空白 2019年01月
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登場 3

 『白薔薇』のママから裏切られてあのやくざが現れたら諦めることにした。それだけ彼女の登場がインパクトがあった。それから急に寝ているサエを起こして抱くようになった。何か記憶が蘇るのが恐ろしかった。
 久しぶりに新聞記者から前の小料理屋で会いたいと連絡があった.
「伊藤は不起訴になりましたよ」
 ビールを一息であおると、記者は残念そうに話しだす。
「もちろん不良貸し付けについては捜査はまだ続きます。だがメインバンクの調査が中止されたのです。どうも頭取の指示だという噂が流れています」
「『白薔薇』のママは何者ですか?」
「前も言ったように元々は伊藤の女と言われていますが、途中から頭取の女のなったように思います。表向きは30歳と言われていますが、伊藤の店に出た頃は18歳と記録には出ているので、そこから逆算すると27歳になるのですが、それよりまだ2つ3つ若いと」
 彼は鞄の中から店に出た頃の写真を出してみせる。
「今彼女はどちらについているのですか?」
「頭取です。これはまだ公表していないのですが、頭取と彼女の繋ぎは第2課長のあなたがしていたのです。彼女は店の最上階のマンションに住んでいます。どうもそこに頭取が来ていたようです。頭取が来るときは必ず店にあなたが現れたそうです」
 記者はかなり調べてきているようだ。
「彼女はあなたの失踪から関東のやくざとは別にプロの探偵にあなたを探させていたようです。これは最近分かりました。これは私の勝手な推測ですが、伊藤はあるもので頭取を脅していたようです。あるものは分かりません。頭取は確かに弱みを持っていたのでかなり彼の言いなりになっていたようです。それがあなたの手元にあると双方思っています」
「それは何ですか?」
「分かりません。だから近々に私は『白薔薇』のママと会うように思うのです」
 実は偶然にすでに会ってしまっていた。
















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登場 2

 親分を事務所まで送って戻ってくると、先程の年配の男が後ろから紙切れを渡す。なぜか体が吸い寄せられるように後ろのタクシーに乗り込んでしまっている。無言のまま20分ほど走ってホテルの中の入ってゆく。部屋の前で送るとチャイムだけ鳴らして下がっていく。
 ドアは鍵が外されている。ベットに足を組んで座っている。
「やはり大阪にいるというのは本当だっだのね」
「記憶がない」
「関東のやくざに車ではねられたようね。でも罠かもしれない」
 と言うなり立ち上がってじろじろと私を見る。彼女は素早く私のズボンを下げて口に含んでいる。見る見る大きくなった私のものを喉まで銜え込んでは絞り出すようにしゃぶる。この快感は体の記憶に残っている。サエの口に出すと同じ感覚が走る。ママは立ち上がると口からこぼれてくる白濁の液を飲み込んだ。
「修司ね。あなたの精液は昔から変わらないわ。でも本当に何も覚えてないの?」
「ああ」
「あなたは私からも逃げた。いえ、誰からも逃げた。と言っても分からないでしょうね。でもあの時だったら私もそうしたと思う」
「今伊藤に狙われている」
「始めは伊藤があなたを抱き込もうとした。で頭取が慌てて私を使ってあなたを軟禁した。確かにその時の頭取には殺意があったわ。でもさらに私が軟禁場所を変えた」
「理解できない」
「そうでしょうね。しばらく時間ちょうだい。話をしてみる」
「誰と?」
「頭取よ。彼はもう前の彼ではないわ。腹をくくっている。心配ならまた逃げてもいい」
「いや、もう逃げたくない」










