空白 2017年04月

空白3

「この小料理屋は5年ぶりだなあ」
 記者が編集長になった時ここでお祝いをした。
「貫禄がついたよ」
「いや腹が出ただけだ。それより『白薔薇』のママ調べてみたよ」
 女将と一緒にやぶ医者も今はカウンターに入って魚を焼いている。だからサエはホルモン注射は自分で打ってる。サエとはもう2年交渉がない。今ややぶ医者もサエを女と思っている。
「彼女はしばらく香港にいたそうだ。『白薔薇』の7号店を香港に出している。ここはまでも開いていてその当時の写真が雑誌に出ている」
 これはサエが作ったドレスだ。
「3年後『白薔薇』の8号店をラスベガスで出した。これはアメリカの新聞の記事だ」
 編集長にとってもはやカオルは恋人だ。
「会社を調べてみたが彼女は今も社長だよ。君の名前も役員に残っている」
 役員に入った記憶もない。入っているなら頭取か総理だろうが、二人とも相次いで亡くなっている。もう赤坂のことを知っている人間もいない。写真を見てカオルの横に立っている老人を見た。
「どうした?」
「いや」
 あのマネージャーがずっと一緒だったのだ。
「もう日本のことは忘れただろうか?」
 カオルにとって日本で起こったことは空白なのかもしれない。




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空白2

 カオルだ。私は乗り出してテレビを覗き込む。やはり17年ぶりだ。私が大阪に戻ってからカオルは表舞台から姿を消した。
「日本にいなかったのねえ?」
 ラスベガスの有名なカジノを日本人が買い取った。
「カオルに間違いないな?」
「ええ」
 サエも確信している。
 赤坂は私の記憶では1000憶はカオルの手元に入ったはずだ。私は10年後に貸金庫を開いた。証拠書類はすべて処分した。架空口座にあった5憶はまだ手をつけてない。
 カオルは謎の日本人と伝えられている。43歳になる。だが30歳代に見える。
「アメリカにいたんだ」
「『白薔薇』はまだ私のところに仕事をくれている」
「ちいママが運営してるのだ」
「私も顔を薄っすら覚えてるよ」
 ユイが言う。
「会いたいな」
 サエが懐かしそうに言う。
「そうだな」
 いつの間にかスマホで懐かしい記者を呼び出す。彼は今週刊誌の編集長になっている。
「今のテレビ見たか?」
「ああ懐かしい!久しぶりのリバイバル記事を書こうと思っている」
「一度飲まないか?」





空白1

 あれから17年が矢のように過ぎた。私も50歳を迎える。サエの店も阿倍野ののっぽビルに入った。本社は相変わらずそのままのところに置いている。サエも私の妻となって籍に入り、娘のユイもサエのことを聞いて少し反抗期があったが、今日も仲良く買い物に出かけている。私は年齢相応に年老いた良きサラリーマンの顔になっている。
 サエは一向に年齢を感じさせず、いまだ周辺の誰も男とは思わない。久しぶりにボンの店でビールを飲んでいる。ボンは髭を蓄えて私より年上に見える貫禄だ。5人の子供を作ってさらに6人目が出来るという。
「最近はサエとはやらないのか?」
 小さな声で言う。
「ユイに見られてからはサエに拒まれている」
 ボンとは正直な話ができる。ボンの妻のフミコは未だにサエが男だと知らない。私に会うとなぜ二人目を作らないと言い続ける。ボンはやりすぎて玉がなくなったと冗談を言う。確かにやりすぎたのだと思う。
「ほらここにいた!」
 いつの間にかユイが腕を組んでいる。サエが後ろで控えめに笑っている。
 ボンが黙ってビールとサイダーを抜く。
「ユイちゃん彼氏出来た?」
 フミコが奥から声をかける。
「私も男に生まれたかった」
 これがユイのいつもの帰し文句になっている。サエが困った顔で笑う。今でも時々ユイがサエの布団に潜りこむ。私はそれを見ていて妬ける。
「あれ!」
 サエの声でテレビの画面を見る。




足掻き13

 衆院選が始まった。私はカオルと銀行の応接室にいる。副頭取が直々に銀行員の指示をしている。フィクサーも甲府から出てきている。元頭取は部屋の端でテレビを見ている。今日で赤坂は終わるのだ。上場会社の社長も向こう側に座っている。
「書類に不備はないですね?」
と言い副頭取が資金の振り込みを行う。それを合図に購入側は立ち上がって部屋を出て行く。
「頭取と会長は?」
 元頭取が振り返って副頭取に声をかける。
「すでに辞表を預かっています。会長をお願いしますよ」
 院政を敷く準備が整ったらしい。
「勝ったな」
 テレビに元総理が側に座り新総理に握手している。与党に大差をつける結果になった。政権が代わる。元幹事長の新党は大半が議席を失って第5党まで落ちた。ここも院政が敷かれた。
 カオルと私は肩から力が抜けてマネージャーの車に乗って、そのまま八重洲に行き地下の寿司屋に座る。
「帰るの?」
「乾杯だ。泣きべそをかくな」
「明日にならない?」
「永遠の別れじゃないんだ」
「でももう出て来ないでしょ?顔に書いてある」
 赤坂が終わったらカオルの仕事から手を引いてサエの仕事を手伝うと話している。寿司屋のカウンターに番頭が掛けていて、外に若い衆が2人立っている。ここでカオルと道が分かれる。
 長い空白の時間が終わる。






