空白 2017年02月

黒幕 3

「どう?彼女とやってみない?」
 カオルが全裸の小柄な少年を指して言う。まだ胸は少年のようだ。だが竿だけになっている。カオルに竿を握られてもう反り立っている。楽屋裏に同様な少年を10人ほど集めて毎日ショーの特訓をしている。私はカオルに秋葉原まで呼ばれたのだ。だが私は頭取にフィクサーの件を聞いてもらっている。
 そのまま1階にある喫茶店に降りる。
「聞いてくれた?」
「ええ、彼は今日は大阪に銀行の合併先を訪問しているわ。昨夜珍しく求めてきたんだけど、口の中で果てちゃった」
 小瓶のビールを2本注文して乾杯する。
「彼の言うには前頭取がR事件と係わりがあって、その当時の総理とそのフィクサーと組んでいて、R事件で追い落としに回ったのが当時は無役の議員だった総理だったらしいわ。その頃頭取も取締役になったばかりで」
「そこで組んだのだな?」
「反主流派のボスは当時の総理の番頭格だったようよ。派閥と資金を背負って準備していた。総理とも話したがこの辺りが引きどきかもと弱気だって」
「それほど追いつめられている?」
「頭取も今のポジションも政権が変われば終りだって言っていた。それと明日この人と会ってほしいと」
 頭取の手書きのメモだ。
「明日私が連れて行ってあげる。ここは私の会社の裏金融でもあるの。あなたも1度会ったことがあるわ」
「元伊藤のボスだな?」
 最後の総会屋と言われた男だ。この人もまだ生きていたのか。

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黒幕 2

 久しぶりに記者と小料理屋で飲む。やぶ医者もやはり定位置で飲んでいる。
「これがR事件の記録です。今のキャップがこの記事を担当していたので色々聞きましたよ。改めて最近の状況も調べてみました」
 分厚い資料を封筒に入れてカウンターに置く。
「R事件後フィクサーは姿を消したことになっています。だが現実には数十社の顧問契約をして軽井沢の今の塾を作ったようです。塾生は今までに200人には越えています。名簿も手に入れましたよ」
「さすがに新聞社ですね」
「この名簿を見ると今の反主流派のボスだけでなくかなりの政治家が与党だけでなく野党にいます。これは私の想像ですが、ITM事件と同様な動きがあります」
「また頭取が?」
「いえ、実質に頭取の代わりに副頭取が動かしていたようです。彼は会長派として無力な天下りの頭取に変わって銀行運営をしています」
「会長の息子は?」
「能力がありません。実はまだどこも正式に発表してませんが、近々に政変が起こります」
「総理が変わるということですか?」
「いえ、野党再編成です。実はその真ん中にそのフィクサーがいるのです」
「私設秘書はその片棒を担ごうしているわけですね?」
「気を付けてください。あなたが持っているものを私設秘書は話していると思います」
「まだ終わらないということですね」







黒幕 1

 探偵が送ってきたメールをサエのパソコンを開いて見る。
「届いたか?」
「ああ」
 写真付きのずいぶん前の記事だ。これはR事件として一総理が逮捕された事件だ。その時の仲介役とされたフィクサーだ。もう歴史から名が消えて久しい。
「生きているのか?」
「まだ生きている。歳は90歳は超えている。軽井沢で30代の女性と結婚している。その経営塾に昔総理もいたし私設秘書もいた。その繋がりで彼が私設秘書になったと」
「どこから調べてきた?」
「私設秘書経歴を調べていた。そうしたらこの昔の記事が出てきたのだ。ここには経営塾のメンバーのリストがあった。そこに二人が映っている」
 記事の写真は小さくて見えないが、もう一枚に拡大されたのが送られてきている。
「議員になった頃は頻繁に軽井沢に出かけていたようだ。かなり支援を受けていたようだ。総理になる前までの支払いが載っているが総理後はぱったり消えている。頭取にラインを変更したようだ。だが私設秘書は今でもその塾の講師として活動している」
「でもどうして黒幕と?」
「反主流派のドンはこの塾の最大の支援者だ」
「また厄介な。過去の亡霊との戦いか?」



ねじれ 8

 今日はサエと私がユイを負ぶってサエの店に行く。ユイはもう十分重たい。私にもなつき始めた。今日は奥を拡げたのに加えて2階の倉庫も借りることにしてリフォームを済ませた。ここは売り場になるようだ。今まではオーダーや修理を主にしていたが、ネットを中心として小物やパーツを2階に置くことにした。
 私はサエの初決算の準備で固定資産と在庫を調査する。2人の女の子が階段を上がったり下りたりしている。サエは『白薔薇』の衣装の仕上がったものをマネキンに着せている。
「カオルところの売り上げが増えてるなあ?」
「3店分だし、今回はニューハーフ喫茶の衣装が30着も注文されてるもん。あれこの人が総理だね?」
 予算委員会で野党の議員が私設秘書の記事を取り上げて質問している。
「5億のお金を受けとったそれは事実ですか?」
「そんなことは知らん」
 総理は私設秘書が証拠を出せないことを私から説明されて知っている。それに私設秘書が監禁されていることも知っている。だが追い詰められていることに変わりがない。
「その記事は誰が書いた?」
 そこで野党の議員は言葉が詰まる。どうも反主流派と組んでいる。総理と反主流派のドンとは連日赤坂で会議をしている。どちらが土俵を割るか。
「私設秘書の後ろに意外な黒幕がいる」
 探偵からの携帯だ。