登場 1

 私が番頭の貸し付けを放棄を宣言してから姉さんは口もきいてくれない。これもやも得ないと今日は親分とラブホテルの売買に立ち会う。
 すでにラブホテルは休業していて、取引はホテルの会議室で行う。私は前日から担保の抹消書類を用意して親分に付き添って会議室に入る。すでにラブホテルの社長も来ていて手を上げる。相手側はまだ司法書士が来ているだけで『白薔薇』のママの姿は見えない。おそらく取引の場にまで出て来ないだろうと期待はしていない。私は最近は髭も剃って黒縁のガラスメガネをかけている。
 ドアがゆっくり開いて年配の男の後ろから地味なスーツ姿の女性が入ってくる。
「やっぱり来てくれはったんやなあ」
 ラブホテルの社長が立ち上げって握手をする。
「握手が条件の取引なんて始めてです」
 どうも彼女が『白薔薇』のママだ。彼女は握手を済ませると年配の男に合図する。私も封筒から抹消書類を取り出す。
その時突き刺さるような向けられらのを感じた。テーブルに札束が積み上げられる。親分が頷くのを見て勘定を始める。
「銀行員の手つきですね?」
 ママがふいに口を開いた。
「いやか街金ですわ」
と親分が答える。
 取引はあっという間に終わって『白薔薇』のママは即座に姿を消す。
「いや、あれがちんぽのついた男か。20歳代後半の可憐な女だよな」
「また悪い虫が出てきたんやろ?」







流れる 5

 姉さんが番頭を解雇すると言ったが、親分がなぜか首を縦に振らない。仕方なく二人の間に入ってなだめ役を買って出て、結局番頭を追い出したという女房の調査を引き受ける。
 古い貸し付けの書類を見たが、あのスナックの借主は番頭になっていて女房は保証人でもない。立ち退きを求めても回収額はほとんどない。番頭はほとんど金をすべて女房に渡していたようで資産も貯金もない。とは言え貸金業者が指をくわえている訳にはいかない。どうもスナックの2階には新しい男が住んでいるようだった。
「親分」
 事務所に帰ってきて帰り支度をしている親分に声をかける。
「回収は見込みないですが、スナックの追い出しはしますか?」
「そやろなあ。これは娘には内緒やで。あのママはな、昔ミナミでグラブにいたんや。昔は女遊びをして彼奴のおかあちゃん泣かせてたんや。あの女に店持たせたんはわいや。番頭は身代わりになってなあ」
「姉さんはご存じで?」
「知らん。あの頃は女同士で駆け落ちしてた。それがあの女が金を引き出そうとして番頭に抱かれたんや。吸い付くようなワレメってあれを言ううんや。それに気づくのが遅かった。それで番頭にあの女を押し付けるようになった。実はあの女がわしの女房のところまで押しかけて来たわ。それで番頭に一緒になるのを許したんや。情けない話や」
「姉さんには回収不能と私が判断したことにします」
「悪いなあ」
「いえ、私は親分に拾ってもろたと思ってます」
「いや、イサムを拾ったのはサエやで。大事にせなあかん。わしがもう少し若かったら手出しとったやろうな。孫娘の様なサエにな」










 

流れる 4

 ドアを開けると入口にうさん臭そうな男が座っている。
「そこの班場のものやが、番頭が来てると聞いているんやが?」
「ああ、あの番頭か?隣のアパートにしけこんでいるわ。覗くなら勝手にな。1階の一番奥や。アベックで見るには刺激的やで。その気になったら隣の部屋は1時間800円や」
 どうも売春宿でもあるようだ。にたにたと笑って送り出す。飯屋にはすでに5人ほどの人夫が女と飲んでいる。細い通路が隣のアパートに繋がっている。一番奥の部屋もドアはかかっていない。姉さんがそっとドアを押す。
 まさに裸の尻に男が圧し掛かっている。
「番頭さん?」
 さすがに姉さんが声をかける。番頭の顔がこちらを向く。その間から裸の40歳過ぎの女の気怠い目が覗く。
「もう我慢ならん首や」
「ああ、もう何も未練はない。好きにしてくれや」
 頬のこけた番頭がまだいきり立ったものを元のさやに戻そうとする。
「あかんで、このおっさんには借金が200万も残ってるわ」
 毛布を巻いた女が口を突き出して言う。連絡したのか強面のデブが入り口を塞ぐ。
「ここは代紋かかってる店や。そうですかと帰すわけにいかんな」
「こちらも金を取らんと帰れんわ」
 姉さんの言うのを押さえて貰っていたお守りの若頭の名刺を出す。
「携帯かけてもろても構いませんで。こちらの仕事せ寄せてもろたから」









