空白 2017年08月

真相 10

 黒サングラスの男は殺人容疑で指名手配されているが見つからない。子供が寝てしまっていて検察からボンの店で飲んでから帰った。でもまだ興奮していて部屋の中でサエの日本酒を珍しく飲む。
 どうも検察はNについての仮定を持っているようだ。だが伊藤と黒サングラスの男の行方が大きな壁になっている。私の記憶喪失については疑ってはいないようだ。
 急に背中に張り付いてきたものがある。驚いて押さえつけたが、全裸のサエがむしゃらに唇を吸ってくる。カオルより細いが反り立っているサエのものを含む。サエは私のものを同時に含んでいる。10分ほどで互いに持ちこたえられなくなって同時に口に吐き出す。サエのものは凄く濃い。それなのにもうまた反り返っている。私がお尻を向ける。サエが子犬のように何度も何度も突き刺してくる。私の背中に涙が汗のように流れてくる。
「心配だよ」
 そう言えはサエはテレビを見て新聞をみてどうなるのだろうと思っているのだ。
「逮捕されることは?」
「ないと思う」
「記憶が戻ったら?」
「戻ろうと戻らないとしても口をつぐんでいかなければならないことは分かっている。それにカオルにサエを手放さないから記憶が戻ってもサエを守ってくれと言っておいた。だが検察も真相に近づいて来ている。後は頭取のツキだろう。サエの息子は困った奴だなあ」
 もうまた反り返っている。今度は仰向けにしてサエの中に入って手こきで同時に責める。今は抱き合うことでお互いを確かめるしかない。





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真相 9

 再びドアを開けると調書のファイルが先程より増えている。
「続いて聞きますよ。伊藤と『白薔薇』の東田とITMファイナンスの社長は週刊誌に出ているような関係だったのですか?」
「記憶にありませんが『白薔薇』のママからはそう聞きました」
「伊藤の行方は?」
「知りません」
「あなたは銀行で第2総務課長のポストにいたと聞いています。第2課長は頭取の直属としての仕事をしていたと?」
と言いながら頭取の調書を開いて長い文章を見せる。ITMファイナンスの伊藤との調整役と書かれてあるが、総理の件はどこにも出ていない。
「頭取がそう説明されるならそうです」
「たとえば議員などの交渉も?これは第2課の社員の発言にあります。よく国会議事堂に行かれていたと」
「憶えていません」
「あなたは銀行でパソコンを調べましたがスケジュール表は大半記号ばっかりですね」
 検察官がコピーを見ながら、
「Tは頭取、Iは伊藤と読めますが、よく出てくるKとNが分かりません。引き継いだ第2課長はKともNとも接触してないようですね」
 とくに返答は期待していないようだ。
「これによるとあなたは行方不明になる日、Tの指示でKに会いに出かけています。その時部下の係長、後に第2課長になる彼のメモに頭取から『白薔薇』に行くように指示が出ています。Kは『白薔薇』ですね。彼のメモにはチャンスが来たとあります。彼は何を指示されて『白薔薇』に行ったたのでしょうか?後の調査で彼の鞄からお金が出てきています。これについては東田は彼が伊藤からお金を貰っていたと証言しています。でも問題はNが誰かです」







真相 8

「掛けてください」
 見晴らしの良い部屋の大きなガラス窓から大阪の町が見下ろせる。正面の席に検察官、その横に事務官がパソコンのキボードに指を置いて待っている。検察官は附箋のたくさん付いたファイルを順番に並べている。
「サングラスの男に車を当てられたのはこの時期でいいですか?」
 日付を示す。私が頷く。
「その前の記憶は?」
「ありません」
「その時持ち物は?」
「黒鞄です」
「何が入っていましたか?」
「200万少しの現金です。他は何も入っていません」
「その鞄提出してもらえますか?」
「ええ」
 今度はファイルを置き換える。
「『白薔薇』のママとは会ったことがありますか?」
「ホテルの取引で偶然に」
「その時顔を思い出しましたか?」
と日付も見せる。
「いいえ。その日付だと思います」
 どうもすでにカオルの調書を取っているようだ。
「東田透はあなたに新堂修司だと告げましたか?」
「はい」
「それから合わせて何度会っていますか?」
「今回の写真と盗聴を貰った2度です」
「食事を済ませたら1時からお願いします」








真相 7

 何度か根回しを行ったうえ、新聞社の車で大阪地検に向かうことになった。車の中であの記者が朝刊を見せた。
「雑誌の記者が朝刊の一面記事を書くのは始めただと言うことです」
 彼の名前が入っている。新聞の記事は今朝私が地検に出頭したと言うことで、今までのITMファイナンス事件を整理して私の証言の重さを伝えている。本番は週刊誌の方で載せるようだ。そのゲラ原稿を車の中で見せる。ここには私が逃亡して現在に至る経緯が書かれている。
「ここの監禁についての記述は私も記憶にはありませんが、私をひき逃げしたのは黒サングラスの関東やくざで伊藤の配下と調べがついています。それに『白薔薇』のママは黒サングラスに狙われていると言ってます。伊藤とママが共謀してと言うのは?」
 カオルを悪者にしたくないと言う意思が働いている。
「写真の頃伊藤とママは組んでいた時期があるですね?」
「ええ」
「それと担ぎ込まれた病院の名前は伏せてください。迷惑がかかります。金融屋も同様です」
「分かりました」
 即座に赤を入れていく。
「今日は?」
「東京から来ています。それと指名手配はされていません。任意の出頭です。記憶喪失の件は伝えてあります」
 ゆっくりと車がビルの地下に入っていく。警察官がすでに警備態勢に入っている。
「地検の話の話せる範囲でよろしく」
 私は頷くと1歩踏み出す。