ねじれ 7

 久しぶりに朝激しいセックスをしていると携帯が鳴った。サエのアナルに刺さったまま携帯の画面を覗く。
「ごめんね?刺さったままじゃないの?」
「よく分かるなあ」
「だって息が上がってるから」
「カオルね?」
 サエが小さな声で言う。
「入れながら話を聞くさ」
「私も立ってきたよ。ところで私設秘書はどうも監禁されたようよ」
「頭取が動いた?」
「彼は今回は動いてない。ただ総理の周辺に横浜の組を預かっている組長を紹介したようよ。もう!歳ね。ぜいぜい聞こえるよ」
 サエが必死で声を押さえている。
「サエ声出してもいいよ。私もオナニーをやっちゃってる。頭取は殺さないことを条件にしているから。ただ総理が追い込まれているから」
「一度私設秘書と会えるようにセットしてくれないか?」
「今東京に出てきたら駄目よ」
「どうして?」
「総理の行動が読めない。う~!」
「どうした?」
「顔にかかっちゃった」
「カオルはいつまでも元気だな」






ねじれ 6

 ブラックジャーナルの第2弾は他誌で発表された。やはり証拠が出せなかったのだ。その代り私がやはり匿名でほとんど同じタイミングで『蝙蝠は誰だ?』という見出しで書いた。伊藤は確かに『白薔薇』のママの部屋に盗撮機を仕掛けた。だがそれは早い時期にママに見つかり外されている。これにはわざわざカオルの証言を付けた。伊藤は最後まで総理と頭取の交渉にはタッチしていなかったのだ。
 それと探偵に撮って貰った後姿の元私設秘書と反主流派の秘書のホテル喫茶店での密会の写真の一番見にくいものを掲載した。これは見るものが見たらすぐに理解できるものだ。これは警告だ。
「あの記事は君だな?」
 やはり私設秘書が掛けてきた。
「小遣い稼ぎですか?」
「いや、私の手元に伊藤から聞きだしたメモがある」
「伊藤は知りませんよ。それに組長の弟のメモも存在しない。あれはあなたのでっち上げです」
「私も鞄のやり取りに立ち会っていた。君と同じ情報がある」
「それは違いますよ。総理は鞄の中身を見せなかった。それに後半はあなたは外されていた。すでに反主流派の議員から新聞社に確認が来ています。でもあなたは証拠が出せない」
「・・・」
「殺されますよ。もう私は死人を見たくないのです。総理は頭取に圧力をかけています。頭取には恐ろしい取り巻きがいてあうんで動くのですよ。あなたもご存じのはずですよ」





ねじれ 5

「ああ君か?」
 総理の疲れきった声がする。
「資料頂きました。少し確認したいことがあるのですが?」
「手短に頼む」
「鞄を渡した時その中身は私設秘書は確認していましたか?」
「それはない。私も別荘に運び込むまで中身は見ていない。それにすべて彼が立ち会っていない。後半は彼を外していた」
「あの横浜の組長の弟の話はがせです」
「やはり彼が絡んでいるのか?」
 携帯を切ると同時に記者の声が入ってくる。
「ブラックジャーナルから次の記事が入ってきたのです。これは厄介ですよ。伊藤が組長の弟に話した内容が記載されています。伊藤と当時の総務第2課長は組んでいて『白薔薇』のママのベットルームに盗撮機を入れていたというのです。そこに頭取や総理がママと絡んでいる姿が映っているというのです」
「証拠もなく載せると大変なことになる」
「社も同じ判断です。それで確信できるものが欲しいと交渉しています」
「そのブラックジャーナルの編集長は総理の元私設秘書です。もしこれを記事にするととてつもない政争が始まりますよ。それに事実はその作文ではないから証拠も出ません。実は彼は伊藤と組んでいて総理から解雇されているのです」
「どうすれば?」
「彼は表に顔を出す気はないでしょう。噂を煽り交渉に使っている。一度彼と反主流派の繋がりを調べてみれば」





ねじれ 4

 探偵の調査書と総理の第1秘書から封筒が届いた。朝一番カオルは東京に戻った。私は大阪のちいママと事務所でコーヒーを飲んでいる。
「忙しそうだな」
「東京の秋葉原に店を構えようとしてるんです」
「4軒目か?」
「今度は部屋借りでニューハーフ喫茶なのです。15歳~18歳の若い子をここで育成するようです」
「と言うことは資金繰りを言ってくるな」
と言いながら第1秘書の封筒からあける。これは頭取から私設秘書の時代の情報を送って貰ったのだ。
 彼は総理がまだ内閣に入らない前から秘書をしている。伊藤が在籍していた総会屋がどうも彼のルートだったようだ。やはりずいぶん前からのつき合いだったのだ。この頃は総会屋からの献金も多かったようだ。私設秘書がまだ頭取になる前の頭取に紹介している。
 次は探偵の封筒を開ける。ブラックジャーナル誌の役員に伊藤の名前が入っていたと報告している。総理は彼が伊藤との付き合いのあることを知っていて、彼が情報を流して総会屋や伊藤から金をせびっていたのを理由に解雇している。彼は罠に掛けられたと思ったのだろう。彼もあなたの貸金庫を狙っていると書いている。私への接触はそこにあったようだ。それと最近何度も反対派閥の秘書に会っているようだ。
 携帯が鳴った。記者からだ。
「武闘派に近い記者からの情報です。あの噂の元は組ではないというのです。あの弟はただの飲んだくれて女ばかりを部屋に連れ込んでいたようです。どうも武闘派には頭取との関係もあり厄介な存在だったようです」
 だから消されたのだ。絵を描いているのは私設秘書だ。