流れる 3

 久しぶりに朝方までサエを抱いた。今日はやたらとサエが求めてくる。
「サエを抱いたな」
 姉さんがうとうとしている私を見て言う。
「でも仕方ないな。あんな可愛い子と同じ部屋で寝ていてやらないなんて病気だものね?でも一度だけ私に抱かせてくれないかな。私だったら子供できないから安心よ」
と本気の眼で言うのを聞きながら、空港の近くの班場に車で乗り付ける。
「番頭は?」
「今日もずる休みですわ」
 年配の現場監督がプレハブの事務所に案内する。欠けた湯呑にお茶を入れてくれる。
「休みは家に帰ってないの?」
「追い出された話してましたで。それからここ毎日あそこの飯屋のおばはんところに転がり込んでいますわ」
 私がロッカーの中の帳簿を見ていく。前貸し用の手元資金が使い込まれてだけではなく、賃金の中抜きもしているようだ。
「これは酷いですよ」
「番頭に会いましょう。今からでもその飯屋開いている?」
「気いつけた方がええでっせ。夜は2階で賭場開ているからなあ」
「イサム髭残してた方が迫力あったのにねえ」
 殴り合いになったらきっと姉さんの方が強いだろう。
「わしが適当な頃若いのん連れて覗きますわ」
 そう言われて薄暗くなった外に出る。細い道が続いていてちょっとした工事関係者の飲み屋街ができている。二階建ての木造が見えて、漁師町らしくなくバーというネオンが点いている。








流れる 2

 女将に夜そちらによると伝言をしておいた。
 書類整理をして一人事務所を後にする。ボンにどう切り出すか決まらない。どうやらサエはフミコと夜ラブホテルに泊まったようだ。風呂に入って腕を切ったようだ。
「久ぶりだね」
 先にボンが座っていてビールを飲んでいる。
「フミコとはどうする気だ?」
「親父にはいくら言ってもだめだと思うんだ。でも結婚する」
「サエがなあ、昨日病院についていったんだ」
「サエに子供ができた?」
「いや、フミコにだ」
「そんなに早く?」
「ボンのじゃない。父親のだ」
 言った私が一瞬凍りついた。冷蔵棚のガラスに映っているボンの顔を見ている。表情が読めない。フミコは父親に何度も襲われて逃げてきた。充分可能性はあったのだ。だがまさかそう現実に出くわすとは思ってもいなかった。
「育てる」
「いいのか?」
 大きく頷くボンの顔を正面から見た。
「今のことを彼女の前でも言うんだ」
 そう言って手を引っ張るように通りを走る。だが途中でボンが追い越してやぶ医者の階段を上がる。そこには肩を抱いているサエと俯いているフミコがいた。ボンは動物の様な雄たけびをあげてフミコの唇に吸い付く。サエがそっと腕を引っ張って階段を降りる。
「今日はホテルに泊まる?」
「いいのか?」
「我慢できないよ」


















