようです。Nとはそこでは意見が合ってたようです」
「Nを特定するのは検察では考えていません。とくに現在の段階ではNの証拠のようなものはありません」
 隣で黙って聞いている男性が初めて口を開く。
「あなたはよく週刊誌を使っていますが、Nについては触れないでほしいのですよ」
「了解しています。私の情報では今一番危ないのは関東のやくざです。タイでの殺人はおそらく関東のやくざの指示です。『白薔薇』のママの監禁もそうです。それに私の交通事故も彼らでした」
 頭取の関与を軟らかく否定した。





模索 6

 男女入れ替えのまま彼を抱いた。いつの間に眠ってしまったのか朝になるとすでに女に戻ったカオルが髪を拭きながら浴槽から上がってくる。内線がかかってきて外の電話を繋ぐ。
「今は手が空いたかな?」
「さすがに朝まではやってない」
 探偵からだ。
「横浜の組からママの捜索の指示が出た。しばらく出ないことだ。そちらも要注意だ。ホテルの救出は当日現れた頭取の仕業と考えているようだ。今朝頭取の赤坂のホテルに組員が張り付いている。それと頭取の鎌倉の別荘に家宅捜査が入っている」
「マネージャに連絡して警察に出かけて捜索願を取り下げてもらってくれ。あのホテルの名前を告げて部屋番号も言ってここに監禁されてたと。やくざが頭取の脅しのためにやった」
「そこまで言っていいのか?」
「作戦変更なんだ」
 電話を切るとカオルが反り立ったものを裸の背中に押し付けてくる。どうもたまったものが抜け切れていないようだ。
「すいません。第1課長いませんか?新堂です」
「はい私です」
「会長に検察の上部と私をセッティングをお願いしたいのです」
「どうする気なのですか?」
「双方にとって程よいところを提案したいのです。当然それは銀行のメリットになります」
「話してみます。返事はどこに?」
「探偵の携帯にお願いします」
 電話を切ったのと同時に背中にどろりとした生暖かいものが飛び散った。














模索 5

 ちーママが化粧に現れ入念に女装を施された。車を探偵が手配してくれ日暮れにホテルに入る。マネージャは今回はわざと東京中を走り回ってもらった。やはり関東のやくざが張り付いている。彼らは頭取は役に立たぬと『白薔薇』のママを手にし頭取を脅す方向に回ったようだ。多大の不良債権が大きく圧し掛かっている。
「どうだ?」
「来ると思った」
 すでに鞄に荷物をまとめ男に戻っている。これは探偵が昼に準備して運び込んだのだ。
「なんだか恥ずかしいわ」
「妙な気分だな」
 男と女が入れ替わっているのだ。
「腸の腫れは引いた?」
「もう出来るわ」
 1時間10分前に隣の部屋に移って料金の精算を済ませてそのままホテルの外に出る。車のドアが開いて乗り込む。運転手は探偵だ。
「作戦を変える必要が出てきたと思う」
「私もそう思う。もう頭取と戦うのではなく、最後の花道を手伝おうと」
「そうだな。恩返しをすべきだな。色々とあの頃のUSBを見ていると本当に頭取の夢をかなえようとしていたと思うんだ」
「私も最後まで頭取の女で生きようとしていた。裏切ったのは私達よ。もし頭取が修司を殺そうとしなかったら別れる気でいた。頭取も反省していたわ。あそこで嫉妬したと」
「取りあえず私のホテルでしばらく身を潜めて作戦の練り直しだ」