ねじれ 3

 記者から電話があって自社の週刊誌を見るように伝言があった。今日は久しぶりに姉さんの事務所に出ている。引き継ぎはほとんど終わった。後は定期的に決算の進行を見ることだけになった。
「今日カオルさんを指名したの。もうドキドキ!」
 カオルの指名を取るのにもう何度も足を運んでいる。
「熱中しないこと!」
と言うが馬の耳に念仏だ。親分の女癖を引き継いでいるようだ。
 『ITM事件再炎上!』と彼の記事の見出しが飛び跳ねている。総理と頭取が赤坂の料亭から出てきた写真だ。今回は直接二人で会ったのをリークされている。それと係り反主流派のボスと総理が会議を持っている。その記事も書かれている。
「この写真は?」
 記者に携帯を入れる。
「ソースは出せません。ただその筋から出てきたもので書かされた感がありますよ」
「赤坂で二人が会うことって今までなかったのです。この写真を撮った人はかなりの情報通です。今頭取と総理を脅している人がいます。その人が写真の主ですね?」
「脅している人?」
 記者は明らかに興味をひかれている。
「実は横浜の組長の弟のメモというのを使って大阪の武闘派が動いてるというのです。このメモは伊藤が監禁されていた時に総理と頭取の政治資金の記録だという噂です。バターしませんか?」
「・・・」
「今度は総理まで巻き込んでの事件になります」
「頭取と総理はそう言う関係があったのですね?」
「ええ、でも証言はしませんよ。しかしこの情報は少し怪しいのです」
「出元は東京のブラックジャーナルです。ただソースは明かしていません」
 やはり私設秘書だ。






 

ねじれ 2

 急遽カオルが大阪に出てくるので彼女の部屋で夕食を共にすることになった。サエは泊まってきてもいいよと送り出してくれた。その間もう一度自分のUSBを何度も見直してみた。それから記者から伊藤の年譜を送って貰って見比べている。これだけでは伊藤が総理と頭取の関係を知るのはあのビデオしかない。
「あのビデオは元々伊藤が私に内緒でつけた」
 いつに間にかカオルがビールを持って背中から顔を出している。
「それを見つけた時伊藤を呼びつけた。その時入っていた映像は頭取と私の絡みばかりだった。総理の映像は伊藤から取り上げてから位置を変えて私が付けたのよ。それは頭取が怖かったから」
「総理の映像はまったく伊藤は知らないのだな?」
「ええ、その頃は修司と出来てしまっていつ頭取にばれるかと怯えていた。それでその映像を修司に預けた。それが貸金庫に入っているのよ」
「だが横浜の組長の弟は伊藤から総理と頭取の関係を聞いているようだ」
「それで私も頭取から調べるように言われた。会長にも会ってみたんだけど誰も見たものがいないというのよ。それで逆に頭取が修司が渡したのではないかと疑っている」
「貸金庫は開けられてない。あの中にピーナッツの記録も入っている」
「それは私も言った。どう見ても修司か私設秘書しか考えられないのよ」
「どうして私設秘書が出てくる?」
「だって修司が書きとめた記録なら同じ立場の彼も付けていたのではと」
「渡した側の記録と貰った側の記録だな」
「これは総理の話だけど、私設秘書は伊藤と関係があったから切ったのだというのよ」
 私は閃くように探偵に携帯を入れて調査を頼んだ。これは落とし穴だ。





ねじれ 1

「どうした?」
 私設秘書いや今は元のブラックジャーナルの編集長だ。急にカオルから携帯があって外の居酒屋で会う。
「横浜の組長の弟が殺されたのは知ってるな?」
「大阪の若頭を殺した武闘派だというが?」
「その通りだ。今この組が力を伸ばしている。そうするとITMで抱えた負債が重たい。今総理は禅譲に失敗して院政が出来ないところに来てしまった。これは欲を掻きすぎたのだ。さすがに私もこの整理は請け負えない」
「会長が派閥の候補と組んでITM事件の再燃だよ。地検は今回は政治資金に絞っている」
「だが決定的な証拠は出ない」
 会長に渡したメモはほんの1部だ。本物は私の手にもない。まだ貸金庫に眠っている。
「武闘派には情報がないだろう?」
「それが武闘派の幹部が頭取と会長に二股をかけた。彼の手元に弟が伊藤を拷問にかけた時のテープがあった」
「中身は?」
「分からない。その一部が会長にも流れた。頭取は対応しなかったのでそちらと交渉になったようだ」
「だが伊藤は総理と頭取との深い関係は知らなかったはずだ」
「そこが分からない」
 頭取はこの辺りで引こうとしている。だが今度は総理が引きに引けなくなって頭取を引っ張っているようだ。と言うことは私のITM事件も終わらないということだ。
「双方から攻められる恐れが出てきた。資金はこちらからも出すから連携しよう」
 しばらくカオルから情報を取るしかない。