流れる 1

 今日は親分が退院してくる。
 どうもサエの動きがおかしい。朝顔を合わせても視線を避ける。だが彼女が話してくるまで待つつもりだ。
「体はどうですか?」
 親分は姉さんに支えられて出てきてからソファーに掛けたままだ。姉さんは朝の人夫出しを終えたら戻ってくる。
「痛みは治まったが一人でまだ歩けんわ。とくに変わったことはなかったか?」
「ええ、少し番頭さんの小料理屋が気になりますが」
「支払いが止まったのか?」
「いえ。支払いは止まってないのですが、変な男が居座っているようです」
 これは姉さんも見てきたようだ。それで近々に番頭に会ってくると姉さんは言っている。
 その姉さんが戻ってきて私の横に並んでかける。小声で
「サエが来てるよ。まさか孕ませたのと違う?」
と言う。慌てて外に出る。青白い顔で立っている。
「店は?」
「友達に見てもうてる。ちょっとついててきて」
 どんどんと一人で歩いていく。もしサエが孕んだら祝福しようそんなことを考えている。サエはやぶ医者の2階に上っていく。なんとそこにはボンの彼女のフミコが腕に包帯を巻いて横になっている。
「昨日ホテルで腕を切ったんや」
「どうしたんや?」
「彼女子供ができたんや。でもボンとやったんはちょと前や。どうも今の父親の子やと思う。よく話したからもう自殺はないけど、ボンとの話を任せたいんや」
「そうか分かった」
と言ってみたものの気が重い。









背中が見える 9

 朝サエを抱こうと蒲団に潜り込んだが姿がない。どうも帰ってきた形跡がない。どうもサエは私の心の中にしっかり住み着いたようである。
 事務所に着くとホワイトのベンツが留まっている。呼び出しの話は聞いていない。事務所に声をかけて車に戻ると、ゆっくりと後部ドアが開く。
「朝から悪いな」
 若頭がコーヒーを手渡す。
「本部で京都駅裏の売買の承認が出た。日にちはやっさんと決めてくれ。今日来たのは伊藤が探しているものが分かったからだ」
「それは何です?」
「貸金庫のキーらしい。これは裏の繋がりのある関東の親分から聞いたので間違いない。今の時代はやくざも敵とのルートがないとダメなんだ。ただ伊藤をこれ以上のさばらせると関西の地盤が危うくなる。それだけ大きな金を動かしているわけだな」
「貸金庫の中身は?」
「S銀行の頭取を脅すものだろう」
 私は黒鞄の中のキーを思い出していた。やはり貸金庫だったのだ。S銀行の頭取の不利な証拠が入っているようだ。
「君が初代のS銀行の第2総務課長だとも聞いた。第2総務課長というのは頭取の独立した機関で、大規模案件や政治家対策をしていたそうだ。初めは伊藤が社外担当の時期もあったが、頭取は彼の危険性を見抜いて君を抜擢したのだそうだ。2代目課長は殺されたようだな。警察が秘密裏に内偵しているようだ。彼のことは覚えている?」
「いえ、まったく記憶はありません」
















背中が見える 8

 相変わらず年の瀬が迫ってきてサエは更に忙しくなって御前様になることが多くなった。事務所に記者から連絡が入って仕事帰りに一緒にやぶ医者と会った店に行くことにした。
 女将が顔を覚えてくれていてカウンターの端に席を作ってもらった。
「面白いことが分かりましたよ」
 彼は手帳を見ながら取り寄せたらしい集合写真のコピーを見せる。
「彼の所属は本店総務部2課長、4か月前から新任課長になっている。もともと同課の古参の主任だった。この課は頭取直属の仕事を担当している」
「秘書課?」
「いや秘書課は別にある。今の頭取になって作られたようだ。内部の話では何をしているのか分からないかだそうだ。頭取室の横にあり専用の応接の接客も担当ているようだ。もう一度写真を見てくれ」
「これは私か?」
「そうだ。君が初代2課長だよ。その後ろに立っているのが自殺した課長だ。初めはまさかと思ったよ」
 私が彼にビールを注ぐ。
「本社の記者はこれは自殺じゃないと言っている。現場の刑事の話では彼は3日前から無断欠勤をしていたというのだ。その3日の居場所が不明なのに本庁から自殺として発表された」
「新聞では夜間に車にはねられたと?」
「それもそちらの手口に似すぎている」
「これは大きな事件に糸口になるような予感がする。しばらく内緒にしてくれ」
 私がぼんやりと見た先にやぶ医者に視線が合った。