真相 6

 小料理屋で記者と待ち合わせすることにした。やはり今日も定位置でやぶ医者が飲んでいる。私は早めに番頭の店を覗いてくると事務所を出た。
「いや前は手柄頂きましたよ」
「どうですか反響は?」
「局長賞ですよ。でも検察に呼ばれてニュースソースを出せと」
と言いながらにこやかにビールを注いでくれる。
「これもオフレコにしてください。実はあれは『白薔薇』のママから渡されたものです」
「まさか?どうして不利な情報を出すのですか?」
「私には記憶がないので分かりませんが、ママが言うのには伊藤が地下に潜って動いていると言うのです。一時あの写真のように3人で密会していたようです。それが社長が暴露する側に回ったので。ママも伊藤に脅されているようでした」
「それなら分かりますがでも話だけでは記事にできません」
「私も居場所がばれたので安心できないのです」
 今度は私が記者にビールを注ぐ。
「私を極秘に地検に会わせてください。記憶喪失と言うのも伝えなければと思うのです。その上で答えられるものは答えます。もちろん今まで内緒にしてきたのはそちらの記事に」
 彼の顔が急に晴れやかになる。
「これから社に戻って対策を立てます。詳しい流れは明日電話します」
と言うなり金を払うのも忘れて飛び出した。








真相 5

 新聞にITNファイナンスの社長が告発を取り下げ、頭取が背任を取り下げた記事が出ている。これは誰かが間に入ったことだと記事は書いている。それをこの記事は『白薔薇』のママが絡んでいると書いている。社長が『白薔薇』のママと会ったのも確認しているとある。カオルはわざと自分に目を引き付けているようだ。
 親分を車に乗せて姉さんが警察から戻ってきた。
「どうだった?」
「さんざんよ。番頭の身元引受の話をしたら、執行猶予にはならないと言われたわ」
「ノミ行為ではなかった?」
「あの店で麻薬を売ってたようなの。関東系の組が絡んでいるらしいわ。でも親分はなぜあそこまで庇うの?」
「親分は?」
「また足に激痛が走って病院に運んだわ」
 そのとき電話が鳴って姉さんが取る。
「またあの女よ」
と投げ出すように受話器を差し出す。
「あのサングラスのやくざの男が指名手配された。頭取が慌てているわ」
「何の件で?」
「後釜の第2総務課長を殺した殺人罪で。ホテルの防犯カメラに映っていたようよ」
「不味いな」
「それで例の出頭を早めてほしいの。例の録音と写真は私から渡されたと言って」
「それは不味いよ」







真相 4

 週刊誌をボンに届けてもらった。やはり約束通りあの記者のペンネームで特報!として新証拠が載せられた。いよいよ私もいつまでも隠れているわけにはいかない。記憶喪失として解らないと答える部分と、それでも答えられる部分をどうするかだ。
「女の人からよ。浮気したら許さないからね」
と姉さんが受話器を渡す。
「私よ。ありがとう効き目があった。告発を取り下げる代わりに頭取も背任罪は降ろすと言うことになった。ビデオは出さなくてすんだわ。さすが赤恥だものね。社長のものを銜えているものね」
「ほっとしたよ」
「でも検察は下がらないようよ。今日はITMファイナンスの本社の家宅捜査に入っている。今週中に『白薔薇』にも入ると弁護士が連絡してきたので、カメラやらはすべて外した。修司のものもすべて別のところに移した」
「でもいつまでも隠れている訳にはいかないと思っている」
「頭取はもう少し時間を引っ張ってほしいと言っている。私としては警察の手が回るまでで、あの記者を導火線として検察と交渉できたらと思う。私とは敵で伊藤が拉致監禁されて殺害されそうになって失踪」
「それでいいのか?」
「私は恥を掻こうがどうでもいい。頭取と修司が身を守るそこにポイントを置いたらいいと思う。でも流れをもう少しじっくり見て。頭取は総理の話が出てくることを一番恐れているのよ。私も総理と寝ただけで修司が二人の情報を掴んでいる。それが残っていると言うことをぼんやり描かせる。強くても弱くてもだめ」

真相 3

 翌朝サエがカオルの伝言を届けてくれた。それでさっそく記者に会うために新聞社の近くの喫茶店で待ち合わせする。最近は貸付の決裁以外は自由に任されている。先日は若頭の道頓堀の案件も実行している。
「忙しいところ呼び出して」
「いえいえ、こちらも確認したいことがあったので」
 記者はいつもより張り切っているように見える。
「実はニュースソースを伏せてこれを記事に載せてほしいのです」
 封筒を渡すとスナップ写真を見て凍り付いている。
「記憶は戻ったのですか?」
「いえ、顔見知りに会ったのです。もちろん中身は知らない話です」
「聞かせてみらっても?」
 小型のカセットに差し込んで30分ほど黙って聞いている。
「これは社長と伊藤と『白薔薇』のママが組んでいた証になりますよ。私に預けてもいいのですか?」
「ええ。その人がこれはあなたが表に出る道筋になると言ってました」
「これは私に推理ですが、社長と伊藤と『白薔薇』のママは一時組んでいたのではないかと。それで頭取の手足だったあなたが何らかの事件に巻き込まれた?」
「憶えていません」
 彼は携帯を取るとキャップを呼び出して5分ほど話す。
「明日発売に載せますよ」
 どうやらカオルは社長と話がまとまらなかったようだ。










