空白 2019年08月
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始まり 7

 今日は朝からサエは出かけている。どこに行くとも言っていない。彼女から貰ったこの町の地図を持って朝から歩き回る。サエのマンションの裏側には飛田の色町がある。声をかけられながら隅々まで歩くとカラーマジックを塗りつぶす。そこから通りに出て商店街の中を歩く。この先にやぶ医者の病院がある。そこに印を入れる。
「今日は一人?」
 背中から声がかかる。リヤカーを押しているボンだ。
「昼一緒にしてくれる?」
「ならついてきて」
 あの女将の店にビール箱を運び込んでカウンターに掛ける。
 女将が黙って私だけにビールを抜いてくれる。
「サエについて聞きたい」
「そんなに知ってることはないよ。話したがらない」
「10歳の時にボンが拾ったんだな?」
「そうや。あのやぶ医者の所に運んだ。凄く病院に行くのを嫌がった。どうも風邪だけではなかったようだった。しばらく歩けないであそこで寝ていた」
「やぶ医者から何か聞いた?」
「いや口が堅い」
「サエは幾つだ?」
「それも言わない。ただ年下だと思う」
「では私は?」
「30歳少し上かな?」
 女将がカウンターから魚の煮つけを渡しながら言う。
「でも彼女よく同じ部屋に泊めたね」
「イサムという名をくれた」
「恋人という歳じゃないから、きっと父親の名前かもね。これは女の感!」






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始まり 6

 カーテンの隙間から朝日が差し込む。サエは蒲団を抱きかかえるようにまだ眠っている。何時頃帰ってきたのか覚えていない。光があったところに目をやる。何やら壁に写真が何枚もピンで刺してある。大衆演劇の写真のようだ。優男が番傘を広げていて小ぶりの女が寄り添っている。
「それは1番目の父。隣にいるのが母よ。この時はうちは3歳」
「旅回りの役者だったんだね?」
「そういう記憶はあるね」
 サエは思い切りカーテンを開けて胡坐を組む。
「母は悪い女なの。と言うよりセックス魔だったわ。劇場ごとに男を作って、ついに1番目を置いて駆け落ち。それから7人も父ができた。その写真は最初の父。一番いい思い出がある」
「兄弟は?」
「もう子供はいらないと母は中絶していた。よっぽどを嫌っていたみたい」
「なぜ今独りで?」
「10歳の時に家出をしたの。その時に助けてくれたのがボン。イサムと同じようにあの高架下のトンネルで段ボールに包まっていた。風邪をひいて動けないうちをあのリヤカーでやぶ医者に運んでくれた。それからしばらくあの女将の店で住み込みの皿洗いをした」
「同じリヤカー仲間だな」
「でもないの。これもいずれ話すよ」
「謎多き女だね」
「下の喫茶店でモーニングを食べようよ。ボンも来ている」












始まり 5

「ここがうちの部屋や」
 ずいぶん通りを奥に入ってゆく。
「泊めてくれるのか?」
「ああ、これも行きがかりや。蒲団は旅館からもろて来た。辛抱しいや」
 卓袱台を挟んで蒲団が二つ並んでいる。
「言うとくけど、夜中に乗っかってくるようなまねしたら追い出すからね。それとトイレと風呂に入る時は絶対ノックすること」
 姉に言われたような妙な気持ちだ。どう見てもボンより若く見える。
「金はないよ」
「分かってる。ちゃんと控えてる。そのうちに仕事は私が見つけてきてやる。当分はこの瓶に入っている金を使っていいよ」
と言いながら鏡を見ながら化粧を始める。
 私はどんどん綺麗になって行く少女に見とれる。これなら20歳には見える。
「どこに勤めている?」
「カラオケバー。客と寝る奴もいるけど、うちを同じ目でみやんで。そうそう夕方の6時から11時までそこにいる。休みは交代で1週間に一度。ちょっとおっちゃんしばらく後ろ向いてえな」
 どうもここで着替えているようだ。
「おっちゃんと言うのもパッとしないな。こちらもお婆ん臭くなるわ。イサムと言うのはどうや?」
「名前も覚えてないからそれでいいけど。イサムって思いつき?」
「違うわ。でももっと親しくなったら話す」
 そう言って私の体を正面に戻す。
「別人だなあ」
 格子模様のオレンジのスカートに白い秋物のセーター。思ったより胸が出ている。ハンドバックから部屋の鍵を卓袱台に置く。