模索 4

「今日の週刊誌の記事で警察が頭取に任意をかけたよ。あれは君か?」
「いえ、ママから指示を受けたマネージャーが渡した。こちらは合併の話を流したが」
 探偵が週刊誌を広げて見せる。やはり写真がアップされている。これは頭取が見れば自分の別荘で窓にいるのがカオルと分かる。警察も気づくだろう。念入りに捜索願いを出した後の日付だ。こういう日の来るのをカオルは想定していた。
「それと例の貸金庫の鍵だが池袋の合併先の銀行だ」
 カオルはどうやら貸金庫の銀行を推定していたようだ。だからあのスナックに寄れと言ったんだ。私がいろいろ出し入れするのを知っていたようだ。
「ママとも連絡は取った。今朝頭取が現れたようだ」
「何かあった?」
 また凶暴な行為を要求したのか。
「1時間ほど話して帰ったそうだ。妙な想像を与えないように聞いたことだけ伝える。合併は決まった。同時に私は銀行を去る。本当はお前といつまでも暮らしたかった」
 探偵は言葉を思い出すように抑揚なく言う。やはりカオルを愛していたのだ。
「新堂を近づけすぎた。まさか恋に落ちるとは。だが今になってみれば新堂は私と似ていたんだろう。気付くのが遅かった。それにどうしてあの男に新堂を殺すように指示したのか。それまで新堂もカオルも私の手足だった。あそこから何もかもが狂ってきた」
 確かに頭取の言うようにカオルと密会していたが頭取を裏切るつもりもなかったと思う。
「貸金庫のものは二人で分けなさい。その代りその中にある金以外のものは墓場まで持って行ってくれ。でなければ二人を殺すことになる」
「今夜カオルを救出する。段取りをしてください」
 今度カオルは関東のやくざに狙われる。







模索 3

 いつもの生存確認を入れる。
「大変なの。留守中に泥棒が入ったようなの」
「警察に?」
「何もに盗まれるようなものはない。でも心配なのでボンのところに泊めてもらっている。預かっているものはボンが店の金庫に入れてくれた」
「店は?」
「フミコが一緒に出ているから安心」
 頭取がまだ悪あがきをしているのだろうか。それならカオルが心配だ。今日は大阪の記者が東京に来ているので夜に新宿で会う。途中に探偵に電話を入れてカオルの安否を調べてもらうことにした。今日は黒縁眼鏡にスーツでサラリーマンの群れの中にいる。カメレオンのように安全だ。
 約束のスナックに入る。記者が奥のテーブルで手を上げる。ここはカオルとよく来ていた私のマンションの近くのスナックだそうだ。カオルに寄るように言われている。どこか懐かしい感じがする。
「久しぶりだね?寿司盛りにする?」
「特別に作ってくれていたそうですよ」
 記者がすでに色々と聞いていたようだ。
「昨晩に来ていて今朝は本社の担当記者と検察に出かけました。検察の上の方から圧力がかかっているようですよ。それで警察が捜索願に基づいて関東やくざのがさ入れをしたようです。それとタイに行ったという組員を引っ張ったようです」
 サングラスの男をやったのはやはり関東やくざと警察も掴んでいるようだ。
「マネージャーとも会いましたよ。それでこの写真を貰ってきました」
と頭取の鎌倉の別荘の写真を出した。マネージャーには今カオルが監禁されているホテルをすでに教えている。きっと会いに行ったのだろう。
「頭取の別荘ですね?」
「この写真を拡大すると2階の窓に『白薔薇』のママが映っているんですよ。これは明日の雑誌に乗せます」
「なら合併の話も添えてください」
 会長の話の中の要点をまとめてきた。とにかく頭取と総理を縛り付けておくべきだ。そこから次の糸口に繋げたい。

















模索 2

 『白薔薇』のママの捜索願を詳しく書いたあの記者の記事を読みながら、第1課長の車で赤坂のホテルに入ったのは10時を過ぎてからだ。
「お遅くなって悪いな」
 会長は今夜ここに泊まるようだ。ソファーにワイングラスが並んでいる。
「頭取と今まで話していた。彼は従兄弟の息子だ」
と言ってスーツ姿の細身の男性を紹介する。
「新銀行の合併の大筋は決まったよ。双方頭取は後進に道を譲る。両行で交渉中だが私は彼を頭取として推薦した。頭取は規模で決まるから今までの頭取の作戦があったからこそだ」
「よく引きましたね?」
「どうも総理が新しいポジションを用意したようだ。ただこれも実現するかどうかは分からない。実際に郵政民営化はまだ見えないところがたくさんある」
「新堂君は銀行には帰らないのか?」
 横でワインを手にしている常務が尋ねる。
「ええ、戻る気はありません」
「もったいないな。あのUSBを見たがよく出来ている。頭取は運動資金を稼ぎ出しながら、負債の調節もしていた。なかなか私にはできないよ」
「まあ、先ことは考えないことさ」
 会長は坊ちゃんの血筋でそこが鷹揚だ。頭取は戦国大名のように駆け抜けてきた。資金も稼ぎ出さなければならなかった。
「こうなって見て私は逆に頭取を心配している」
「どうしてですか?」
「凶器のようなものが目に宿っている」