真相 2

「ITMファイナンスの社長が反撃してきたようだね?」
 今日もマネージャーが車で迎えに来て、ほん10分のホテルに20分もかけて大回りして案内した。ベットにすでに全裸のカオルが入っている。
「ええ、ここは2時間で切り上げて社長に会う。まず抜いてそうしないと冷静に交渉できない」
 すでにカオルのものは反り立っている。いつもの2時間の作業を半分に短縮する。でもカオルは私の口の中とアナルで2回出してもまだ反り返っている。
「ごめんね。修司は出せなかったね。まずこれを見て」
 ハンドバックから膨らんだ封筒を出してくる。中からスナップ写真と盗聴テープが出てくる。
「これは伊藤とカオルともう一人は?」
「ITMファイナンスの社長。伊藤と頭取がギクシャクし始めた頃。その頃伊藤は修司を抱きこもうとしていただけじゃなく、社長とも内密の話をしていた。この日は東京に来ていて私を社長に抱かせた。妬ける?」
「いや。それは君の仕事だ」
「この時伊藤が私に大阪の店をプレゼントする話を持ち出した。その話が入っている。ビデオもある。でもビデオは最後の切り札」
「やっている奴か?」
「これは出来たら出したくないけどね。でも社長はいくら舐めても大きくならなかった」
「それで」
「これを私が連絡を入れたらあの記者に私のことは伏せて渡してほしいの」
「頭取は?」
「了解済よ。今の頭取は危険よ」





真相 1

 最近は朝はサエと子供と私、それにボンとフミコで下の喫茶店でモーニングを食べる。それで私とボンが残されて30分後に出る。今日はボンが新聞の紙面を広げている。
「これって少し流れ変わらないか?」
「予想外の流れだな」
 ITMファイナンスの社長が伊藤に加えて背任罪として親会社とメインバンクに訴えられた。それが反対に社長がメインバンクの頭取を訴えたのである。ここには頭取と伊藤が癒着している証拠が提出されているとしか出ていない。
「ここにある第2課長という銀行員はイサムのことじゃないのか?」
 伊藤と一緒に社長室に度々来たとある。伊藤についてはすでに指名手配されている。第2課長についても記述がある。銀行からは無断欠勤で解雇されているが、実は誰かに監禁されて逃げ出したと言う情報が入っている。この人物がITMファイナンス事件の解明の鍵になると見られている。ただ現在は伊藤と同様行方不明である。
 東京地検が昨日任意で社長と会っていると言う。
「カオルが明日にもこちらに来るって言ってるよ」
 サエが思い出したように言う。
 カオルのことはボンにはほとんど話していない。
「カオルって?」
「『白薔薇』のママよ」
「と言うことはサエと一緒か」
 ボン達はサエが男だと言うことを知っている。
「頭取とイサムのことをまた話し合ったそうよ。どうもいつまで隠れているわけにはいかないって」







 

戸惑い 12

 今日は姉さんに頼まれて番頭が働いているという萩之茶屋のスナックを覗いた。サングラスにマスク姿で姉さんの言うようにやくざっぽく見える。中に入るとカウンターの中に茶髪の女が煙草を吸っている。顔を合わせても声もかけない。
 壁に新品のテレビが2台付いていて競艇を流している。私の後ろから入ってきた人夫がそのまま奥の部屋に入っていく。
「なんや、イサム。競艇するん」
 腕を絡めてきたのは流し目の女アヤだ。
「私の彼、入るよ」
 そう言うとカウンターの女は軽く頭を下げた。中には15人ほどがビールを手にテレビに集まっている。アヤは小声で、
「ノミ屋よ。あの箱の中に入っている男が舟券を売っている」
 無精ひげを生やした番頭だ。その後ろにごっつい男が立っている。部屋は薄暗いので気付くことはないだろう。
「アヤ、あんまり穴貸してるとばかばかになるで」
 人相の悪い男がアヤの尻を突く。
「あれは前言っていた刑事。甘くしてやって情報を取って行くの。あの組のショーにもよくただ見客で来るわ」
と言いながら反対側のドアを開けて路地に出る。
「今日はしない」
「妹とやりまくっているでしょう?私も今日はだめ。夜に近くのホテルでショーをやるの。見に来る?それより飲む?」
 そのまま暖簾を潜ると小さなバーになっている。
「前話したイサムの写真、あれは東京の銀行員だってよ。重要な証人だって言ってたわ」
 警察はどこまで情報を持っているのだろうか。
「私は彼氏は売らないからね安心して」











戸惑い 11

「抱いてもらった?」
 サエが朝帰りしてきた私のズボンを叩く。
「反応もなし。ちょっぴり妬ける。ママのあれ凄いから」
 もうミルクを飲ませたらしくおとなしく寝ている。
「ママもう乳母車をプレゼントしてくれたわ。住民票も取れるって」
「しばらく入籍はできないよ」
「それも聞いた。でも名前は考えてね。それと話していなかった私のこと。イサムって私の最初の父の名前って言ってたよね」
「そこまで聞いていた」
「3人目の男が旅回りの劇団で子役をやっていた私に日常も女の子の格好をさせたの。母は言いなりで男は勝手にサエと呼んでいた」
「その時からサエだったのか」
「ママは透だけど私は剛よ。好きじゃなかった。いつの間にか女の子の格好をしているうちに女の子になりきっていたわ」
 財布からお守り袋に入った写真を出してみせる。
「可愛いなあ」
「母が若い芸人と駆け落ちしてから、同じ布団で寝さされた。酔ったら口に含まされて最後には太いのを入れられた。そのたびに血だらけになって逃げまわっていた。気持ち良いと感じたのはイサムが初めて」
「この前やぶ医者と飲んだ。ホルモン注射を打ちに行ってたのやな」
「ええ、あの逃げた日にやぶ医者にお尻の治療してもらったの。手術をしたのはカラオケバーでお金を貯めてから」
「カオルは26歳だったけどサエは?」
「17歳」
「こんなおっさんと子供を抱えていいのか?」
「今凄く幸せ!」