初恋 11

 サエとユイを連れて黒髪の女アヤ、つまりユイの母親の墓参りに行く。ユイを引き取ってから初めてだ。サエが是非とも行きたいと昼から出かけた。サエはどこかの時点でユイに母の話をすべきだと考えている。竿を切らないと決めたのでなお一層思い込んでいる。こういう夫婦もあっていいのだろうと私は考えている。
 最近はカオルから携帯を持たされている。4時過ぎに寿司屋に入る。ユイはわさび抜きの卵焼きが好物だ。もうはい回ることもできるようになった。サエは私似だというが不思議だが顔がサエに似てきているように思う。
「今いいか?」
 探偵の声だ。
「テレビがつけられるか?6チャンネルだ」
 横で聞いていたサエがチャンネルを変えてもらう。
「昨夜死体で発見された。いや発見したのは俺だが。今まで足止めをされてた」
 テレビにはビジネスホテルの建物が映っていて、横浜の組長の弟の顔写真が映し出された。
「ピストルを銜えた自殺ということになっているが」
 確かにアナウンサーが自殺だと説明している。
「だが警視庁の刑事は他殺と見ている。でも荒立てる気はない。おそらく若頭のヒットマンだと見ているな」
「と言うことは仲間に殺された?」
「武闘派は今は頭取の援助で不良債権を整理してもらっているのさ。頭取は合併ばかりではなく不良債権の整理にも力を持っている。やはり金融の黒幕になったさ」
「無言の圧力か」




初恋 10

 翌日に探偵に福岡に走ってもらった。週刊誌も翌々日に出た。私はカオルに電話を入れた。           
「頭取はいる?」
「今部屋でビールを飲んでいるわ。替わるわね」
 どうやらカオルは東京に戻っているようだ。
「横浜の組長の弟から脅しの電話なかったですか?」
「いや」
「週刊誌を見なかったですか?」
「あんなものは読まん」
 どうもあの記事は脅しにならなかったようだ。なら敢えて知らせる必要もない。あの記事を見て動くのは?総理の線まで彼は知らない。脅しは空振りか。
 夕方探偵から電話が入った。
「フリーのライターに会ったが、ホテルの喫茶店で会ったとしか。それで今人相書きを持って周辺を聞き込みしている。警察も動いているようだ」
「どうして?」
「若頭の犯人と見ているのだろう。頭取への恐喝だとは思っていない。警察が絡むとまたITM事件は再炎上だな」
「それも困るな」
「今応援してもらっている探偵仲間からやくざらしい男達がいるホテルの部屋があると情報が入った。取り敢えず現場を確かめてみる。それからどうするか考えておいてくれ」
 頭取が金を出すとは思えない。情報があったら消す方に動くだろう。どうすべきか。






初恋 9

「調べてみましたよ」
 喫茶店に入るともう記者は来ていてメモ書きを整理している。
「この雑誌は大衆誌の部類に入り、興味半分の記事が多く警察も敢えて見ていません。いわゆるガセネタの宝庫です。でもあなたが事実というならそうでしょう。ITM事件は真相は闇の中で幕が引かれると思っています」
「この発行元は?」
「東京ですが、この記事はフリーが持ち込んだもので、福岡から送られてきたものです」
「そう言うことはすぐにわかるのですか?」
「この手の雑誌はフリーをたくさん抱えていて紙面が空くと埋め込みます」
「と言うことはそのフリーを捕まえるのも?」
「訳はないでしょう。でもその横浜の組の弟を捕まえるのはそう簡単じゃないですが」
「今警察では?」
「大阪の武闘派と一緒に逃げていると見ています。でもどうしてこんな危険な賭けをするのですか?」
「黒幕と交渉をしようとしているのです」
「金を引き出して逃亡ですか?」
「ですがそれまでに殺されてしまいます。それでお願いですが、この記事の俺が若頭射殺の犯人で横浜の組長の弟であると記事にしてもらえませんか?」
「それはいいですが」
「これ以上死人を見たくないのです」




初恋 8

「泊まっていく?」 「いや、もう帰るよ。使えなくなったかも?」  カオルの引き止めるのを振り切って新幹線に飛び乗る。カオルのセックスはマラソンのようだ。おそらく殴り合いをしたら完全ににノックダウンされる。  席に座ってホームで買った週刊誌を拡げる。ITM事件の証言!と言う見出しで3面記事のような扱いで載っている。 「・・・俺は政治向きのことは分からない。兄貴に頼まれて伊藤を横浜の倉庫に監禁した。彼とは何度か飲んだことがあり安心して車に乗せた。それから睡眠薬を入れたビールを飲ませる。そこから伊藤はITM事件から消えた」  そこまで読んで筆者は横浜の組長の弟と察した。彼は今どこかに逃げてこれを書いている。だが目的は? 「伊藤を捕まえろと言ったのは兄貴だ。今まで伊藤が雇い主だった。それで兄貴に問い返した。一言鞍替えだと言ったきりだ。その頃から組の資金パイプが広がった。指示を持ってくるのは吃驚するほどの美人だ」  カオルのことだ。 「伊藤をどうするか判断は決まらなかった。テープと盗聴器のことを繰り返し拷問しながら体に聞いた。初めは伊藤が隠していると思っていたが、どうも本人も知らないようだった。その指示を持ってきたのはその美人ではなく、眼鏡をかけた銀行員の様な優男だった」  これは私が殺されそうになって後のことだ。その銀行員というのは係長で私の後釜に座った。 「私の仕事はその男の持ってきた手紙の内容通りに彼を殺すことだった。さも伊藤に殺されたように」  この男が係長を殺したのか。今まで伊藤だと思っていた。指示したのは当然頭取ということになる。私を逃がしたカオルをこの時は使わなくなっている。 「この男が死ぬ間際まで彼の知っているITM事件の真相を語った。殺されそうになって逃げた前任の課長がテープと盗聴器を持っていると言っていた。それと内閣の上層部に金を運んでいたのもその課長だと言っていた。そのテープを取った後彼を殺した」  ここまで生々しい事実を書いているが、当事者しか分からない。どうもこの話はまだ続くようだ。私はカオルから渡された携帯で記者を呼び出して粗方の話をして新大阪で会う約束をした。  