始まり 4

 少女はお構いなしに複雑な路地を抜けていく。添え木を当てられた左手を肩からぶら下げてよたよた追いかける。
「まずは昼飯」
と言って暖簾を潜る。
 50歳過ぎの女将が無言でビールを抜いてコップを2つカウンターに置く。少女は無造作におかずをガラス棚から持って来て並べる。
「どうや?頭に沁みるか?」
「いや、美味しい」
 暖簾から例の坊主頭が覗いてビール箱と日本酒を交互にカウンターに運び込む。
「ボン、退院したよ」
 無言でボンもカウンターに掛けて食事をする。
「ここはボンの親父の女の店よ。本妻は酒屋の番をしていて、女が3人飲み屋をしてる。ボンはここの女将さんが一番好きだ」
「ペラペラ喋るなよ」
「喋ったる。これでもボンは頭がいいんや。親父の手前あほの様な振りしとるがな。高校3年の夜間生や」
「なら君は?」
「こんなところで歳聞くな。20歳以上だろうが?」
「到底見えないな?」
「またゆっくり話をするわ」
 ビールの飲みっぷりは充分20歳以上だ。
「みんなサエと呼んでいる」
 サエかあ。








始まり 3

 寝すぎたせいか目が冴えて朝まで起きていた。
 それで布団に潜ったまま微妙に振動していた正体を見た。小柄な全身痣だらけの30歳前後に見える女だ。ここでは女男お構いなしに診察が始まる。後の二人はまだ眠っているようだ。
 浴衣を脱がされた女は全裸になって背中を向けている。白衣の背中が私の目の前に来て茶色の薬を塗り始める。
「傷口に熱を持っている。膿むと厄介だ。これで何回になる?」
「5度目です」
「いい加減にあの男と別れたら。このままでは体が持たんぞ」
「撮影が始まるともう気が行ってしまうのです」
「だが男は撮影が終わるとまた遊び回るのだろ?あの男にはそんな女が何人もいるらしいな。隣の兄ちゃんがあんたの写っている写真集を持ってきた」
 女は前に向き直って針の跡と充血した乳房を見せる。やぶ医者は慣れたように女をひっくり返すと尻の穴を覗きこみ治療を始める。
「相当ぶっ太いものを入れたな。完全に脱肛になっている」
 いつの間にか少女が階段を上がってきて、女の姿に全く無関心に私のベットの横に丸椅子を運んで来て座る。
「この街では背広は似合わない。古着だけと合いそうなのがあったので買ってきた。やぶ医者が気が付いたと知らせてきた。出て行けと言うことよ。もう歩けるのか?」
 背中に目があるようにやぶ医者が答える。
「記憶はないが歩けるさ」
「じゃあ今から出ていく」
「支払いは?」
「ツケで私が払う。歩けたらすぐに出ないと悪い病気をうつされるからな」
 どうも私は少女のテンポについていけない。