戸惑い 10

 またマネージャの車が現れた。事務所から帰る用意をしていた私を乗せて走る。
 サエと何度か入った白壁のホテルだ。
「大変な目にあってるね。妹の強姦ってやっぱり気にするよね」
「耳に入ってるのだな」
「先程までサエと話していたのよ。お祝いを置いて来たわ。子供に係きりで寂しい思いをしてるって抱いてあげてと頼まれた。さあ裸になって蒲団に入って私も欲求不満になっている」
「東田透26歳か」
「あの記者に聞いたのね。彼『白薔薇』に訪ねて来たよ。頭取もいろいろ防波堤を作っているようだけど、一度綻び始めると難しいようだわ。明日の新聞に後任の第2課長を殺したとチンピラが出頭した記事が出るわ。伊藤が指示をしたと証言する」
「そこまでする必要はないのじゃ?」
 カオルは話しながらゆっくり私のものを口に含む。恥ずかしいくらいすぐに反り返る。
「飢えてるね?」
と言ってそれを穴に導く。カオルも相当飢えている。いつもより濡れている。
「それはあなたから目を離そうとしているのよ。検察は私より修司の方が情報を持っていると踏んでいる。修司を消そうとしたのは伊藤じゃなく頭取だと見ている」
「どうして?」
「第2課の女性が連絡簿に記録を残していたのよ。押収物にあったようよ。頭取から今からいつもの部屋に行くようにと指示があったと。あの日修司は『白薔薇』に来てビールを飲んでからエレベーターを上がったと店の子が証言している。
急に予定もなくやってきた修司に私は驚いた。それで店に下りたらあなたの部下が上がってきたのを見て隠れた。彼は手袋をして真っ青な顔をして合鍵でドアを開けてガス栓をひねった」
「逃がしてくれたのか?」
「ええ」





戸惑い 9

 記者が会いたいと電話を入れてきた。それでいつもの小料理屋で会う約束をした。
「遂に『白薔薇』のママも呼ばれたな」
「知っている」
「悪いが伊藤と頭取とママの三角関係を書かせてもらった。もちろん第2課長のことは一切触れていない。それでもここまで踏み込んで書かれたのは初めてで、業界だけでなく地検からも電話を貰った」
 拡げられた週刊誌に目を通す。検察もそうだがまだ総理までには至っていない。頭取はここのラインを遮断しようとしている。でもそれは口にできない。
「ママの名は東田透だ。これは次回に載せる。伊藤と出会ったのは16歳の時だ。その時はまだ手術をしていない。当時の同僚の女に確認してきた。17歳に伊藤の店に出ている。手術費は伊藤が持ったらしい」
 記憶が全くない。
「頭取にママを紹介したのは伊藤だ。店には一度も頭取が現れたことがない。いつも第2課長が来て連絡係をしていたそうだ。頭取は直接ママの部屋に入った。その頃はビル自体が伊藤の会社から頭取の関連会社に名義移転されている」
「詳しいですね」
「ママが頭取の女になったのは19歳のときだろうと思う。その頃さらにそのビルは東田透の会社名義になっている。伊藤はその頃すでに大阪に来ている。そこから計算するとママはまだ26歳と言うことになる」
 まだそんなに若かったのか。実はサエの年齢も分からないのだ。
「新堂修二それがあなたの名前です。どうもすでに知っておれれるようですね?今年で32歳。第2課長は大抜擢だったそうです。あなたは新橋支店で営業成績を上げて本店に呼ばれたそうです。あなたはママとよく新宿の店で飲んでいた。店の主人は仲のいいカップルと言ってました」
 そんなに楽しい時間があったのか。
「あなたが逃げ出したのは頭取にばれたからではありませんか?」
「分かりません」







戸惑い 8

 サエは子供の世話でまったく相手にしてくれない。それに飲み屋に行っても本人とは知らず妹を孕ませた噂が飛び交っている。ここまで悪者にされては飲んでいても気分が悪い。夜中に妹の体を縄で縛って入れたと言う話がまことしやかに伝えられている。そこまで勝手に話をでっち上げるなと暖簾を出る。
「ホテルで飲まない?」
 流し目の女アヤだ。腕を抱えてそのまま路地の奥のホテルに入る。今日は思いっきり抱きたい気持だ。
「SM顔負けの噂で持ちきりよ。考えただけでおつゆが湧いてきそう」
 鮮やかに素っ裸になって酒を手渡す。
「針で入院してたのじゃないのか?」
「先生が言ってたのね?後は少し残っているけど腫れは引いた。私って撮影でも本気になってしまうの。相手もその気で太いので背中を縫われて」
「痛くないのか?」
「痛い時がいいのよ」
と言いながら抱き合うようにして中に入れる。
「あんた何かしたの?」
「どうして?」
「知り合いの刑事があんたのスーツ着た写真を見せた。何度か逮捕された仲だから気安いの。何度も抱かせてあげたしね」
「まさか言わなかっただろうな?」
「男を売らないよ。どうも東京の大きな事件の証人だって言ってたよ」
 もう体を激しく揺すり出して話にならない。