背中が見える 7

「なんか変な気がするわ」
 久しぶりに姉さんと集金に出かける。
「髭がないと様になりませんかね」
「なんかちょっと惚れそうな気がするんや。番頭のママの店ちょっと覗いて見たんやけど、ヤバイ感じがするのや。まだ貸し付けが650万残ってるので心配や」
「そやなあ。一度調べてみるか」
 二人で定食屋のカウンター越しに話しかける。
 棚の上の映りの悪いテレビを時々見上げる。
「銀行員の自殺みたいやね?」
「S銀行や」
 箸を止めてボールペンを取ってメモを取る。S銀行本店総務課長・・・。丸の内の本社ビルが映る。ここも記憶がある。店の電話を借りてやっさんに電話を入れる。
「S銀行の本店の課長の自殺テレビで見たんやが、あの記者に詳しく調べてほしいと伝えてや」
「何か関連があるのか?」
「分からんが、引っかかるものがある」
「そうそう、ついでだがあのタクシー会社から指値が出たぜ。今日若頭が本部に持って行った。ただ下手をすると関東と関西のやくざ戦争になると心配してた。伊藤に会ったらしいな?」
「ああ、ずいぶん焦っているように見えた」
 私を追いかけているのは伊藤に違いないその思いを強くした。








背中が見える 6

 夕方若頭から電話があり白のベンツで迎えが来た。本部のビルにあるステーキハウスだ。一番奥に個室がある。ここには親分と来た日も入ったが、この個室の壁に厨房から入れる細長い部屋がある。中に通されると黒づくめの男が2人イヤホンをはめて映像を見ている。無言でイヤホンを譲ってくれる。
 テーブルに若頭と金融会社の社長が座ってワインを手にしている。正面には伊藤と年配の男が座っている。
「京都のタクシー会社と接触しはったらしいですな?」
 派手なネクタイを締めた方が伊藤だ。
「あれは本部に頼まれた金融屋や。ただ話は聞いている」
「売られるならこちらが親分の手数料を用意しまっせ」
「京都でファイナンスされているそちらの社長は線引きはどう思われます?」
 若頭が私の言った線引きを言っている。
「うんなあ」
 Kファイナンスの社長も感じているようだ。
「でもここまで来たら行くしかないんや」
 伊藤が否定する。確かに追い詰められている。
「S銀行の頭取とはあまりよろしくないという噂やがのう?」
「自分の尻に火ついて来たら昔の恩も忘れよる」
「そんな恩売ってるのかいな?」
「頭取選の時、かなりやばい情報を流してやったし、女も譲った」
 苦い思い出でらしく顔が歪んでいる。『白薔薇』のママのことを言っているようだ。
「それにとっておきのネタを持っているんですわ。ただ・・・」





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背中が見える 5

 今朝酷い目にあった。カノンとの激しい交渉で蒲団に潜ると意識を失ってしまった。声を上げる余裕もなく蒲団に潜ってきたサエの頭突きをあごに受けた。髭を剃ってもらい頭も七三に分けて整髪したことを私自身忘れていたし、彼女はてっきり強姦魔に見えたようである。
 それで慌ててカノンから貰った髭面の写真を見せる。
「ごめん!その写真どこで手に入れた?」
「小頭に貰った」
「でも何だか別人に見える」
 私は念のためガラス入りの黒縁メガネを買った。
 下の喫茶店に入るとボンとフミコが並んで俯いて座っている。私の変化にもあまり反応がない。サエがフミコの耳元で何か囁いている。フミコの顔が真っ赤になっている。ボンが庇うようにフミコの肩を抱えて出ていく。
「何を言ったんだ?」
「イサムって鈍感ね。昨日ホテルに泊まったのよ。ボン、ホテルの仕組みを聞いていたもの。ボンのあれって大きいのよ。だから大きかったでしょ?って聞いたの」
「なぜサエにボンのあれが大きいと分かるんだ?」
「女将の店を辞める時、彼の部屋でフェラしてあげたの。でも口の中に入れて1分も持たなかった」
 無意識にサエの腕をつねっていた。
「嬉しい!妬いてくれた」
「今日は早く帰ってこいよ」
「急ぎの仕事があるの。事務所終わったら夕食を一緒にしましょう。でもそのメガネ賢く見えるよ」