始まり 2

 長い眠りから覚めた。
 四人部屋の窓際のベットに寝かされている。汚れた窓ガラスの向こうに片隅だけ通天閣が見える。窓際に小さな瓶にコスモスが1本風に揺れている。その先にくたびれた白衣の背中が見える。
「その花は彼女が活けたよ」
 やぶ医者。そういう少女の声が耳元に残っている。
「もうここに来て丸3日になる。初めての目覚めだ。彼女は毎日ここに来て1時間ほど座って帰る。さっき帰ったところだ。夕暮れになると仕事に行くようだね」
「彼女は何をしているのですか?」
「それはじっくり君が聞くべきだな」
 隣ベットに黒髪の女が珍しそうに私を見つめている。
「それとこの病院には正式に患者を泊める施設がない。明らかに仮に預かっているだけだ。男も女もないさ。ここは行き倒れがいるか。喧嘩で担ぎ込まれたものか。梅毒のものか。それと君は寝たきりだったから、おしめをつけている。それを替えてくれたのも彼女だ。恥ずかしいか?それなら正常だな」
 隣の女がくすっと笑いをこらえた。
「名前は?」
「・・・」
「やはりな。一時的か永久にか記憶を失ったな。頭部の打ちどころが悪かった。7針縫った。左腕は手首と指が2本折れている。そう着ていた背広は彼女が持って帰った。今来ているパジャマも彼女が買ってきて着せ替えた」
 しっかり少女の顔は覚えている。だがぶつかる前の記憶が失われている。
「先生上げるぞ」
 野太い男の声がして1階からして階段の軋む音がする。大きな頭が現れて若い男を軽々持ち上げて上がってくる。
「入口に置いてくれ。手当は済んだが腹を刺されている。チンピラやくざだが常連さ。これで満室だな」
 そう言われてもう一つのベットを見る。
 布団をかぶったままだが微かに動いている。







 

始まり 1

 横殴りの雨が容赦もなく吹きこんでくる。それでも夕日がトンネルの天井に差し込んでいる。人だかりが私を取り巻いている。どうしたのだろう。全身が痺れていて立ち上がれない。
「あんたらな!見てるだけはあかんやろ!」
 少女の声がして、ゆっくり体が持ち上がる。坊主頭が視線を塞ぐ。
「のきな!」
 高い悲鳴の後、体がリヤカーに乗せられて横断歩道を渡る。天井の敗れたアーケードが続く。
「救急車呼ばんのか?」
「あかん!」
「どうしてや?」
 坊主頭は少年のようだ。でも二人で押している。かなりのスピードが出ている。天井の景色が流れている。
「あんな、あのぶつかった車見てへんのか?あの車はこの人とめがけてハンドルを切った」
「そうかなあ。俺には自殺に見えたんやが」
「あほか!その車は少し離れたところに留まっていたんや。それが急発進して来たんや。引いてから後部座席から男の顔が覗いていた」
 少女の声が途切れるやリヤカーが急カーブを描く。アーケードの天井が切れて夕空が覗く。
「やぶ医者!」
 その声とともにドアが開かれ白髪混じり髭面の男の顔が覗く。
「結構な血だ」
 体の隅々まで視線がはい回る。
「出血は頭だ。左手はかばったのか折れている。救急を呼ばない理由があるのやな?麻酔をかけて手当をする。一緒にベットに持ち上げてくれ」
 声を出そうとしたが声が出ない。そのうちに恐ろしい眠りがやってきた。






空白6

「関空まで付き合って」
 腕時計を見てタクシーを呼んでいる。
「次はいつ来る?」
 高速から海を眺めているカオルの耳に囁く。
「次は10年先か。修司は立たなくなっているかもね」
 かもしれないと思うと歳を取ることは恐ろしい。うとうとしているとタクシーは桟橋を駆け抜けて空港内に滑り込む。カオルはトランクを預けると腕時計を見てレストランに入って行く。
「やあ早かったのね」
 窓際のテーブルで結衣が手を振っている。サエも隣に座っている。
「やった?」
「しっかりとね」
 カオルの返事に結衣が笑っている。サエが結衣にすべて話しているようだ。
「これはね、結衣と約束したんだけど、来年から1年間結衣がロスに留学することに。私と暮らすのよ」
「なんだか心配だな」
「心配?」
「ああ」
「お父さんはお母さんやカオルさんのことが分かっていないよ。二人とも女性には興味がないの。私はずっとお母さんのようなちんちんが欲しかった」
「覚悟するのね。結衣の人生も過激よ。あなた以上かも」

             《完》

『空白』は未完のまま永い間段ボール箱の眠っていました。
時々夢の中で続きの話を繰り返し繰り返し見ていたようです。
書きだすと走るように物語が出てきました。
そのうちに『刺青』が隙間から生まれました。
『復讐の芽』はこれは挑戦です。