 

戸惑い 7

 その夜カラオケが済んでからママ連の飲み会に若頭の代理で出席させられた。ママは上機嫌で帰りに他のママにみせるように濃厚なキッスをした。公認でなければ殺されるところだ。帰りの若頭からまた貸付の封筒を預かっている。
「あんた評判悪いよ」
 書類を見ている横で姉さんがちょっかいを入れてくる。余程サエを取られたことが悔しいらしい。とは言ってもサエが男だと言うことはできない。彼女も黙っておれない性分なのだ。
「まあ、サエと同じ部屋でいたらわしでも差し込むわ」
と親分は笑っている。
「若頭の貸付はどうや?」
「どうもITMファイナンスの不良債権でしょうね。道頓堀の一角ですね。金額は3億。これも半年です。どうも隣の雑居ビルが上がらないらしいです。調査をして稟議を早急に上げます」
「どうもメインバンクは早急に債権額を下げたいようやのう。伊藤の案件はやくざ絡みやから素人では無理や。しばらく若頭と付き合うのはええようやな。そやけどやくざに借りだけは作ったらあかんで」
 そう言うとステッキをついて病院に出かける。
「親分病院から帰り道にまたカラオケバーに行ってるみたいや」
「酒はだめ言われてるのじゃなかった?」
「だめよね」
「いい女が入った?」
「番頭が時々来てるみたいやの」
「また番頭か」







戸惑い 6

 サエが子供を産んだという噂は町中に広がっている。この発生元は約束していたやぶ医者のものようだ。腹痛と飛び込んできたサエがその日からつわりを起こして翌日出産。どうもやぶ医者が隣の兄ちゃんに故意に話したようだ。この町は噂に尾ひれがつくことこの上ない。兄が寝ている妹を犯したと異母兄妹も故意に飛ばされている。私はちょっとした犯罪者のように白目で見られている。
 今日は姉さんに散々嫌味を言われて、痛風で病院に行っている親分を置いて、地上げの短期貸付の抹消手続きに昼から信組の応接室に到着した。
「思ったより早かったですね?」
「ああ、ITMファイナンスの影響や。短期資金が底ついてきてる。売り手も妙に心配して粘らんようになってると言う話だ」
 スーツ姿でも派手な赤いネクタイの若頭が笑う。取引が終わって司法書士は法務局に出て行き、銀行員は返済の処理をしている。部屋には不動産子会社の社長だけである。
「伊藤はどうなるんですかねえ?」
「これは噂やが関東やくざに沈められたという噂だ」
「そんなことってあるんですか?」
「よくあるさ。俺だっていつ鉄砲玉に狙われるか。伊藤のように派手にやったら消えるしかないわ。しゃべると困る人が仰山いてる」
と言って携帯を取る。
「これからカラオケに行くから車を回せ」
と言って切ってから、
「ママあんたに気があるみたいや。今夜は付き合ってやってな」







戸惑い 5

 夕食を済ませてサエをベットに誘ったが拒まれた。
「今日の記念すべき日にやりたくないわ」
 その一言である。サエは子供を抱いてベットでミルクをやっている。
 その時フロントから電話が入っていると知らせてきた。
「おめでとう。お父さんね」
 カオルの声だ。
「替わろうか?」
「いえ、サエとはよく話をしているから。とうとう昨日私も任意で地検に呼ばれたわ。伊藤との係わりと頭取の係りを聞かれた。これは頭取とも話の筋を合わせていたわ。ここにはほとんど大きな嘘はないわ。頭取にも聞いているらしく頷いていた」
「第2課長の件は?」
「殺された彼は警察が調べているらしく検察は修司のことを盛んに聞いてたよ。銀行は無届欠勤で解雇になっている。どうも頭取と私の関係も知っているようだわ。これは伊藤がしゃべっていたらしいけど証拠はないわ。それよりあのマンションが調べられたよ」
「パソコンは?」
「3日前に全面改装して募集を始めた。もちろんこれはマネージャーに動いてもらった」
「伊藤は?」
「あれから会っていない。どちらにしても大阪の店に行くわ。今日はこれからお楽しみね?」
「それが母親になってしまったよ」
「へえ、子供ができると変わるんだ。今日は淋しくマスターベーションやねえ」







戸惑い 4

 やぶ医者の協力を得てサエと博多に出かけることにした。親分にはサエの急病で付添すると申し入れをした。それで二人での初めての旅となった。新幹線で並んで弁当を食べてあかちゃんの話が尽きない。まるで自分で子供を産むようだ。ここ2日夜なべして肌着を縫ったりおしめを作ったり、フミコにはすでに子供を産むと打ち明けたらしく、昨晩にはミルクなどが運ばれてきた。
 博多に着くとタクシーに乗って警察ではなく病院に向かう。どうやら犯人は挙がって警察の手は離れたようだ。サエが何度も病院と話を続けている。病院に入ると手続きを済ませて思わず簡単にあかちゃんが籠に入れられて引き渡しを受ける。
「これが亡くなった人の鞄です。中は警察が調べてすべて戻されています。ここにイサムさんへの手紙も入れておきました」
 サエが手紙とカラオケバーでみんなで撮った写真を見ている。
「これはいつか娘が大きくなった時に渡します」
「いいのか?」
「本当の親を知らないのは不幸です。これから無縁墓地にお参りします」
 今日のサエは別人のようにしっかりしている。
「どうも尻にひかれそうだな」
「母になるんですから」
「父になるのか」
 まだ実感がわかない。
「今日はカオルさんが博多のホテルを取ってくれています」
「カオルにはもう話したのか?」
「お姉さんだから。喜んでくれていたわ。しばらく東京を離れられないと言ってたけど」