模索 1

「ここの机でしばらくどうかな?」
 探偵の事務所にしばらく厄介になることにした。カオルがマネージャに連絡を入れて500万を借りることにした。しばらくは探偵事務所の近くのビジネスホテルに泊まることにする。
「頭取はあの日から別荘から出て赤坂のホテルに移っている。今日は9時から3時まで役員会だ。合併の件だ」
 新聞を開いて見出しを見せる。大型銀行合併の時代が始まるとある。すでに3つのグループが交渉を始めているようで政府が指導しているように見える。
「両行とも合併にはすでに合意しているが、どちらが頭取を採るかで揉めているようだ。助け出す準備はできているが?」
「実行は待ってほしい。頭取とはできるだけ円満に話で決めたい。やくざの方は大阪の若頭に相談している。頭取と会長では勢力はどうなんだ?」
「数では頭取派は多いが、腹の座った人物がいない」
と言いながら役員の派閥表を見せて説明する。これは私が作ったものに最近の修正を入れている。
「この◎の常務は?」
「その◎は君が点けていたので調べてみた。家系には遠いが長らく海外に出ていて、まだ50歳代後半だが切れる。頭取も何度か君に接待させて引き込もうとしていた。どうも会長は聞いたところでは相手銀行に若返りを要求しているようだ。役員会では頭取派は沈黙している。頭取逮捕が頭を過っているようだ。それに今は動ける腹心がいない」
 私のことだ。
「直接対決はしばらく待った方がいいと思う。今朝マネージャーから電話が入って、ママの使っていたパソコンもデターを盗まれたと言っていた。もちろんそんなところにはないと言っている」
「まだ足掻いているわけだな」
 私は鞄の中から鍵の型を取った薄紙に2桁のアルファベットと5つの数字を記載しているのを見せた。
「この鍵がどの銀行の支店の貸金庫の鍵か調べてほしい。夜には会長と赤坂のホテルで会う」
「そちらにも一人回わそう」







新しい道 13

 一目では女としか見えない化粧を施した。自分でも抱きたいような不思議な気分になる。
「さすがにちーママだな」
「元がいいからよ。玉取ったら?」
と言って運転席からスカートの中の竿を握る。危ない目をしている。
 6時にホテルに着くと案内板を確認して、エレベターで最上階に上る。連絡通りの部屋に入る。
「へえ、こんなに美人になるんだなあ」
と言いながら探偵が監視カメラの位置を紙に書いて説明する。夕食が運ばれたから朝まで誰も来ないと言う。
 薄くドアを開けてカメラの動きを見る。その隙を見て隣のドアを押す。
 待っていたのかカオルが起き上がる。私は思わずキッスして抱きしめる。久しぶりの感触だ。頭の上に薬の袋が置いてある。
「どうなんだ?」
「頭取の愛憎表現なの。もう彼のものは立たないわ。最近はアナルに花瓶を入れるのにも飽きて、生身の腕をすっぽり入れる。そして力任せにかき回す。爪のばい菌が入ったらしいの。ほらこんなにお腹が膨れているの?自分で塗るのは難しいから消毒して塗ってくれる?」
 突き出した尻の穴から薬を塗った腕をゆっくり入れてく。カオルのものが反り立っている。私は傷つけないようにゆっくり腕をよじる。もう片方の手で反り立ったものをゆっくりしごいていく。
「会長を動かしたよ」
「ええ、予定通り」
「総理も電話を入れた」
「頭取は彼に呼ばれて行ったわ。おそらく大きく狂い始めたと思うの。いいいいわ」
 ゆっくりと腕を抜き出すと同時に私の片方の手に暖かい精液が飛び散る。
「こんな治療なら何度でも受けたい。私は逃げ出さない」
「分かっている。段取りをして頭取と話をする。でもやくざの方は?」
「頭取とうまくいってないのよ。債権機構が入って処理を始めている。それに今は会長を柱とする役員会が銀行を指揮している。頭取は蚊帳の外だわ」
 私は2時間が立つ前に探偵から預かった携帯を置いて外に出る。