足掻き12

 元頭取の関連の雑誌に元幹事長の資金が銀行から不正融資で出ている記事が発表された。合せて元幹事長と今は死んだ秘書との密会の写真と手帳の一部が載せられた。この部分は会長が追加させた部分だ。検察が銀行に査察に入り、警察が手帳を押収した。
「サエ、ユイは元気か?」
「お父ちゃんはって言ってるよ」
「悪いな。もうすぐ片が付く」
と言って携帯を切る。今日は現地で赤坂の境界の確認で相手の会社のチームと廻る。カオルは今日は警察に呼び出されていて会長の事故の防犯ビデオの立ち合いをしている。
「修司?」
「カオルか?終わったのか?」
「殺人犯が見つかったようよ」
「見つかった?」
「毒殺されてたの」
「やはり殺したのだな」
「今から番頭を連れて検死に立ち会うわ。お金は送った?」
「朝一番送金しておいた。元総理も元頭取ももう黒幕だな」
「そうね。新旧交代ね」
「カオルは怖いファィクサーか。抱いたら殺されそうだな」
「溜まりきっているから今日は朝まで頑張るのよ」




足掻き11

 元幹事長の新党党首が再び野党再編を呼びかけた。現政権から3大派閥の一つが離党届を出した。だが今回は新党党首には資金がない。それに検察と警察に纏わりつかれている。
 今日は珍しくカオルと私が元総理が泊まっている赤坂のホテルに呼ばれている。カオルは長男の会社の金を止めて今回の元幹事長との提携の裏を取った。グループはすべてカオルの会社の資金で動いているのだ。総帥を会長はカオルに譲ったのだ。
「へえ、頭取もいたの?」
 元総理の横に元頭取が座っている。
「儂ら3人はカオルを挟んで兄弟だよ」
 元総理が笑っている。
「次の衆院選で野党から与党に返り咲く。それで私の子飼の党首を立てるのさ」
「またお金でしょう?」
「頭取は?」
「今の副頭取を頭取にする。会長と今の頭取は元幹事長に押さえられている金を担保で5億を貸した」
「それをじっと見ていたのですか?」
 さすがにそのしぶとさにあきれる。
「幾らいるの?」
「8億。だがこれは赤坂の斡旋料として帳消しにしてくれよ」
「会長の言っていた売り先というのは総理の先だったのね。政治家と銀行員は怖いわ」
「両性のカオルの方がもっと怖い」








足掻き10

 元総理の力を借りて警察を動かした。週刊誌の記者には防犯カメラの映像を提出させた。それで再捜査となってあの男が指名手配になった。週刊誌には次の秘書の殺しの記事と元幹事長の密会の写真を載せた。元幹事長は資金を検察に押さえられているので次の作戦に移れない。
「長男の相続の裁判は?」
「こちらの弁護士が相手の弁護士と話したようだわ。遺言には全く問題ないということで私が父を殺していなければ争いは無理だろうって」
「その件はもうすぐ片が付くさ」
 カオルが会長から預かった封筒から秘書の手帳を出してくる。私は受け取ると念入りにページを繰る。元幹事長とのやり取りが将来の保険として事細かく書かれている。これらは私の調べとも合致している。だが後半のページが気になる。
「会長の殺人依頼は事実関係からすると無理があるが?」
「ええ、それは会長自身が書かせたのよ」
「どうして?」
「会長は最後に戦うのは元幹事長と見ぬいていた。彼を殺人未遂で追い詰める予定だった」
「今となったらその嘘は2人が死んだ今暴けないな。これをいつ使うかだ」
 その時携帯が鳴って取る。
「元幹事長の秘書のマンションで貴重な映像が取れたよ」
 探偵の声だ。
「殺人者の映像だ」
「そこにいる?」
「今はいない」









足掻き9

 甲府に着いたら駅に警備会社の会長が迎えに来てくれた。会長は前日に来ていてフィクサーと話を済ませているようだ。私の膝に今朝発売の週刊誌を置いた。あの記者の殺し屋の写真が入った記事だ。そのまま無言で塾の本部がある屋敷に車が入った。
 書斎に通されるとすでにフィクサーがコーヒーを飲んでいる。
「昨夜彼と話したが、残念ながら決裂したよ。この記事も読ませてもらった」
「元幹事長の要求は?」
「私の持っている赤坂の土地を半分要求している。それだけじゃなく亡くなられた会長の土地も手に入れる予定だそうだ」
 長男と組んだのだ。長男は赤坂の土地のことを知らされたわけだ。
「もちろん私は断った。会長と組んだのだからね」
「ありがとうございます」
「どうする?」
「まず殺人犯を追い詰めます」
「だが殺人犯を殺されたら?」
「実は」
 私は鞄の中からファイルを出す。
「これは秘書とまだ反主流派のボスだった元幹事長との交渉の場面を撮った写真です。