戸惑い 3

 始めてやぶ医者を飲みに誘った。もうすでにこの小料理屋では二人とも常連に数えられている。
「どこかに行っていたのか?」
 やぶ医者が最近は明るくなったように思う。
「あの女は相変わらず出たり入ったりですか?」
「ああ、最近は針のプレーでばい菌が入ってう~んう~ん言ってた。君のことを心配してたぞ」
「それよりサエは2週間に1度先生のところでホルモン剤を打ってもらっていたのですね?」
「男と女の関係になったわけか」
 やはりやぶ医者だけはサエが男であることを知っていた。
「カノンが殺されたことは?」
「うちに来る情報通から聞いた。赤ん坊を生んで死んだようだな」
「それがその赤ん坊が私の子供のようなのです」
「厄介なことだあ。今日はその話があったんやなあ」
 美味しそうにコップ酒を飲みながら、
「そういやサエは子供が生みたいと行ってたな。医学的にはそれは無理だと言っておいたが」
「引き取ると言ってるのです」
「サエならそう言うだろうな」
「引き取ったら力貸してもらえますか?」
「異母兄妹が子供を産むか。えらい話題になるぞ」
 笑いながらビールを注いでくれる。
「そのお返しは覚悟しておけよ。サエは子供産んだら最強のいい女だわ。大切にせい」






戸惑い 2

「迷惑をかけてすいません」 
ソファに座っている親分に頭を下げる。いつの間にか姉さんとも普通に会話を交わしている。
「ねえ、あのカノンが殺されたと聞いている?」
 姉さんが興味半分に大衆誌を買っていてみせる。驚いた風をしてページを開く。親分はステッキで歩けるまでになったので公園に人夫出しに出かける。私の机に休んでいる間に新規で貸付したのと完済したもののファイルが積み上げられている。
「そこにここのカラオケバーのことが書いてあるの。出産した子供はその店の常連だったそうよ」
 イサムの名前はさすがに出ていない。
「カノン結構際どいことしてたけど、本番はしてなかったと思うけど。私も2度ホテルに誘ったけど私では子供できないものね」
「姉さんは男には興味がないからな」
 何の気なしのページを繰っていたら、地元の博多の中州に『白薔薇』が来ると言う記事が出ていて、カオルの大写しの写真が出ている。購入予定のビルはITMファイナンスの不良物件で任意競売で手に入れたとある。これがマネージャーが言っていた店舗展開らしい。
「私男だめだけど、このママなら抱きたいわ。でもこういう男女はあれが細いって言うけど?」
 姉さんはこういう話になると際限がない。私は自分より立派なカオルのものを思い浮かべてしまっている。ここで口を滑らしたら。ふと思いついた。
「実はサエとやっちまって」
「異母兄妹って言ってたよね!」
「血は繋がっていない」
「イサムはとんでもない男よね」












戸惑い 1

 この時間だとサエはまだ店にいるだろうと、ちいママと別れてタクシーに乗った。大阪の店からだと20分ほどで着く。念のためにガラスの眼鏡をかけた。予想通りまだサエの店は赤々と電気が灯っている。今晩は朝まで抱きたい気分だ。覗き込もうとしたらフミコの顔とぶつかる。もうこちらの店に来ているのだ。
「フミコ頼む閉めて帰って」
 サエが腕を抱えるように路地の中に引っ張って馴染らしいバーに入る。
「どうしたんだ?」
「電話でカラオケバーのマスターに会うって言ってたよね」
 鞄から丸まった新聞を出して見せる。妊婦が追ってきた横浜のやくざに刺されたとある。妊婦は8時間後死亡したが赤ん坊は無事だったと書いてある。
「殺されたのはカノン」
 彼女は大阪から逃げる最後の夜に私が抱いた。記憶が蘇ってきた。
「カノンはカラオケバーの名刺を出してサエに伝えてと最後に言ったそうよ。この子はイサムの子だと」
 こんなことってあるのだろうか。たった一度の射精で。
 出されたビールをサエに注ぐ。次の言葉が出てこない。目を見るが怒りも泣きもしていない。
「いろいろ考えたよ。カノンとイサムの子なら可愛いだろうなって。私とイサムじゃ何万回やっても子供は生まれない。イサムの子はほしい」
「サエはどうするんだ?」
「おばちゃんでいいかなって」
「駄目だ。それなら夫婦になるべきだ」
「腹違いの兄妹が夫婦はだめだよ。それに私は男よ」
「それももともと作り話だ」
「引き取る。そこからスタートよ」






鏡の向こう 11

 翌朝目覚めると全裸のカオルが死んだように寝ている。ゆっくり唇を吸うと、
「今日は残念だけどこれだけ」
と言って食事を済ませると、女装にかかった。
「午後一番の便で大阪に行く。頭取の予想よりも検察が早く動いた」
「検察?」
「そうらしい。今朝任意で頭取が検察に呼ばれた。ITMファイナンスに対する不正貸付の容疑だそうよ」
「伊藤が吐いた?」
「いえ。伊藤はまだ監禁されているから無理ね。警察は修司の後釜の第2課長が殺されたとみている。それで家宅捜査をしたら押し入れの鞄の中から1000万の札束が出てきた。その封筒に伊藤とメモがあったようなの」
「詳しいな?」
「現場も情報網があるらしいわ」
「頭取は後任の課長には総理は紹介していないと言ってる。ここから何かが出てくることはないだろうと言っていたわ」
 話しながらどんどん器用に化粧していく。
「私もいずれ呼ばれるそうよ」
「頭取は今修司が記憶を失っていることが天佑だと言ってた」
「消えてなくなればみんなにとっていいのだなあ」
「私はいつでも会いに行く。今日は念のためちいママと一緒に帰ってもらう。個室で彼女としてはだめよ。彼女他人の化粧は苦手だから」