初恋 7

 親分に金融業の撤退の話をした。息子の組長のビルの地上げも終わったので、頭取の紹介で大手ゼネコンに転売した。これで信組の貸付は消えた。後は小口を中心としたものでそれほどリスクはない。その金で息子の組長は若頭が持っていたミナミのソープを手に入れた。これはやっさんが間に入ってまとめたようだ。親分も回収した資金で北新地でレジャービルを買った。姉さんには貸しビル業の方が似合いそうだ。
 私は週の内半分を『白薔薇』の大阪店の事務所に詰めている。ここでサエの経理も兼ねて作業をしている。とくに今はすすきの店の準備でカオルは飛び回っている。事務所には男女の事務員が席を並べていて、ちょっと異様な風景だ。カオルは彼女達の次の仕事も考えているようだ。取り敢えずサエの店に手の器用な子が見習いで来ている。
 私も今日は朝からすすきのでカオルと合流だ。カオルは昨日まで新しい子のショーの特訓をしている。それにしても吃驚するほど、ニューハーフが多く美人揃いだ。だが彼女曰くサエのような天然の美人はいないそうだ。ほとんどが整形美人だから同じような顔をしている。
 12時を過ぎてカオルが最後のショーの練習を終えて自分の部屋に上がってくる。私はゆっくり風呂に入って小瓶を3本並べている。カオルはシャワーを浴びて全裸で私の前に立つ。
「サエ竿を切るって言ったらしいね?」
「そんな話もしているのか?」
「私とサエは修司より記憶の繋がったダチだよ。二人なら大胆なプレーができるわ。相当溜まっている。飲み干してくれる?」
と言いながらそそりたったものを口の中の押しこむ。そして私の胸にお尻をついて両足を肩に掛ける。これは惚れあってた頃よくしたプレイだ。ゆっくりと右手を指からアナルにねじ込んでいく。すっかり腕まで入っていて押し上げるとお腹が膨れる。ここから拝むように左手を滑らせて行く。
「これは修司としかできないよ」



初恋 6

 姉さんがカオルに熱を上げた。別れ際に写真を撮らせえて貰って引き延ばして壁に貼り付けてため息ばかりついている。それで今度大阪店にカオルが来た時に連れて行くことになった。指名をして抱きかねない勢いだ。
 今夜はユイをフミコに預けて、記憶が戻って始めて阿倍野の白壁のホテルでサエとデートだ。どうもまだ一つになれていないそんな気がするのだ。サエが母親になったというのもあるがどこかに壁があるような気がする。
「泊りはだめ」
 と釘を刺されている。
 ビールを口に含んでサエに飲ませる。これはサエのお気に入りだが、恥ずかしがって全裸になっても丸虫のようになっている。私は思い切り嫌がらせのように自分の反りかえったものを喉の中まで押し込む。目が真っ赤になって涙があふれている。私も涙が出そうになって意地になって押し込む。じっとこらえているので更に自分が激しくなっているのに気付く。
「う!」
 サエの口からゲロがあふれてくる。私は咄嗟にそのゲロを飲み込んでいる。
「だめ!」
「サエのものはなんでも食べる」
「汚いよ」
「温かい」
 今度はやみくもにサエが吸い付いてくる。
「サエそれでいいんだ。二人はもう離れられない。竿は切るな!」
「だって」
「ユイにしっかり話すんだ。サエに竿がないなんで耐えれない」
 サエは頷いたら思い切り私のアナルに入れてくる。やたらと腰を振って泣きわめいている。
「サエを体が覚えている」
「ほんとに!」






初恋 5

 頭取が合併人事で引退が決まりそのまま合併の委員長に横滑りした。同時に総理は意中の大臣に禅譲をしようとしたが、ITM事件の関与を取りざたされて与党内がまとまらない。どうも会長の押す頭取候補が決まらず総理が横滑りで大蔵省のOBを持ってきたようだ。それでまた私のピーナッツメモが浮上してきた。
「あのメモを誰かに渡した?」
 頭取からカオルを通じて連絡が入った。カオルが初めて事務所に現れた。姉さんは真っ赤になってお茶を運んでくる。電話が入ると変な奴と言っていた相手なのに。
「いえ」
「そうか。やはり会長だな。あの男はどうも欲深くていかん」
 携帯をカオルに渡すと、
「みんなお互いに欲深いのよ」
 と笑っている。
「君の用事は?」
「私も欲深いの。修司にこの話を持って来て見返りにススキのITMの不良債権のソープを譲ってもらうの」
「お金は?」
「もちろん頭取に任期最期の融資を頼んだわ」
「4軒目か?」
「全国にニューハーフの店だすよ。修司に役員に入ってほしいそのお願いに来たわけ」
「なんだかそんな気がしていたよ」
 そう言えば頭取に隠れて池袋時代は毎日そんな話をしていたようだ。株式会社ニューハーフを作りたいというのがカオルの夢だった。
「最近サエを見て私の見えなかった道も見せてもらった」
「サエのところには?」
「先程新着を5着頼んできた。宅配で16着の修繕もくる。セックスしている暇ないよね!」