背中が見える 4

 サエは最近は夜中になっても戻ってこない。急ぎの衣裳が持ち込まれたようで店を閉めてからミシンをかけているようだ。どういう訳か姉さんが詳しい。仕事が終わってボンのいるだろう喫茶店を覗いても見つからない。女将の店を覗くとボンの彼女のフミコと映画を見に行っているということだった。
 ジャンジャン横丁にも出てみようと信号を待っていると思い切りタクシーの中に引きこまれた。これはぶつけられた交差点だと慌てた。そのままタクシーがラブホテルの中に入っていく。
「カノンや」
 部屋に入って顔を見ると黒髪の女だ。そのまま服を脱ぎ捨ててズボンのチャックを下げる。
「汚いぞ!」
「この臭いがたまらんの」
「喉まで入っているで」
 顔が真っ赤だ。もがく声に白目をむいている。手を解こうにも離さない。イサムのものが勢いよく弾けた。
「凄い!溜まってたね。彼女してくれないのかしら?」
「どうした?」
「さっきまでホテルで撮影してたんだけどあんな男大嫌い。後でゆっくりやるね。ビールでも飲もうか?」
「吐きだせよ。不味くなるぞ」
「飲み干すの」
 どうもこの女といるとおかしくなる。2本目を空けるとカノンも落ち着いて来た。煙草を取り出してふかしている。
「そうそう、今日の組の男あんたの写真を持っていたよ」
と言って鞄から出す。
 今度のはマジックで写真に黒ひげが塗られている。








背中が見える 3

「着きましたで」
 白いベンツの後ろでやっさんと2人して眠りをしていた。若頭の運転手が声をかける。いつの間にかタクシー会社の本社の門をくぐっている。やっさんは少し上品な背広を着ている。私はいっちょらのスーツにワイシャツの襟を出してチンピラだ。やっさんは社長室に入ると若頭に貰ってきた少し名の通った不動産会社の部長の名刺を出す。若頭の名前で面会を取っている。
「隣の土地はそちらの組でしたんか?売ってくれと言いはってもあきまへんで」
 後ろに屈強な京都の組らしき男が立っている。
「そうやないんです。売りたいと思ってます」
 私が鞄から区画図を出す。
「いや許て言う人が何度も売ってくれと来られるもんで。そちらに持って行きはったら?」
「それは不味いらしいんですわ」
「まあそうですな。でもなんで売はるんでしゃろ?」
 やっさんが詰まってこちらを見る。
「道路に面してない土地ですから」
「その通りでんな。でも金のなる土地やという評判ですよ」
「いえ線引きの話はいつになるのか分かりません」
「そうですな。あんたどこかで会った顔してはるな?」
 私もそんな気がしていた。
「一度検討してみまっさ。指値でよろしおすな」