        夢人






空白5

 ホテルの部屋に入ると17年前に戻る。バスローブを着たカオルがもうすでにワインを飲んでいる。彼女の前にはビールの小瓶が抜いてある。私は自然と瓶を口に持って行く。
「すぐにする?」
「いや話がしたい」
「そうね。私も最近はそれほどセックスしなくなったわ」
「なぜ香港に?」
「元幹事長が赤坂に絡められなかったので私を脅してきた。彼もその時は新党建て上げに失敗して、検察にも追い込まれて焼け糞になっていた。何度も交通事故や火災に巻き込まれたの」
「なぜ電話してこなかった?」
「何度も掛けようとした。でもね私はサエと約束をしていたの。赤坂がすんだら修司を戻すと」
「そんな話があったんだな」
「それに家族間がギクシャクしていて思い切って各会社の株を手放した。それに元総理や頭取が裏金をせがんで五月蠅かった」
「マネージャーが一緒だった?」
「彼も身よりがなかった。親子のようだったわ」
「今は?」
「彼はラスベガスにいる。日本に帰りたくないと言っている。私が帰るのも反対していたわ」
「どうして?」
「私が戻ってこないと心配してる」
と言いながらまだ立派にくびれている裸の尻を向けてくる。
「まだ立つじゃないの。思い出すわこの感触」






空白4

「御機嫌よう!」
 17年ぶりにこの携帯からカオルの声が聞えた。
「日本に戻ってきたのか?」
「日本どころか今サエの店にいるよ」
「2時間も話した」
 サエの声が聞えた。
「それで今夜は貸し切ったのよ」
「何を?」
「阿倍野のあの白い壁のホテルまだ残っている吃驚した」
「まさか?」
「ここ2年もサエを抱いてないのね」
「そんなことまで?」
「立たなくなった?」
「もう若くない。だがだからサエが抱けないのじゃなんだ。それよりどうしてまだ会社の役員に入っている?」
「だって私といつまでも一緒だって」
「17年間は長かったな」
「あっという間だった。でもねいつも夢を見てた。会長が死ななかったらいつまでも修司と一緒だったのにね」
「でも今日だけ」
 サエの声がする。




空白3

「この小料理屋は5年ぶりだなあ」
 記者が編集長になった時ここでお祝いをした。
「貫禄がついたよ」
「いや腹が出ただけだ。それより『白薔薇』のママ調べてみたよ」
 女将と一緒にやぶ医者も今はカウンターに入って魚を焼いている。だからサエはホルモン注射は自分で打ってる。サエとはもう2年交渉がない。今ややぶ医者もサエを女と思っている。
「彼女はしばらく香港にいたそうだ。『白薔薇』の7号店を香港に出している。ここはまでも開いていてその当時の写真が雑誌に出ている」
 これはサエが作ったドレスだ。
「3年後『白薔薇』の8号店をラスベガスで出した。これはアメリカの新聞の記事だ」
 編集長にとってもはやカオルは恋人だ。
「会社を調べてみたが彼女は今も社長だよ。君の名前も役員に残っている」
 役員に入った記憶もない。入っているなら頭取か総理だろうが、二人とも相次いで亡くなっている。もう赤坂のことを知っている人間もいない。写真を見てカオルの横に立っている老人を見た。
「どうした?」
「いや」
 あのマネージャーがずっと一緒だったのだ。
「もう日本のことは忘れただろうか?」
 カオルにとって日本で起こったことは空白なのかもしれない。




空白2

 カオルだ。私は乗り出してテレビを覗き込む。やはり17年ぶりだ。私が大阪に戻ってからカオルは表舞台から姿を消した。
「日本にいなかったのねえ?」
 ラスベガスの有名なカジノを日本人が買い取った。
「カオルに間違いないな?」
「ええ」
 サエも確信している。
 赤坂は私の記憶では1000憶はカオルの手元に入ったはずだ。私は10年後に貸金庫を開いた。証拠書類はすべて処分した。架空口座にあった5憶はまだ手をつけてない。
 カオルは謎の日本人と伝えられている。43歳になる。だが30歳代に見える。
「アメリカにいたんだ」
「『白薔薇』はまだ私のところに仕事をくれている」
「ちいママが運営してるのだ」
「私も顔を薄っすら覚えてるよ」
 ユイが言う。
「会いたいな」
 サエが懐かしそうに言う。
「そうだな」
 いつの間にかスマホで懐かしい記者を呼び出す。彼は今週刊誌の編集長になっている。
「今のテレビ見たか?」
「ああ懐かしい!久しぶりのリバイバル記事を書こうと思っている」
「一度飲まないか?」