初恋 4

 サエの店の奥の倉庫も借りることとして、作業場を後ろに持って行く。それで昨夜は仕事が終わってから夜の12時まで荷物の整理をしていた。その合間にパソコンを開いて月次売り上げを見ていたが、もう始めた頃の3倍になっている。もちろんカオルの店からの仕事が半分を占めるが、店頭での販売も増えている。
 久しぶりに朝サエを抱いて記憶は戻らないがサエを実感している。
 昼から若頭の不動産を当時の1.5倍で引き取る。どうもやっさん曰くこれが姉さんの遺産相続となり、組からは完全に足を洗うようだ。代貸がそのまま組を引き継ぐらしいが、本部での位置はナンバー2から10位外に落ちるということだ。経済やくざで名を成したが、その頭脳がなくなれば組を維持するのは難しいだろう。若頭の彼女もスナックを閉めたという。
「どうや、落ち着いたかい?」
 やぶ医者がビールを注いでくれる。
「そろそろ一緒にならないのですか?」
「今度娘さんが結婚したら一緒に暮らそうと言っている」
「おめでとうございます」
「ところでサエから話があった?」
「いえ」
「陰茎切除の件だ」
「そんなこと考えてるのですか?私はサエのものが好きです。大反対ですどうしてですか?」
「医者としても進めない。どうもユイちゃんのことで悩んでいるのだろうね。体も娘に相応しい女を求めているのだよ。君が賛成しないとダメだと言ってある」
「助かります」
「じっくり話し合うんだ」





初恋 3

 ボンと2家族で天王寺動物園の散り始めている花見に出かける。今朝は女性陣で早くからお弁当作りで、私とボンはただ荷物を持つばかりだ。開園と同時に桜の木の下を陣取る。ボンの子供は男の子で私の子供は女の子なのでもう勝手な結婚話になっている。ボンはサエが男であることを知っているが、フミコには知らせていない。妙な気遣いを気にしてボンが伏せている。
「銀行には戻らないのか?」
「ああ、ずっとイサムで生きていく」
「ならこの町にずっといるわけだな」
「金融屋を続けるかどうかは迷っているがな。姉さんでは難しいので金融は一度整理の話をしてみようと思っている。今回の若頭の貸付の回収で一先ず落着く」
 サエがビールを配っている。
「そちらはどうなんだ?」
「親父は寝込んでいて息子のことも分からないでいる。母親はあの事件で懲りることなく、あの板前と駆け落ち同然でアパート暮らしだ。それでフミコを籍に入れた」
「まあよかったな」
「従業員も何とか落ち着いたのでそれぞれの彼女に今の店を分けて整理を考えている。二人なら本店だけで食べていける」
 親父には3人の彼女がいるのだ。
「ITM事件は終わったのか?」
「どうだか」
 何人も人が死んだのに事件は曖昧なままだ。これが政治の世界なのか。
「そうだ。やぶ医者が一度飲もうと言ってたぞ」
「相変わらずあの店に通っているのか?」
「そうだ。いつもちょこんと座っている」







初恋 2

 サエに地図を書いてもらってボンの店に立つ。板長も替わって落ち着いたような雰囲気だ。詳しい話はサエに聞いている。
「まだ母とは時間がかかる」
「まあ、時間をかけたらいい」
 大瓶を抜いてもらって鱧皮を頼む。
 手を上げて金融屋のやっさんが入ってくる。
「厄介やな。若頭が死んで組の纏まりがなくなった。今回の地上げ地の買い上げは姉さんに承諾して貰ったが、誰が組を継ぐかでもめている。そちらの言うように早く土地を引き上げるのがベストや」
 この措置は親分にすでに説明している。記憶が戻るのではなく知識を埋め込んでいくという作業だ。
「犯人は特定された?」
「新聞記者によると警察は同じ組の武闘派をマークしているということや。これは彼の書いた週刊誌の記事や」
 手に持っていた週刊誌を拡げる。
「武闘派の5人グループが当日アリバイがなく、今も誰も見つかっていない。その中に横浜の組長の弟がいるというのが彼の推理だ。警察も同じ推理で動いているらしい」
「ITM事件の延長上だと書いてるな。『白薔薇』のママのシリーズは?」
「ああ、あれな、事件ものから自伝ものになって第2弾を書いるわ」
 カオルは16歳の時に家出少年として上野に出てきた。この週刊誌にはその頃の東田透の写真が載っている。どうもカオルが取材を受けたようだ。丸坊主からは今のカオルが想像できない。この頃の話は私も聞いたことがない。その頃は町工場で働いていたようだ。それから職業を転々として17歳で伊藤と会っている。