背中が見える 2

「やっぱりこの区画図面は何度も見たことがある」
 今日は一日中事務所の中に籠って姉さんと話し込んでいる。親分が持病の痛風が起きて昨夜入院した。朝病院から戻ってきた姉さんが親分からの伝言を伝えた。そろそろ姉さんが全般を見るようにと言うことだ。その補佐役を私に任せると言うことだった。
「人夫出しとビルと店舗管理と貸付で3等分ですね」
「人夫出しは私がやれるけどビルと店舗管理と貸付は苦手やよ。イサムが何とかしてよ」
「ええ、ビルと店舗管理は課長のカメさんがいいのではないかと思います。前の番頭が苛めていたのですがちょっとどんくさいですがきちっとしてます。全体は私が見ます。それよりあの番頭が気になりますよ」
「私も思てる。その横の地図なんやの?」
「これは京都の駅裏の地上げですよ。若頭に調べてくれと言われて見てるんですが記憶に残っているんです」
「それやったら知ってる。3年前やったかな」
と言ってごそごそ未決案件のファイルを探している。
「これや。兄貴がこの土地を買うてと持ってきたんや。3億でその細長い隣の部分の黄色の土地や」
 一斉にこの辺りの土地が買い占められ始めた時期だ。
「親分が現地に言ってやばいところやとダメだししたけど」
 週刊誌の切抜きが張ってある。
「その土地を含めて地元のタクシー会社が買い取ったと・・・。ここはS銀行がタクシーの駐車場で融資した・・・」
 口に出して読んでいてその時車からよたよたと歩いてくる野良犬を覚えている。
 それでやっさんの事務所に電話を入れて若頭に伝えてもらうように言伝を頼んだ。
「隣のタクシー会社に売るのがいいと」


 



背中が見える 1

 どうしたのか初めて病院から戻った夜に女を抱いている夢を見た。お尻を大きく突き出したら、そこにぽっかりと10円玉のような穴が開く。すらっとした足を抱えるようにしてそこに差し込む。最初ぎゅと締まるが後は吸い込まれるように入って行く。女が横顔を歪めるように振り向く。どうしたことかあの『白薔薇』のママの写真の顔だ。
 今日は退院を待ってたと言う若頭に呼ばれて、昼過ぎに金融会社の事務所へ白のベンツの迎えが来る。部屋に入るとすでにやっさんも来ている。
「大変やったなあ」
 鋭い目つきをしている。
「こいつはなあ。本家が手付けてる京都の駅裏の地上げ物件や。もう2年になるが20億が無駄金になっている。こちらも1億融通させられている。やっさんに調査させたがこちらの周りを許と言う男が買いまくっているようや」
「許の後ろは伊藤や」
 やっさんが地図を広げて見せる。どこかで何度も見た記憶がある。
「ITMファイナンスが35億、Kファイナンスが8億出している。完全に取り囲まれたようや」
「接道部分は?」
「ない。もともと前の話があって乗ったのやが、許に先を越された。持ってきたブローカーが繋がってなかった」
「この向こう端は誰が持っているのですか?」
 塞がれていない個所が1か所ある。
「やっさん至急調べてくれ」
「この書類コピー貰えませんか」
 どこか記憶に引っかかるものがある。やっさんはもう部屋を飛び出している。
「今調べているとこやが、あんたがS銀行にいたと言う東京の社長がいるんや」






新しい一歩 8

 翌朝、サエが新聞を買ってくる。
 昨日のミナミの発砲騒ぎが記事になっている。だが発砲した3人組は姿を消したらしく警察が捜査中とある。また撃たれたという人物も姿を消したとある。サエが傷口を押さえてタクシーで走ったのだ。事務所に休みを伝えるのと新聞記者の名刺を渡して簡単に昨日の話をしてここに来るように頼んだ。
 夕方やっさんと記者がやってきた。
「えらい目にあったな」
 やっさんも手に新聞を丸めて持っている。
「今朝チンピラが拳銃を持って自首して来ましたよ。関西のやくざと言うことですが、喧嘩と言うことになっています。だが屋台の親父に会って来たんですが、この写真の男を見つけたと連絡したようです。もちろん警察にはオフレコです」
 記者が髭のない私の写真を出す。
「若頭に聞いたんやが、この組は関東系や。関西系にはこの写真は回ってないそうや」
「これもあの屋台の親父に聞いたのですが、騒ぎに後サングラスの男が訪ねて来たそうです。しばらくミナミは鬼門ですよ。それとこれは頼まれていた『白薔薇』のママの写真です」
「ええ女やなあ」
「男ですよ」
 サエどことなく似ているが表情が冷たくて背が高そうだ。
「東京の記者に聞いてみたのですが、今はこのママと伊藤は男女の関係ではないようです。パトロンは分からないということです。それに伊藤は近々にITMファイナンスで背任になると噂で先にその記事を出すことになります。ただ大株主のS銀行がもう一つ乗り気ではないのです」