鏡の向こう 10

 サエに電話を入れてよいといことになり、マネージャーが外していた回線を繋ぐ。
「今日はママは?」
「大阪の店に新しい女の子を連れて行ってます。こちらの店で1か月ほど教育して送っているのです」
「体は?」
「ママは社長です。大阪の次の店舗を考えておられます。私達の働く場所を作るのが夢なのです。私の果たせなかった夢でもあるのです」
「それで夢を選んだというわけだ」
 それにはマネージャーは返事をせず部屋を出ていく。今頃はサエは店に着いた頃だろう。
「・・・」
 しばらく呼び出しているが出てこない。それで切ろうとしたらサエの声がした。
「すいません」
「サエか?」
「イサムね?」
「頭取とは話が付いた。もうすぐ帰れる。記憶は戻らない」
「店の方に巡査が回ってきてイサムのスーツ姿の写真を見せて行ったわ」
「何か言っていたか?」
「尋ね人としか。ボンの店にも来たと言っていた。それで朝ボンが週刊誌を届けてくれた。少し読んでみるね。ITMファイナンス事件は伊藤の解任で終わらない。メインバンクの頭取とも深く関与しているとみていて、行方不明の第2課長が事情を知ってると・・・」
「今度は警察か。カオルが言うようにしばらくはまた変装だな」
「それと今晩前のカラオケバーのマスターに呼ばれているの」
「それも?」
「どうもまた違う話のようなの」









鏡の向こう 9

「スカートを下げて」
 仰向けになったカオルが苦しそうに言う。私はマネージャが用意してくれた湯に浮かべたガーゼと塗り薬をベットに置く。スカートを下げると真っ赤に染まったパンティーに指が止まる。
「頭取は懲罰の気持ちか興奮の為か、何もかもを無理矢理入れるの」
 湯をしませたガーゼで丁寧に血を拭う。
「今まではプレイで切れたらマネージャーが治療をしてくれた。でも今日はブランディの瓶を入れられて、流石に興奮どころではなかった。かなり怒り心頭なの。でも私の体と修司の隠したものには我慢せざるを得ないのよ。本当はそんなに悪い人ではないのよ。こちらの方が悪いって言っちゃ悪い」
 顔をしかめながら笑っている。
 アナルの周りに薬を擦りこむ。
「駄目そんな優しい治療では。我慢するからアナルを広げるの」
 血がにじみ出してくる。カオルは自分の指で思い切りアナルを広げている。それから息むと鮮血して腫れた大腸が盛り上がる。
「そこに丁寧に刷り込んで。そうしないとしばらく使えなくなるもの。後2日か3日でサエに帰してあげるから。でも帰るまでにはもう一度したいわ。私って変態ね。もう少し中まで塗って。なんだか痛いの忘れそうよ」
 そういうカオルの泣き笑いの顔が可愛い。
「昔ね。修司に大腸を舐めてもらったことがあるの。覚えてないね。男の女は体中で愛を感じないとダメなのよね。でも今日はおとなしく横で寝ているから」






鏡の向こう 8

 翌日遅くなってもカオルは帰って来た様子はない。夕食はあのちいママが運んできてくれた。マネージャーが夕方出かけたという。仕方なく食事をしながらUSBの見過ごしたの部分を見てゆく。
 総理のNとは伊藤は面識がないようだ。この日記を見るとTと初めて国会議事堂の中で会っている。これからの繋ぎは私がやるという顔見世だった。Nにはいつも私設秘書がいた。でも彼と単独で会った記録はない。Nが紹介された頃、彼はまだ総理ではなかった。月に1度くらいの割に鞄を持って国会議事堂を訪ねている。これにはTは同席していない。会った日付に●の印が付いている。これが2つの時もあれば3つの時もある。●は1千万を表すのだろうか。そして党首選の3か月前、◎の印があった。この金はどこから用意されていたのだろうか。
 Nが総理になった夏、Tの指示でNを迎えに行ってKの店に連れて行った。この日は私設秘書が同席していなかった。N一人?とメモがある。この頃はすでに私はカオルとはできていてすでに新宿のマンションにカオルが頻繁に遊びに来ていた。決して店では遊ばない。カオルの部屋にはTがよく泊まりに来ていたのだ。
 やはりその日のことを記録している。私は店でお茶を飲んで待っていた。どうせショーが終わればNを送らなければならない。だが店を見渡してもNの姿もKの姿もなかった。
「明日9時に迎えに行け」
と言う短いTの不快そうな指示が入った。その日があのビデオをが撮られた夜だったのだ。
 急にドアが開いて、ちいママに背負われたカオルとマネージャが入ってきた。さっそくカオルはベットに寝かされて顔をしかめている。
「私が」
とマネージャが言うのをカオルが遮った。
「修司のしてほしい。戦った私を慰めて」