初恋 1

 マンションに戻って同じ布団に潜る。二人とも体が固まったようだ。そっと形のいい胸を吸う。反り立ったものを見て同じ男とは思えない。どうも初恋の時のときめきだ。カオルの時は惚れたと言うより彼女のテクニックに誘われた感じだった。そのうちの彼女の沼から出れなくなったのだ。だがサエは心がときめくのだ。
「晩は迎えに行こうか?」
「いいよ。仕事が溜まっているから。それより気を付けてね」
 ボン達が下りてきていてモーニングを取って先に私が出る。わざわざ事務所の地図を書いてもらっている。
「どう?私の顔も忘れた?」
 大柄の女性が顔を寄せてくる。これが姉さんだと呟く。
「最後に貸した任意売約の土地を整理しないと。これは調べてみたのだが、若頭の姉さんの承諾を貰わないとダメだが、息子の組長で買い上げをして貰ってそれから買い先を調べてみるしかない」
「任せるわ」
 まずやっさんに電話を入れて姉さんと組の根回しをしてもらう。それから頭取に電話を入れた。
「ようやく総理が動き出した。助けてもらった」
「ちょっと力を貸してもらえませんか?」
「いいぞ」
「大阪の阿倍野のITMの任意の物件なのですか?」
「ああ、あれはS社が引き取る予定だ。あそこの社長に声をかけておこう。ところでサエとやったか?」
「カオルから聞きました?」
「焼き餅焼いていたさ。初恋のように抱き合っていたと」
 そう言えばあの夜カオルは部屋に帰ってこなかった。
 事務所を早めに出るとサエの店を覗いた。小柄な女の子がドアを開いた私を見て驚いている。
「お帰り私のイサム」
 サエが飛び込んできた。





記憶 11

 打ち合わせを済まして2人は帰る。カオルはステージに顔を出すと言って降りた。部屋のFAXに次々と貸付の書類が送られてくる。それを見ながら緊急度合いと対策を記入していく。マネージャーが少し遅い夕食を運んできた後ろに子供を抱いたカオルより小ぶりの女性がおどおどと入ってくる。
「サエとユイだな?」
「分かるの?」
「今この頭に教え込んでいる」
 ユイはすやすや寝込んでいる。小さな籠が運び込まれてきてそこに寝かせる。
「カオルが良ければ私は引くよ」
「私はイサムだ。サエに拾われたイサムだ」
 ゆっくりとサエを抱きかかえる。それからベットに押し倒すと、サエは目を閉じて震えている。
「店はどうだ?」
「新しい子と2人でやっている。カオル姉さんが仕事を回してくれるので大繁盛。指はどう?」
「腫れはもうなくなった。舐めてもいいのか?」
「うん」
 でも恥ずかしそうだ。口に含むと反り返ってくる。次はサエが含む。彼女に口の中で弾けそうだ。
「いつまでも一緒にいてくれるな?」
「捨てないで!」
「サエのこと一杯教えてほしい。でもこの感触は覚えている」
 サエのアナルの中はカオルより狭いがくねっていて吸い付いてくる。
「イサムだ!」
 サエの目から洪水のように涙があふれてくる。








記憶 9

「カオル、総理とも寝ていたんだな?」
「そんなこと話していた?頭取が私を抱かせたの。まるで貢物のようでしょう?」
 帰ってきた私を東京駅で迎えて一緒に大阪に向かう。探偵はここでお別れだ。
「昨夜番頭が殺されていたそうよ」
「どこで?」
「横浜の港に浮いていた。大阪の組に確認したら内々で横浜の組に引き渡したそうよ。これ以上頭取に睨まれたくないと考えたのかしら。頭取から今回金が出ていたようなの。火消しね」
「よく大阪に行くのを拒まれなかったな?」
「もう、親父みたいになってるわ。それと横浜の元組長の弟が逃げていると言ってたわ。まだ用心しないとね」
「彼も殺される?」
「それがねえ、どうも大阪の武力派の組に匿われたようよ。大阪もITM事件の後若頭独り勝ちに武闘派が不穏な空気を醸し出してるという噂。修司は若頭とは親しかったのね?」
「金融絡みでずいぶん貸している」
「これからどうするの?」
「金融屋に戻りサエとの生活を取り戻す。もう修司には戻れないからな。これからはサエに付けてもらったイサムで暮らすよ」
「カオルも忘れないでよ!」
「いつまで3人でやれるだろうかな」
 サエの写真を定期入れから出して眺める。ここ1日に何回もサエの写真を取り出してみている。何となくほんわりとサエも顔が浮かんでくるようになっている。
「貸金庫はどうするの?」
「しばらく封印だな」





記憶 8

「サエと会ってからに?」
「いやすぐに戻ってくる。動物園に3人で行こうと言っていたと伝えて」
「記憶が戻ったの?」
「いや、サエの約束をメモしていたんだ」
 探偵と翌朝一番に新幹線祈り、昼には私設秘書の用意した赤坂のホテルに入った。廊下に5人ほどのボディガードが並んでいる。鞄の中身と服装検査を受けて部屋の中に入る。入口で私設秘書が苦笑いをしながら招いてくれる。
「久しぶりだ。記憶が戻ったらしいね?」
「ええ。鮮明に。でも手前の記憶をまた失ってしまいました」
「そうか。記憶は鮮明か」
 鞄の中から2日かけて再現したピーナッツの記録とスケジュールを重ねて作った。それを私設秘書が受け取って総理のスケジュール表と合わせている。無言の1時間が過ぎて、
「一致しますね」
「そうか」
「いい加減腹をくくってください。これ以上足掻くと総理経験者として君臨できませんよ」
 私設秘書が強い口調で言う。
「分かった。分かったと頭取に伝えてくれ」
「分かりました」
と手帳をテーブルに戻す。
「白髪が増えましたね?」
「ああ、カオルにもよろしく伝えてくれ。いい思い出だ」
 カオルは総理にも抱かれていた!?