空白1

 あれから17年が矢のように過ぎた。私も50歳を迎える。サエの店も阿倍野ののっぽビルに入った。本社は相変わらずそのままのところに置いている。サエも私の妻となって籍に入り、娘のユイもサエのことを聞いて少し反抗期があったが、今日も仲良く買い物に出かけている。私は年齢相応に年老いた良きサラリーマンの顔になっている。
 サエは一向に年齢を感じさせず、いまだ周辺の誰も男とは思わない。久しぶりにボンの店でビールを飲んでいる。ボンは髭を蓄えて私より年上に見える貫禄だ。5人の子供を作ってさらに6人目が出来るという。
「最近はサエとはやらないのか?」
 小さな声で言う。
「ユイに見られてからはサエに拒まれている」
 ボンとは正直な話ができる。ボンの妻のフミコは未だにサエが男だと知らない。私に会うとなぜ二人目を作らないと言い続ける。ボンはやりすぎて玉がなくなったと冗談を言う。確かにやりすぎたのだと思う。
「ほらここにいた!」
 いつの間にかユイが腕を組んでいる。サエが後ろで控えめに笑っている。
 ボンが黙ってビールとサイダーを抜く。
「ユイちゃん彼氏出来た?」
 フミコが奥から声をかける。
「私も男に生まれたかった」
 これがユイのいつもの帰し文句になっている。サエが困った顔で笑う。今でも時々ユイがサエの布団に潜りこむ。私はそれを見ていて妬ける。
「あれ!」
 サエの声でテレビの画面を見る。




足掻き13

 衆院選が始まった。私はカオルと銀行の応接室にいる。副頭取が直々に銀行員の指示をしている。フィクサーも甲府から出てきている。元頭取は部屋の端でテレビを見ている。今日で赤坂は終わるのだ。上場会社の社長も向こう側に座っている。
「書類に不備はないですね?」
と言い副頭取が資金の振り込みを行う。それを合図に購入側は立ち上がって部屋を出て行く。
「頭取と会長は?」
 元頭取が振り返って副頭取に声をかける。
「すでに辞表を預かっています。会長をお願いしますよ」
 院政を敷く準備が整ったらしい。
「勝ったな」
 テレビに元総理が側に座り新総理に握手している。与党に大差をつける結果になった。政権が代わる。元幹事長の新党は大半が議席を失って第5党まで落ちた。ここも院政が敷かれた。
 カオルと私は肩から力が抜けてマネージャーの車に乗って、そのまま八重洲に行き地下の寿司屋に座る。
「帰るの?」
「乾杯だ。泣きべそをかくな」
「明日にならない?」
「永遠の別れじゃないんだ」
「でももう出て来ないでしょ?顔に書いてある」
 赤坂が終わったらカオルの仕事から手を引いてサエの仕事を手伝うと話している。寿司屋のカウンターに番頭が掛けていて、外に若い衆が2人立っている。ここでカオルと道が分かれる。
 長い空白の時間が終わる。






足掻き12

 元頭取の関連の雑誌に元幹事長の資金が銀行から不正融資で出ている記事が発表された。合せて元幹事長と今は死んだ秘書との密会の写真と手帳の一部が載せられた。この部分は会長が追加させた部分だ。検察が銀行に査察に入り、警察が手帳を押収した。
「サエ、ユイは元気か?」
「お父ちゃんはって言ってるよ」
「悪いな。もうすぐ片が付く」
と言って携帯を切る。今日は現地で赤坂の境界の確認で相手の会社のチームと廻る。カオルは今日は警察に呼び出されていて会長の事故の防犯ビデオの立ち合いをしている。
「修司?」
「カオルか?終わったのか?」
「殺人犯が見つかったようよ」
「見つかった?」
「毒殺されてたの」
「やはり殺したのだな」
「今から番頭を連れて検死に立ち会うわ。お金は送った?」
「朝一番送金しておいた。元総理も元頭取ももう黒幕だな」
「そうね。新旧交代ね」
「カオルは怖いファィクサーか。抱いたら殺されそうだな」
「溜まりきっているから今日は朝まで頑張るのよ」