新しい一歩 7

「ボンやっとやったみたいよ」
「そんなのサエに報告するか?」
 飽きれてサエの背中に声をかける。今日は二人にとって初めての日曜日だが、ミナミに端切れの買い出しに駆り出された。物色に3時間ほどかかると言われて仕方なく街の中をうろつく。裏道を抜けていくと道頓堀の馬券売り場に出る。しばらくオッズを見ているがさほど興味がわかない。裏道の屋台に入ってビールを頼む。サエの入っている店から100メートルも離れていない。
 2本目を頼もうと親父を見るがトイレにでも行ったのか姿がない。隣の労務者が小銭を置いて席を立つ。私もそれにならって小銭を置いて暖簾を出る。路地を元来た道に歩き出す。
「おい!」
 後ろから3人組が羽交い絞めにしてさらに狭い路地に押し込む。
「金は置いてきたで」
「そんなんどうでもええ。顔見せえ!」
「兄貴、本人やろ?」
 兄貴が上着のポケットから写真を出す。
「賞金首や」
 その声に思い切りあの兄貴の体に頭をぶつけた。それから両手を振り回して路地に出る。一人が足に飛びついてくる。それを辛うじてかわすともう一人が飛び掛かって来るのにこちらから体を当てる。路地から出てきた兄貴とちらりと目が合う。ピストルを構えている。思い切り走りだす。バンと音がして体が宙に浮く。
 目が覚めるとまたやぶ医者のベットに寝ている。サエが涙を浮かべてこちらを見ている。
「ごめんや。連れまわしたから見つかってしもた」
「脇腹の端を貫通してる。もうちょっとずれてたら骨がバラバラや」
 やぶ医者が血の付いたガーゼを洗面器に入れる。












新しい一歩 6

 オープンの日の昼にサエの店を覗いてみた。狭い玄関の入り口に親分の花輪が出ていた。私はせめてもと思い観葉植物の鉢を買ってきた。サエは若いお人形のような服に身を固めた女性2人と話している。客が全く入っていなければどうしようと思っていたがほっとして店の中を見渡す。奥に新しく買ったミシンが置いてあって作業場を兼ねている。
「お客さんだから行くよ」
「違うの。前に言っていた兄貴よ」
「へえ、紹介してよ」
と笑いながら出て行く。
「飯は?」
「一人だからここで食べる。コーヒー入れるよ」
 そうしているとおしろいを塗った若い男衆が風呂敷を抱えて入ってくる。 
「サエちゃんおめでとう!今日は修繕が3着に、派手な着流しの新調を頼む。座長の好みで頼む」
「分かってるわ」
 なぜか別人のようである。男衆が封筒を出して渡す。サエはそのお金を数えてそばの空き缶に入れる。客が出て行ったので声をかける。
「レジは置かないのか?」
「大した出入りがないからこれで十分。今のは修繕だけで23000円。でも芝居小屋の得意先が4軒あるのは助かるわ」
 サンドイッチを食べているともう客が入ってくる。一度カラオケバーで見た顔だ。美人だがどこか男の匂いがする。そのまま後ろのカーテンの中の入る。仮縫いを知るようだ。
 私はコーヒーを開けるとそうそう出る。自分もしっかり働かなければ捨てられるという妙な気持ちになっている。
 









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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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