記憶 7

「この記事を見て見ろ」
 迎えに来た探偵が週刊誌を拡げる。ITMファイナンス事件のNは総理だと書かれている。
「どうしてこんなのが出る?」
「私設秘書と折り合いがつかなかったのだろう。総理もケチだからな」
 車を降りるとホテルの荷物用のエレベターに乗る。カオルから頭取との面会を頼まれている。部屋の前にはボディガードが2人ついている。私だけが部屋に通される。
「久しぶりだ。手荒い拷問で記憶が戻ったらしいな」 
 前と比べると血色がよくなっている。
「Nの件が出ていますが?」
「あれは儂だよ。私設秘書を抱きこんだ。総理はあれでケチだからなあ。たっぷり後任人事の資金を手に入れたのに、銀行局のポジションを渋っているのさ。人間なんてどこかせこいものだ。カオルでは儂も狂った」
「いえ、私が悪かったのです。男に恋をするとは思っても見なかったのです」
「カオルも同じことを言っていたわ。儂も伊藤の誘いにまんまと引っかかった。まさか男に狂うとはな。分からんものだ。今の気持ちは娘を嫁がせる父親の気持ちだ」
「でも私はカオルとは一緒になれません」
「それも聞いている。写真を見たが今の彼女は若い時のカオルにそっくりだ。いい相棒になってやってくれ。それと今日は最後の力になってほしい。総理に最期の一芝居を打ってほしいんだ。彼は気が弱いから武力で訴えることはない」
「ピーナッツを渡した記録ですね?」
「ああ」
「貸金庫を今触ることはできません。方法は私に任せてくれませんか?」
「もちろんだ。儂が君を騙せばカオルに殺される」






記憶 6

 一日中カオルの部屋で自分の作ったUSBを隈なく見ている。イサムであった時見ていたのとまた見えるものが違う。頭取とは頭で考えてていたのと違ってよく二人で飲んでいたようだ。USBでは第2総務課長からのファイルしかないが、入行した時の本店営業本部長で仕えたのが始まりだった。
「今に金融界も自由化の波が押し寄せる」
 それが口癖だった。
 その頃から金融ブローカー上がりの伊藤が頭取に色々な案件を持ち込んでいた。どちらか言うと表の私と裏の伊藤であったようだ。私が裏の伊藤の仕事を引き継ぐようになって逆に頭取とは疎遠になったようだ。
「あのなあ。俺たちは立場が似ている。あまりにも知りすぎている」
とこの頃唯一気の置けない飲み友達が総理の私設秘書だった。この言葉は彼は酔うといつも口にした。今はよく理解できる。彼も私設秘書を外され。私は殺されるところまで行った。でも今でも不思議なのはカオルに恋した自分だ。伊藤から当然男だと知らされていたし、頭取との行為も密かに知らされていた。
「何考えているの?」
 いつの間のか衣装を脱いだカオルがシャワーを浴びて全裸で立っている。最近は11時のショーが終わるとちいママに任せて上がる。私はメモ用紙にペンを走らせる。
「どうして二人の関係が始まったのか?」
「やっぱり」
 カオルは冷蔵庫から冷えた小瓶を出してきてテーブルに置いて自分も飲み始める。
「あの頃はね。私も頭取からも警戒されていた。伊藤のスパイと思われていた。私の立場も伊藤と頭取の真ん中で危うかったの。それで修司を味方に付けようと。馬鹿ね。ミイラ取りがミイラになったんだもの。私ってどちらかと言うと食べるために女になったタイプだと思っていた。ほら修司に触れるとこんなになる」
 見事に大きなカオルのものが反りかえっている。
「では頭取は?」
「伊藤が池袋のマンションを盗撮して係長から報告させた」
「なぜ?」
「伊藤は頭取を脅す必要があったのよ」







記憶 5

「ここは?」
 カオルと二人きりになった時にメモで書いた。
「私の大阪支店。今は博多にも出したわ。憶えてないのよね。指は複雑骨折してるけど治るようよ」
 戻ってきたら医者と看護婦が呼ばれていて治療をしてくれた。あの2人の内の番頭と言う男だけとらえられたようだ。助けてくれた組に監禁しているようで、探偵が確認に出かけたようだ。
 私は風呂に付けてもらってカオルに洗ってもらっている。
「サエ親子もしばらくホテルに移ってもらっている」
「サエと子供?」
「修司。いえイサムの家族よ。サエと3人でよくしたのよ」
と言うなり私のものを銜える。即座に反応する。喉の奥まで銜え込んで出し入れする。こうしたカオルとの記憶は鮮明に残っている。
「凄い!こんなに溜まっていたのは初めて」
 息が詰まったのか唇から精液が毀れ出てくるのをぐいと飲み込む。ベットに連れて行くと化粧棚から封筒を出してくる。
「これは修司が書いて私に預けたもの」
 確かに私の直筆だ。
 サエに救われたこと。どんなに彼女を愛しているか。もし記憶が戻ったらこれを見せてくれとある。もしサエを捨てるようなことをしたらカオルの手で殺してくれとある。
「私を殺人者にしないでよ。一度サエを連れて来るから3人でしましょう。サエにも記憶を失ったこと話してあるから。体がきっと憶えているよ。私の時もそうだったでしょう?」






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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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