足掻き8

「困ったことになった」
 カオルの言葉で東京に舞い戻った。わざわざカオルが駅まで迎えに来て病院に走る。病室には秘書を迎えに行った番頭が寝ている。
「歳を取りました」
 どうも東京に秘書を連れて戻った夜にホテルで襲われたようだ。
「彼は即死です。首を絞めたのです。私は物音で覗いた時に刺されました。あの殺し屋です」
「こちらの札を1枚消したのですね?」
「それだけじゃないの。長男が相続を認めない訴訟を起こした。よりによって私が父を殺したと」
 ドアが開いて探偵が入ってきた。
「それは調べてみました。長男に付いた弁護士は新党の党首のお抱えです」
「彼はどうしようと?」
「赤坂の資金に目を付けたのです。こちらで裏金を押さえていますからね」
「殺し屋を抑えるわけにはいかないかな?」
「探しているが難しい」
 探偵はかなり手を尽くしているが網にかからない。
「よし第2弾であのコンビニの防犯ビデオの映像を使おう。取り敢えずトラックから飛び降りた写真を載せよう。それから探偵は秘書が殺された病院の監視カメラをすべて調べてください」
「私は?」
「会長の弁護士を呼んで対策を練ってください。私はフィクサーに会ってきます」
 さっそく警備会社の社長に連絡を入れて一緒に甲府に行くことにした。









足掻き7

 久しぶりに大阪に戻って新聞記者と馴染の寿司屋で会う。彼も今はキャップとして『白薔薇』のママの特集を書き続けている。最近の喪服を着たカオルが写っている。すでに会長の死が伝えられていて彼はカオルが会長の暗い部分を引き継いだと勘違いをしている。
「カオルは会長の実の息子だよ」
「なら息子を抱いていたわけに!」
「あれはカオルが撒いた噂だよ。会長はカオルのグループの柱の会社を譲った」
「それで相続がもめているのだね?」
 すでに手帳にメモを入れている。おそらくこれを記事にするのだろう。
「これを見てくれませんか?」
 東京の大手の週刊誌だ。『あれからの赤坂』という見出しが付く特集が始まった。私はペラペラとページを繰る。
「かなり精密な情報だよ。誰が書いている?」
「調べてみたが書き手は分からない」
「これだけの情報を持っていて公開するのは元幹事長の新党首しかない」
「フィクサーでは?」
「彼とは会長が死ぬ前に和解が出来ている」
「こちらも赤坂の特集をという声が出てるんだ」
「なら会長の不審な死から切り込んでみたら?」
「情報はもらえるか?」
「また送っておくよ」
 8時になっているのを見て彼と別れてサエを店に迎えに行く。











足掻き6

「どうした?」
 葬式が終わってカオルと八重洲の地下で寿司屋で別れの夕食を取る。帰るという私に東京駅までついてきた。全家族反対という中での葬式だった。
「なんだか急に寂しくなった」
 私は無言で冷酒を入れてやり乾杯する。最後だと言ってからもう5本が空いている。
「私ってどうすれば?」
「統帥って言うタイプじゃないがな。親父のお土産の赤坂は終わらせよう。それから考えてもいいのじゃないか?」
「手伝ってくれるの?」
「いい友達として」
「まず何からすれば?」
「弁護士に会社の登記を急がせるんだ。それがないと赤坂の処分を進められない。それから番頭に秘書を内々に呼び戻させる」
「今日は大阪に戻ってサエを抱くんだ」
「それは抱くさ」
「明日一番で帰られない?」
「駄目だ」
「だったら私が大阪に行く。新幹線の個室で2時間たっぷりあるわ」
 もう立ち上がっている。
「予定通り家に帰るから」
「いいよ。帰るまでの体頂き!」



足掻き5

 病室に入ると会社の顧問弁護士とカオルが枕元にいる。看護婦が計器をじっと見ている。
「では表の相続は予定通りに進めます」
 会長はマスクをしていて目で頷く。弁護士はずいぶん前に作っていただろう遺言状を開く。部屋に番頭も入ってくる。貿易、不動産業、飲食業、倉庫業など7社ほどあるがこの会社はカオルを社長とすると書いてある。カオルは正式には庶子だ。実はこの会社が目立たないが柱の企業なのだ。すべての会社の持ち株会社でもある。何より赤坂の土地を持つ会社の株式すべてを持っている。
「新堂さんは監査役をお願いします」
 弁護士の言葉に会わせて会長の目が頷いている。
「赤坂はどうしたら?」
 その声に会長の目が弁護士を見る。弁護士は封筒を出してきて私に渡す。どうやら売り先も決まっているようだ。フィクサーとも合意しているようだ。どうも赤坂のホテルに互い泊まっていたのはこのことだったのだ。だが下に降ろされた私と警備会社の会長は知らされていなかったのだ。
「合意済だったのですね?」
 うんうんと頷いてカオルの手と私の手を胸元に持ってくる。冷たい手だ。
 始めてカオルの目から涙の零れるのを見た。白衣の医師がいつの間にか後ろに立っている。脈を打っていた計器が一本の線になっている。同時に会長の目が閉じられた。
「父さん」
「ではこれから親族を呼びます」