新しい道 12

 今日も生存確認の電話をサエに入れる。部屋には電話がないので食堂でする。それから若頭の携帯に電話を入れる。
「すいません。今東京にいるのですが?」
「頭取に会うのか?」
「はい。ママが監禁されているので。あの組は分かりますか?」
「どうもあの殺されたサングラスの男は分家の横浜の組だ。その組長が指揮を執っているということだ。仲間内の話じゃ伊藤と組んでかなり金を引っ張っていたが、今は焦げ付いて100億ほどを抱えている。頭取と組んでその金を踏み倒す予定だ」
「武闘派なのですか?」
「いや、私と同じ経済やくざだ。得にならないことはしない。彼とは話ができる。必要になったら力を貸す」
 電話が切れると、すぐに探偵の携帯に入れる。
「昨夜別荘からママが運び出された。朝一番病院に寄って新しい隠れ家に移った」
「どうして病院に?」
「医者にも会って聞いたが、大腸に傷が出来ていて腫れているということだ。移したのは失踪届が出たからだそうだ」
 マネージャーが予定通り出したようだ。
「どこに移されたか分かるか?」
「今そのホテルにいる。デルヘル専門のホテルだ。彼女は動けないからそれほど警備は厳しくない。逃がすのは難しいが会うことはできる。女装で来れるか段取りはしておく」
 さっそくその話をマネージャーにしたら、あのちーママが衣装を揃えてやってきた。彼女は私を全裸にして化粧を施して女装させて車に乗せる。どうも彼女が今東京の店を見ているようだ。














新しい道 11

 この赤坂のホテルは総理が私との打ち合わせでよく使っていた。それにUSBから総理の個人携帯の番号を見つけていた。この番号は私設秘書以外頭取のような一部しか知らない。会長との会談を終え会長の携帯から直接番号に連絡を入れた。声を聞えるようにした。
 しばらく呼び出しが続いて、それから長い沈黙があった。
「第2課長の新堂です。ご無沙汰しています」
「記憶を失ったと聞いているが?」
「まだ記憶を失ったままです。ですが『白薔薇』のママを助けに出てきました。私の資料は手元にあります。よろしく伝えてください」
 頷いたような声を残して切れた。
「総理の声だ。今度は私から頭取と面談を申し込む」
 と言うなり会長がメモに自分の携帯番号を書いた。私はその足で有楽町の雑居ビルに向かう。これもUSBの中に打ち合わせ記録として出てくる。どうも私が個人的に使っていた探偵のような気がする。
 ノックしてゆっくりドアを押す。手の感触が覚えている。
「へえ、新堂さん」 
と机の向こうから声がかかる。彼は私を応接室に入れると鍵をかけた。
「君が消えてから、伊藤が何度も現れた。俺に乗り換えろと言っていたが彼奴は信用ならんのでな」
「頭取は?」
「頭取は私の存在を知らない。まだ記憶がないままなんだな?」
「そうだ。力を貸してほしい。金も用意できる?」
「金は最後に300万貰っている」
 私はメモ帳に頭取の別荘の住所を書く。
「ここに『白薔薇』のママが監禁されている。助け出せなくていいから調べてくれ」








新しい道 10

 朝サエに生存確認の電話を入れる。それから出勤する第1弾のワゴンに相乗りし赤坂のホテルの前で降ろしてもらった。第1課長とは夜連絡が取れホテルの1室で会長と会うことなった。フロントの前に第1課長がサングラスをかけて待っている。黙ってエレベーターに乗り込み私が続く。廊下には頑丈な男が2人立っている。
「いや、東京にいよいよ出てきたんだね。先手を打った」
 会長が週刊誌を拡げて見せる。
「あの記者が君の原本のUSBを持っていると書いている。そのUSBのコピーがすでにさる人の手に回っているとも。私はさる人なわけだね?」
「『白薔薇』のママが頭取の手に落ちています」
 私は背広のポケットから鞭の傷跡だらけの背中の写真1枚だけ見せた。
「ママは鎌倉にいる。頭取はママを殺さない。彼は私が原本のUSBのコピーを持っているとこの記事で確信しただろう。それで昨日の役員会では合併について私の意見を求めてきたよ。私は合併についてはやむなしと答えた。もう粗方段取りが出来上がってしまっている。後手だ。ただ彼を新銀行の頭取にはできない」
「後ろに総理がついていますよ」
「やはりな。それで少し見えてきた。どうも検察の勢いが止まっていたからな」
「実はこのUSBより凄い証拠があるのです。ただこれを出さずに治めたいのです。それは私の力では無理です」
「私も銀行を揺るがしてまで頭取を追い込む気はない。まして総理を引き出すのは日本を揺るがす。つまり私が握っているということにしたいわけだ。君とママに手を出すなという無言の圧力をかけると言うことだね?」
「私も頭取に仕えてきたので」
「腹芸をしろということだな?」