鏡の向こう 7

「頭取は帰ってきてるわ」
 ガレージに車を入れてそのまま応接に入る。年配の家政婦が待っていたようにお茶を運んでくる。
「ここは待合室のような部屋よ。ビデオも盗聴もされている」
 1時間ほど待たされてあのサングラスの男が迎えに来る。カオルと並んで2階に上る。一番奥の部屋の前で声をかける。中から頷く声がする。部屋が開けられて書斎の椅子にカオルに鞭を振っていた男の顔がある。
「新堂君だな」
「・・・」
「記憶を失ったらしいな?」
「ええ」
「カオルからも聞いたと思うが、確かに私はガス栓をひねるように指示した。だがカオルが逃がした。初めは伊藤と3人して裏切ったと思った。カオルに言われて君を連絡係にしたのも不味かった」
 カオルが頭取に勧めたのだ。
「二人の関係は伊藤に言われて知った。それでカオルも始末しようとも考えた」
 カオルは無表情に頭取を見ている。
「だがカオルの体に溺れてしまっている。カオルは君を生かすことで私に抱かられる約束をした。それはそれで飲もうと思っている。ただ私一人のことでは済まない事態になっている。その話を今までしてきた。それで提案だが君が持って逃げたものを返してもらえないだろうかね?」
「残念ですがその記憶もありません」
「ないものは返せないか」
 どういう結論を出したのだろうか。
「もしその証拠が現れたら必ず私は君たちだけでなくサエという恋人も殺す。今日はカオルを置いて帰りなさい」










鏡の向こう 6

「彼女ばれたと言っていたよ」
 車に乗り込むと隣のカオルが笑っている。今日は運転手は年配のマネージャーだ。
「彼女ちいママなの。まだ22歳だけれどやり手よ。小さいと言われてしょげていた。サエと同じくらいかな。サエは20歳というけど、まだ18歳にもなってないと思う。寂しい?」
「電話を止められているからな」
「頭取と話がまとまるまで今の情報を流されたくないから辛抱してね」
 部屋の電話の線が外されている。
「昨日は?」
「久しぶりに頭取と寝た。あれから私の部屋には泊まらない。いつも鎌倉の別荘まで行くの。用心深くなっているわ」
「伊藤は?」
「やはり修司から証拠を貰ったというのは嘘ね」
「どうなる?」
「それは頭取と関東の親分が決める。今日は私達が着くまでにある人と会っている。別荘が近くにあるの」
「それはNか?」
「USBをかなり見たようね。そうNです。まだマスコミは頭取とNの関係までたどり着いていない。その前に手を打つ気よ」
「まさか罠に?」
「修司を罠にはめるならこんなに苦労しないよ」
「ママは真剣です」
 バックミラーにマネージャーの厳しい目が映っている。







鏡の向こう 5

 その日私は一人車で帰された。何のための演技だったのか理解が出来ない。部屋に戻ると時間が知らされていたのかテーブルに早い夕食の準備が出来ていた。ビールの小瓶を抜いて夕食を摘まみながらパソコンを開く。ふと指を止める。これは私の覚書のような日誌らしい。第2課長になってから記録が始まっている。すべてイニシャルで記入されている。カオルはKだ。伊藤はIだ。それから頻繁に出てくるのはTの頭取だ。
 最初はTからIを紹介されている。頭取になるまでは伊藤が一番の部下のようだった。伊藤から半年ほど細かい引継ぎをされている。結構頻繁に伊藤に連れられてあちこちの店に飲みに出かけている。
「面白い女を紹介してやる」
と言われて初めてKの店に来ている。私は想像で頭取の連絡係でカオルに会ったと思っていたが、実は頭取にKを紹介されたことはなかった。
「俺の元カノ今は頭取の彼女だよ。ただ俺より立派なものを持っているさ」
 余程印象に残っていたのかその時の言葉を書いたようだ。忠実に記録するタイプだったのか。それから私は頭取に隠れてこの店で飲んでいたようだ。Kに睡眠薬を入れられたとある。どうもカオルからちょっとした遊び感覚で仕掛けられたようだ。それが互いに舞い上がってしまった。
 それからNがTから紹介されている。Nとは誰だろう。
 いつの間にか瓶が5本も空いてしまっている。ベットルームに移ってすぐ睡魔に襲われた。真っ暗な部屋の中にドアの開く音がした。食事を下げに来たのだろうとまた目を瞑る。次の瞬間パジャマのズボンを下げらっれて口に含まれている。
「戻って来たのか?」
と言いながらカオルのものを含む。
「細い!」
「やっぱりだめか!」







鏡の向こう 4

 朝起きると全裸のカオルが胸の中で眠っている。
「2年ほどこうして私は修司の胸で寝ていた。いつまでもこんな関係が続くと思っていたけど、二兎追うものは一兎も得ずだったのにね」
「それは?」
「修司は頭取の下で出世を考えていた。私はお金儲け。でもほら私のものも修司のものもビンビン。今日はこれから店が始まるまでに行くところがあるから駄目よ」
「また化粧するのか?」
「今日はいい」
 ガラスの眼鏡をかけて毛糸の帽子を被って車に乗る。今日の運転手は坊主頭のやくざの男だ。
「しばらく目隠ししてください」
と言われて1時間ほど車は走ってシャッターの中に吸い込まれる。
「ここから中を見てください」
 部屋の中の壁にある鏡を覗く。そこには疲れ切った伊藤の姿があった。彼の前にあのサングラスの男が座っている。
「伊藤は捕まってずっとここにいる。彼がどこまで情報を持っているか。証拠を誰かに預けていないかを調べている」
 カオルが説明する。
「でも進んでいない」
「これも頭取の指示?」
「そうなるかしら」
「何すれば?」
「伊藤と同じように手錠をはめられてドアを開けて顔を見せてほしいの。一言も言わなくていい。その眼鏡を掛けてくれていいわ」
 ゆっくりドアが開く。伊藤が驚いて目を剥く。















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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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