足掻き4

 朝からカオルの部屋に探偵が来ている。カオルは先程病院に出かけた。会長が意識を失って5日目になる。兄弟はそれぞれ弁護士を付けて大変なことになっているという。私は赤坂の土地を繋いでみて問題点を整理している。とくに廃道が可能かどうかだ。そのためには後何か所か土地を購入する必要がある。赤坂の現場に携帯を入れて地図を見ながら交渉の指示を出す。
 探偵がパソコンを開いて説明を始める。
「蜥蜴とあだ名があるこの男は60歳ほどで犯罪歴もやくざ組織にも名前がない。蜥蜴は右腕に蜥蜴の刺青があるからだそうだ。R事件の時地上げを担当していたようで、フィクサーがずっと使っていた。一時は地上げした赤坂のマンションに住んでいたようだが、今はどこに住んでいるかも不明だ」
「元幹事長とは?」
「派閥の資金稼ぎで今逃げている秘書の紹介で元幹事長が使い始めた」
「警備会社の会長は2人殺してると言っていた」
「いやもっと殺してるだろうな。私が係った事件でも彼の名前が挙がっていた。元々R社の開発担当の課長だったそうだ。それで、フィクサーが赤坂の件で彼を雇っていた」
「エリートサラリーマンか」
「あの事件で人生が変わってしまったんだよ。君とよく似ているさ」
 説明の途中カオルから携帯だ。
「今から病院に飛んできて!赤坂の件も説明してね。記憶が戻ったけど医師は長くないと言ってる」
「分かったすぐに出る」
「俺の車で送る」
 もう探偵が立ち上げっている。






足掻き3

 どうもカオルが番頭を付けてくれたようだ。フィクサーが裏にいれば警備会社の会長に会うことは罠に嵌りに行くようなものだ。だが私の勘では話した感じ白だという気がする。私は赤坂のホテルのロビーの喫茶店を指定した。
「大変でしたね?」
「まだ意識が戻っていません」
 彼は封筒から写真を数枚出してきた。
「あれからこちらの警備会社で事故の様子を調べさせました。ちょうどコンビニの前で運転席から飛び降りています。顔の部分を拡大したのがこの写真です」
 警察より手回しがいい。防犯カメラを解析したようだ。
「この男はR事件の時にも2人殺しています。それでフィクサーにも確認しましたよ。彼とはあれ以来接触していないようです。今使っているのは元幹事長とのことです。本来は先に秘書を殺すつもりだが見つからないので大本を狙った。現在捜索中です。私どもは和解を果たして早く赤坂の整理をしたいのです」
「警察には?」
「公表は控えたいのです」
 赤坂が表に浮かんできてしまう。内々で整理すべきだろう。
「契約は進められますか?」
「会長は和解には合意していますが、意識がないと動かせれません。元幹事長はなぜそんなに急いでいるのですか?」
「金が動かせないのに加え、秘書が出てきたらと考えているのですよ。追い詰めすぎたのです」
 彼と別れると番頭の車でカオルの店に走る。車の中で探偵に犯人のプロフィールを伝える。











足掻き2

 翌日の昼過ぎに東京の病院の個室に飛び込んだ、入口にボディガードが3人付いている。ドアを開けてもらうと番頭とカオルが座っている。
「どうなんだ?」
「まだ意識が戻らない。緊急の手術は終わったのだけど」
 番頭がカオルの顔を見て席を外す。
「警察は出会いがしらって言ってたけど、あれはプロに仕事だわ。ダンプの盗難だなんて。運転手はぶつかる前に飛び降りて行方不明」
「フィクサーの?」
「分からない。私どうしたらいい?」
「今夜には警備会社の会長に会う」
 新幹線の中で彼と連絡を取った。あの感じでは彼が仕組んだとは思えない。
「会長の家族は?」
「昨晩大変だったの。もう後釜争いでちょっと可哀そうだと思ったわ。今日は誰も来ない」
「医者は?」
「意識が戻らないかもって」
「とにかく誰が狙ったかを探そう。今のところ一番怪しいのはフィクサーだ。ここに当たってみるしかないだろう。カオルは少し寝る方がいい」
 どうも辞めるというのが先に伸びそうだ。
「それに探偵にもう一度事故を調べさせよう。これももう指示は出している」
「ご免ね。初めての家族旅行だったのにね」