新しい道 9

 マネージャーからの封書を持って新幹線に飛び乗った。封書の中には全身鞭の傷が生々しく鮮血を噴いている写真が3枚入っている。とくにカオルの亀頭にホッチキスが多数打ち込まれていて真っ赤に染まっている。出る前にサエに黒鞄を預けた。毎日連絡が入らなくなったら記者に渡すように伝えた。
 八重洲口に降りると待っていたようにワゴンが近づいてくる。
「車は見張られているのでホステス送迎用のワゴンで来ました。これから寮の方に入ってもらいます」
 マネージャーの顔がいつになく強張っている。
「頭取の別荘に軟禁されているのか?」
「だと思います。頭取は会長とママが組んでいると見ています」
「なぜ急に会長と組むことに?」
「頭取が関東のやくざを使って部屋と店を家探ししたのです。次はあなたが狙われるとママが動いたのです。それだけ頭取は追い詰められています。ママが前から言っていたのですが、頭取は精神的に異常になっているとのことです。もちろん殺すようなことはないと思います。ママかあなたが鍵を持っていると思っていますから」
「でも駆け引きをしないと」
「そうです。力を貸してください」
「これは二人の戦いだ」
 マネージャーは用心深く何度もバックミラーを覗きながら池袋のホテル街を入っていく。
「店にも別荘にもやくざが何人も張り付いています。これからどうしますか?」
「まず今夜にでも会長と話してみます」
 記者から第1課長から1部削除したUSBの提供を受けると連絡を貰っている。
「会長は頼りになるのですか?」
「銀行を守るところでは頭取とも同じ部分がありますが、新しい銀行から彼を排除したいと考えています」
「合併は避けれないのですか?」
「遅すぎます」
 この合併が実現すれば日本一のメガバンクになる。すでに何年もかけて総理と準備がされていたはずだ。その調査も私のUSBに入っている。














新しい道 8

 親分の息子の組長の物件を見た足で朝連絡のあった記者と会う。彼の『白薔薇』のママの連載は好評なようだ。彼とは持ちつ持たれつの関係だ。それにカオルを愛情を持って見つめてくれている。
「東京に行ってきたんだが」
「頭取の国会答弁を見ましたよ。ずいぶん疲れていたようですが?」
「どうも会長と揉めているようですよ。それに頭取とママの映像があると噂です」
「それはどこから出ているのでしょうか?」
「もちろん私の担当事件ですから調べましたよ。これはブラックジャーナル誌が流しています」
と言ってその記事を出してきて見せる。
「ここは元々会長が頭取時代に使っていた雑誌です。少し話を聞いてみたのですが、情報元は『白薔薇』のママらしい」
 やはり。カオルは危険な綱渡りをしている。
「その記者は頭取よりもっと凄い映像があると言っているんです。もちろんまだそれを手元にはしてませんが」
 私の持っている黒鞄に鍵がある。USBを見ているうちにそういう結論にたどり着いた。カオルは黙っているが私がその鍵を持っていると思っている。
「それより東京にいて『白薔薇』のママに一度も会えなかった。マネージャーも口を濁している。ホステスにも聞いてみたが、どうも店にもいないようだと。嫌な予感がする」
 頭取が軟禁したのか?
「実は私のUSBは検察に渡したものではなくもう一つあります。これが銀行の会長の手元にあります。会長とは私から話してみますが、一度取材をしてもらえませんか?」
「そんなことをしても?」
「ママが危ないのです」
 いつまでも隠れていてはカオルを守れないと東京に出かける用意をしている。






 







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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