足掻き1

 あの次の日カオルと池袋のホテルで朝別れて大阪に戻って10日になる。今朝の新聞で元幹事長の新党ができたが、予想の人数の半分も集まらず弱小野党に転落した。これで均衡が崩れたのか再び内閣が変わる。政治の停滞が経済の停滞に結びつく。だが元幹事長は検察からの包囲網が迫っている。
 今日はサエの店が休みで私も休みを取った。それでボンの家族と一緒に白浜温泉に来ている。ボンとの申し合わせで互いに個人貸し風呂を取った。食事前にサエがユイを抱いて家族で湯に入る。私がそっと後ろから竿を握ると恐ろしい顔で睨む。
「何とかしてサエを籍に入れようと調べているが?」
「いいのよ。でもユイにはいつか説明しないと」
 実際に元総理にはお願いしている。
「カオルの会社で仕事しているのは嫌じゃないか?」
「それは気にならならないけど、危険なことはしないで」
「赤坂の仕事が目途が見えたら辞めようと思っている。その時はサエの仕事を手伝うよ」
 どうも最近カオルは会長の後を継ぐような気がしている。あそこで番頭のような役割はごめんだ。
 部屋に戻ると携帯が点滅している。サエに夕食の部屋に行くように促す。カオルからの着信だ。
「どうした?」
「会長の車にダンプカーが突っ込んだ。運転手が即死で会長は重体」
「相手は?」
「盗難車でプロのようだと。現在調べている」
「探偵にも話しておいてくれ。今日はいけないが明日には行く」
 まさかフィクサーの和解は騙しだったのだろうか。







反撃12

 8時に昔よく使った赤坂の料亭に入る。まるで女優に付くマネージャのような格好だ。部屋の前には秘書だけがいる。総理時代とは警備が違う。すでに料理や飲み物が運ばれていてどうも前客がいたようだ。
「久しぶりだなカオル」
 そう言われると無造作にスカートを上げてむき出しの竿を見せる。
「相変わらず元気だ。5寸釘を打たれたらしいが?」
「なんでもご存知ですね?」
 ビールを2人に注いでくれる。
「会長と赤坂のことを聞きたいのです」
「動き出したらしいな怪物たちが。あれはR事件の社長が地上げを始めた物件だ。カオルの旦那だった頭取が融資をしていた。その当時の総理が絡んでいた。会長は当時の総理の私設秘書で赤坂や政治資金の交渉をしていた」
「フィクサーは?」
「総理の金庫番で同じ穴の貉だ。これは事実かどうか知らないが会長が裏切って私に付いた。だが総理は裏交渉で派閥の長で残ったが、金庫番はR事件に巻き込まれた。それで長い裁判になった。だがその時に赤坂の土地をフィクサーが埋めたと聞いている」
「と言うことは当時の地上げ地はフィクサーのものだというのですね?」
「ああ、かなりの虫食い状態だったようだ。それから会長がその部分を買い続けてきた。私も頭取も絡んできたさ」
 これでかなりの部分は見えてきた。
「ところでカオルは今は会長に抱かれているようだな?」
「舐めてあげるだけの仲よ」
 総理は二人が親子だとは知らないようだ。
 1時間半ほどで料亭を出てカオルがタクシーを飛ばして池袋のホテルに入る。
「懐かしのホテルよ」






反撃11

 会長はあまりにもあっさり合意した。どうも出来レースなのかもしれない。探偵の報告ではファイクサーは今朝赤坂のホテルを引き上げたという。それに合わせたように会長も私の報告を聞いてホテルを引き上げた。どうも私に次の作業を自動的に振ったのだろう。
 記者に携帯を入れて次の原稿から警備会社とフィクサーの関連を抜いてもらい、代わりに元幹事長と金庫番の秘書の話を差し込んだ。用意していたようにカオルのところにその時代の詳細と写真が同封されて送られてきた。
「会長は何を考えている?」
「何を考えているのか分からない。それよりもう帰るの?」
 パソコンを開いて赤坂の地図を見てる。ずいぶん前から購入分の評価を出しているが、フィイクサーの分も評価し直しいる。どうも二人の争いのゴールはここにあるようだ。
「赤坂って仕上がったらいくらくらいになるの?」
「どうも二人はR事件の埋蔵金を掘りだすらしい。時価で2000億は下らないだろう」
「じゃあそれなのに私の貰うのは10億ぽっちなの?」
「変に絡むのはよせ。竿だけでは済まないぞ」
「でも」
「カオル会長の知ってることを教えてくれ」
「いいよ。私も調べたものがある」
 素早く携帯を取った。
「総理?」
「君か?元総理だ」
「晩飯どうですか?」
「今カオルのところにいるのだろう?カオルも連れて赤坂の料亭はどうだね?」
 どうも彼も会長の動きを掴んでいるようだ。カオルが頷いている。



反撃10

「だめよ!」
 携帯を取ったカオルが首を振っている。カオルはもう全裸でまだ傷が残っている竿を私の中に入れている。
「悪いな。これから車をやるから乗ってくれ。警備会社の会長に会ってほしいんだ」
 膨れてしまったカオルを置いてズボンを上げて時計を見る。もう10時を回っている。店の前に降りるとちょうど黒塗りのベンツが入ってくる。後ろの席に番頭が座っている。手書きの会長のメモを読んでいるともう赤坂の料亭に着く。私は一人で料亭の中に案内される。
「『白薔薇』のママが来るかと思ったが?君は銀行にいたね?」
「私では回答はできませんよ」
「それはお互いにだ。どうも元幹事長にはツキがない。野党の8億の追及もやまないし、ついに検察も動き出した。だが本人は今更に分党を検討しているさ。それに秘書はそちらに握られている」
「そんなに手の内を曝してもいいのですか?」
「これはボスの独り言だ。今度の総理もそう長くない。政治家ではなく官僚の時代だな。それで言うと政治家に金をかけることはない。お互いに押さえるところは押さえている」
「赤坂ですね?」
「物わかりがいいな」
「面積的にはそちらが大きいが、メイン道路に繋がらない袋地ですよね?」
「ここは争っても互いに傷がつく」
「元幹事長とは離れるということですね?」
「それとある程度そちらで使ったら秘書を預けてほしいんだよ」
「秘書は元々?」
「彼は元幹事長の金庫番だったんだ」






反撃9

 サエとユイに見送られて東京に向かった。新幹線の中で記者の記事の出ている新聞と週刊誌を読みこむ。8億の出どころに明確に警備会社の名前が挙げられた。さすが記者がよく調べている。警備会社の設立はR事件の最中で、経営塾のリーダー的存在だった会長が当時の総理の肝いりで警察の警備の唯一の下請けとして天下りを受けた。その警備会社から8億が出ているのだ。
 東京駅には2人のボディガードに囲まれたカオルがワゴンで迎えに来た。
「すでに払い込みは済ませている。どうも頭取が不正融資だと言ってるようなの」
「実権は副頭取だからな。とは言っても早く済ませるに越したことがないな」
「警備会社が人数を出して元秘書を探してる」
 いつの間にか車が検問所を抜けてビルの地下に入っている。そこからガードされてエレベータに乗り込み窓のない廊下を抜けてボディガードを置いて部屋に入る。そこにはスーツの男性が5人並んでいる。真ん中の一人が次官のようだ。振り込みを確認したから始まり15分ほど説明がある。取引はあっけないものだ。
 帰りには乗っていきたワゴンが待っていたように出ていく。その後に黒のベンツが止まっている。
「張り付いていた車がワゴンに付いて走り出しました」
 運転手はマネージャーに変わっている。
「そろそろ戦争モードだな」
「もう5寸釘はいらないわ。これから私の部屋で乾杯よ」
「会長のところに寄らないのか?」
「会長はまだ赤坂のホテルよ。珍しく元総理と元頭取が集まっている。私と修司は朝まで寝ないで会議よ」
 カオルの手がズボンの中に入って握っている。バックミラーのマネージャがにやりとしている。



反撃8

 5億を使えなくて幹事長は総裁選挙に敗れて若手の議員が総理になった。合せて幹事長の席も失う大完敗だ。苦虫を潰したような顔で国会の喚問の席に座っている国会中継が映っている。どうも会長が元総理の派閥を動かしたようだ。反撃を始めるようだ。国会議員は週刊誌を手に持って、8億の振り込み相手と3億の支払い相手の説明を求めている。得意の秘書に任せていたの一点張りだ。
 その後幹事長の派閥の議員が赤坂の国有地払下げについて新総理に質問している。だが野党は反応を示さない。もちろん新総理には会長から5億が渡されている。それにこの審議はR事件当時の総理が了解済みで前総理も了解済みで申し送りしている。ただ私が慎重を期して止めている。
 大阪店の前の喫茶店に記者が押しかけてきている。
「週刊誌の方は第3弾の原稿を回しました。8億の銀行口座を開示しました」
「えらい勢いですね?」
「それで今日の国会中継で局長の新聞記事OKが出たんです。私が書きます。それで記事を見てほしいのですよ」
 原稿をテーブルに置く。
「銀行と支店名はいいとして、入手先はまだ伏せておいてください」
「秘書ですね?彼は警備会社を解雇されてどこに行ったのですか?」
「よく調べましたね。今海外にいます。最後は証人に出ますよ。それと警備会社の会長をもう少し詳しく載せて次にはファイクサーに繋がるようにしてください」 
 カオルからの携帯だ。
「会長から伝言よ。赤坂の国有地取引をすること。銀行内が不穏だそうよ。夜泊まるのよ」
「あの『白薔薇』のママですよね」
 記者は完全にママに恋している。









反撃7

 分厚い速達が届いた。それを見透かすように探偵から携帯が入る。
「まず、ファイクサーの赤坂のホテルだが、ここ5日間で訪ねて来た客はリストにして写真も付けてある。幹事長が1度これは2時間ほどで一番長かった。1対1で会っている」
 リストの写真を見る。
「それからファイクサーの塾の事務長が2回。例の警備会社の会長がやはり2回来てます。1度は怒鳴り声が聞えたと報告がありますよ。それと銀行の会長も来てましたよ」
 どうも会長は今度は幹事長に乗り換えたようだ。だが頭取や会長では資金に手が出せない。副頭取が実権を握っている。前頭取からの遺産は彼が引き継いでいる。
「赤坂の方はその地図にも附箋をつけたが、5社の名前で登記になっている。R事件の裁判が始まる前に代表者が変わっている。代表者を照会したが警備会社の関係者だ。それに無担保だったよ」
 携帯を切ってすぐにカオルに入れた。
「どこにいる?」
「札幌よ。東京から新しい子を5人連れてきて2人を東京に連れて帰る」
「赤坂はファイクサーと大衝突になる。カオルは顔を出さないほうがいい。今度は竿を抜かれるぞ」
「それよりいつ来るの?」
「しばらく竿は封印することだ。ところで秘書はどうなった?」
「警備会社からも解雇されたようよ。すでにタイに移されたわ」
「また殺すんじゃないのか?」
「今度は本人から提案があり証人になると。彼は蝙蝠みたいな奴だからね。陰茎を刺された私としては許しがたいのだけど」






反撃6

 週刊誌が出た。反響は大きい。カオルには会長から2人ボディガードをつけさせた。当面動いているのは『白薔薇』のママと見られているだろう。副頭取に連絡を入れて国有地購入費の別枠の120億の融資を受けた。幹事長の意を受けた野党が答弁を求めてきたが、幹事長の裏金の声がそれを上回っている。
「300万の振り込みが入った?」
「週刊誌を見た。次は?」
 探偵の声だ。
「赤坂のホテルにいるファイクサーを見張ってくれ」
「写真を撮るんだな?」
「それと例の赤坂の土地の地図で黒く塗った部分の謄本を上げて所有者の確認をしてほしいんだ」
 待っていたようにカオルから携帯が入る。
「5億は送金してくれた?」
「ああ今朝送った。今度は誰に渡した?」
「5番目の派閥の長が連合艦隊をまとめたわ。これで総理の支持もついて幹事長の数を上回った。今度いつ東京に来る?」
「しばらくサエでたくさんだ」
「もう使えるのに!」
「しっかり仕事をするんだ。次の原稿を送った。秘書のテープの引き起こしだ。ここで伏字で幹事長と警備会社の会長を出す。それとファイクサーの影も見せる。最後に党首選で負けるようなことはないな?」
「もちろんよ。赤坂の決裁は来るのよ絶対に!」












反撃5

「今度の読みましたがこれは余程慎重にやらないとというのが局長の意見です。でもトップ記事ですよ」
「まずは週刊誌でジャブですね?」
 乗り気の記者の顔を見て言う。彼は私が『白薔薇』のママと組んでいると知っている。だが会長の影は見えていない。今日は姉さんの事務所から帰りに寿司屋に寄っている。
「幹事長の裏金の8億ですが、3億はすでに若手議員に配られたと書かれていますが、残りの5億は?」
「今回与党内の派閥に配られる予定です」
 それまでに阻止することが今回の課題だ。5億を凍結する。
「8億の裏金の口座履歴のコピーはぼかして使ってください」
「出どころは?」
「党首の首になった秘書です」
 さすがに銀行の副頭取とは言えない。
「本人のテープ証言もありますが、これはその時に渡します。まだ伏せておいてください」
 記者はビールを飲みながら器用にメモを取っている。
「彼は党費の使い込みで首になったのですね?」
「実は元々幹事長と組んでいたのです。8億の繋ぎ手でもあります」
「出どころは?」
「これもテープに出てきます。ファイクサーと呼ばれている男ですよ。その金は警備会社から流れていて秘書は今そこの秘書になっています」
「その警備会社は過去に調べたことがあります」
 私は警備会社から出てくる秘書を撮った写真を出す。
「この写真も使ってください」









反撃4

 久しぶりに精液が枯れたような気分だ。だがサエの顔を見ていると幸せだ。今日は大阪店に出て溜まっている仕事を朝から片づけている。赤坂の進捗具合を携帯で確認する。順調な段取りで進んでいる。フィクサーに知られることなく予定地を買い込める。
「修司?」
 カオルの声だ。
「もう退院した?」
「あんなところにいちゃ腐ってしまう。グローブをぶら下げて会長に会ったわ」
「テレビで見たが総理は持たないな?」
「想定内よ。彼は赤坂の国有地の払い下げを通してくれたからもう用済み」
 頭の中で赤坂の地図を描いてみる。あの土地の真ん中にどんと国有地があった。これはR事件の時に当時の総理が引き渡しを約束していたものだ。これはファイクサーも狙っているはずだ。
「第1秘書に党首の引き渡し交渉をしているわ。それでまた資金を用意してほしいのよ」
「そんなにして採算は合うのか?」
「国有地だけで儲けが100憶には化けるわ」
「親父になってきたな」
「修司の声聞いてるだけでちんちんが立ってきたよ。今度は党首候補に5億よ」
「後は連合艦隊だな」
「おそらく会長の言うのにはコロコロ総理が変わるって」
「それといよいよ幹事長の8億の暴露よ。例の記者に頑張ってもらわないとね。わあ。立ったちゃって縫ったところから血が出てきてる」









反撃3

「カオルさん大丈夫?」
 新店の方を覗く。間に合ったようだ。サエがレジを締めていて研修生がシャッターを閉めかかっている。
「ああ、彼奴は殺されても死なんよ」
 5寸釘を刺されたグローブの様な陰茎を思い出して答えた。
「先に出るけどいい?」
「はい」
 高校生のようなニューハーフだ。私はもう眠っているユイをバギーに乗せる。今日は少し路地を歩いてやぶ医者の女房の小料理屋を予約している。暖簾を潜るとやぶ医者がカウンターの中で着物を着てビールを出している。
「医者は廃業ですか?」
「いや、夜だけ手伝っているんだ」
 サエが私の腕を抱えている。
「私はもう子供産めない歳だから羨ましいわ」
「そんなことありませんよ」
 サエが否定している。男と知っているやぶ医者はにこにこ笑っている。
「野党総理になったが人気は急落だな」
 そう言う客の声でテレビ画面を見る。また総理の失言で国会が混乱している。それに合わせて母親から受けた金が野党から質問を受けている。こちらの裏金ではない。これは秘書があらかじめ幹事長に渡していた情報だ。反主流派ボスの罠だ。やはりあの総理を守るのは不可能だ。
「サエ、帰ったら2回はやるぞ」
「聞こえるよ」
 真っ赤になっている。






 

反撃2

 カオルに引き止められたが、会長に報告だけ済ませてサエの元に帰ることにした。会長はあれから赤坂のホテルに泊まっている。同じホテルに宿敵が泊まっているのも面白い。
「もう帰るのか?」
 部屋に入ると私設秘書が部屋を出ていく。
「カオルとは引継ぎを済ませました」
「だがまだ動けないから続けてくれないか?」
「後は向こうの出かた待ちなんでしょう?それよりカオルの父親なのですね?」
「そんな話をしたか。余程君に心を許しているのだな」
 会長は立ち上げって背広の内ポケットから写真を出してくる。無造作に私の前に置く。それほど若くない会長が胡坐を組んでその後ろに娘のような女性が肩に手をかけている。膝にいるのは坊主頭のカオルだ。
「儂の女房の料亭で仲居をしていた。もうこの歳で子供など生まれんと思ってたが」
「カオルのお母さんは?」
「5年前に病気で亡くなった。それで上京してきた息子が娘に変わってしまっていた。それで当時儂の部下だった伊藤に預けた。前の女房はもう亡くなったが、それに3人の息子がいる。子供を生ませた女が彼女を入れて5人もいる。その中で儂の後を継げるのはカオルだけだよ」
「まさかカオルともやった?」
「そう言いふらしているそうだ。親子なのを知っているは番頭と君だけだ。儂は息子を抱くほど畜生じゃないぞ。だが困ったことだわ。君が面倒見てくれると思ってたんやがな」
「・・・」
「サエと言う子も男だそうだな?愛せるのか?」
「女男と言う垣根が取れてしまったのですよ」







反撃1

 病院の個室のベットでテレビを見ている。新聞も5誌買ってきているが昨夜の襲撃劇は載っていない。だが会長の報告だと15分後には警備会社の車が駆けつけたということだ。もちろん秘書の失踪も出ていない。
 新総理は早くも問題発言が続いているが、幹事長が余裕のある顔でテレビでお詫びをしている。朝刊を広げると早くも内閣改造の話が出ている。これでは会長の投資もさして効果を上げる間に終わってしまいそうだ。
 今朝は朝から手術があってようやくカオルがベットに戻ってきた。
「この際竿を取らないかと言われてそんなことしたら彼に捨てられるって」
 もう十分元気だ。
「カオルの調査の後を引き継いだが?」
「反主流派のボスの裏金ね。8億の資金の流れは証拠を取っている」
「赤坂の用地買収は会長から裏話は聞いてないのか?」
「?」
「あれはR事件の遺物でファイクサーの土地を囲むように買い込んでいる。それが脅威だったのだろう」
「秘書がそのことを執拗に聞いていたのはそれよね?また狸に騙されたわけね」
「手が切れないのか?」
「でも血が繋がってるからね」
「祖父?」
「そうじゃない。父よ」
「まさか?」





衝突10

 0時を少し回った頃、黒塗りのワゴン車が到着する。すでに道路際に工事車が泊まっている。そこから探偵のメンバーが3人降りてくる。ワゴン車からは私も含め会長の番頭を先頭に黒づくめの男たちが5人降りる。
「今この建物の電源を切った」
 裏口の窓が開かれ作業チームの探偵たちが先に中に入る。その後から黒づくめのチームが麻酔銃を手に入っていく。管理人は金を渡してまだスナックで飲んでいる。報告では廊下を進んだ部屋に警備員が2人いるはずだ。警備員に黒づくめチームが飛び込む。作業員が地下への扉を合鍵で開ける。
 私と探偵は地下室に降りていく。地下室の風景はビデオで見た通りだ。探偵が照らした光の中に全裸の女が大股を開いて縛られている。陰茎に5寸釘が刺さったままでグローブのように膨らんでいる。私が懐中電灯をカオルに当てて、
「カオル?」
と言うと眼だけが反応する。
「毛布」
 床一面に脱糞と尿の匂いが充満している。秘書を捕まえたところからカオルは放置されていたのだ。裸の彼女を毛布に包んで抱きかかえる。探偵が足を持って地上に運ぶ。窓の外にはマネージャの車が泊まっている。運び出した途端にい電気が付く。
「電源が切れたので警備員がこちらに来る」
 二つのチームが素早く撤収する。同時にマネージャーの車が走り出す。
「今やりたいとこなんだけどこの太マラではね」
「今はこれだけだ」
と言ってカオルの唇を思い切り吸った。
「病院は押さえています」




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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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