足掻き11

 元幹事長の新党党首が再び野党再編を呼びかけた。現政権から3大派閥の一つが離党届を出した。だが今回は新党党首には資金がない。それに検察と警察に纏わりつかれている。
 今日は珍しくカオルと私が元総理が泊まっている赤坂のホテルに呼ばれている。カオルは長男の会社の金を止めて今回の元幹事長との提携の裏を取った。グループはすべてカオルの会社の資金で動いているのだ。総帥を会長はカオルに譲ったのだ。
「へえ、頭取もいたの?」
 元総理の横に元頭取が座っている。
「儂ら3人はカオルを挟んで兄弟だよ」
 元総理が笑っている。
「次の衆院選で野党から与党に返り咲く。それで私の子飼の党首を立てるのさ」
「またお金でしょう?」
「頭取は?」
「今の副頭取を頭取にする。会長と今の頭取は元幹事長に押さえられている金を担保で5億を貸した」
「それをじっと見ていたのですか?」
 さすがにそのしぶとさにあきれる。
「幾らいるの?」
「8億。だがこれは赤坂の斡旋料として帳消しにしてくれよ」
「会長の言っていた売り先というのは総理の先だったのね。政治家と銀行員は怖いわ」
「両性のカオルの方がもっと怖い」








足掻き10

 元総理の力を借りて警察を動かした。週刊誌の記者には防犯カメラの映像を提出させた。それで再捜査となってあの男が指名手配になった。週刊誌には次の秘書の殺しの記事と元幹事長の密会の写真を載せた。元幹事長は資金を検察に押さえられているので次の作戦に移れない。
「長男の相続の裁判は?」
「こちらの弁護士が相手の弁護士と話したようだわ。遺言には全く問題ないということで私が父を殺していなければ争いは無理だろうって」
「その件はもうすぐ片が付くさ」
 カオルが会長から預かった封筒から秘書の手帳を出してくる。私は受け取ると念入りにページを繰る。元幹事長とのやり取りが将来の保険として事細かく書かれている。これらは私の調べとも合致している。だが後半のページが気になる。
「会長の殺人依頼は事実関係からすると無理があるが?」
「ええ、それは会長自身が書かせたのよ」
「どうして?」
「会長は最後に戦うのは元幹事長と見ぬいていた。彼を殺人未遂で追い詰める予定だった」
「今となったらその嘘は2人が死んだ今暴けないな。これをいつ使うかだ」
 その時携帯が鳴って取る。
「元幹事長の秘書のマンションで貴重な映像が取れたよ」
 探偵の声だ。
「殺人者の映像だ」
「そこにいる?」
「今はいない」









足掻き9

 甲府に着いたら駅に警備会社の会長が迎えに来てくれた。会長は前日に来ていてフィクサーと話を済ませているようだ。私の膝に今朝発売の週刊誌を置いた。あの記者の殺し屋の写真が入った記事だ。そのまま無言で塾の本部がある屋敷に車が入った。
 書斎に通されるとすでにフィクサーがコーヒーを飲んでいる。
「昨夜彼と話したが、残念ながら決裂したよ。この記事も読ませてもらった」
「元幹事長の要求は?」
「私の持っている赤坂の土地を半分要求している。それだけじゃなく亡くなられた会長の土地も手に入れる予定だそうだ」
 長男と組んだのだ。長男は赤坂の土地のことを知らされたわけだ。
「もちろん私は断った。会長と組んだのだからね」
「ありがとうございます」
「どうする?」
「まず殺人犯を追い詰めます」
「だが殺人犯を殺されたら?」
「実は」
 私は鞄の中からファイルを出す。
「これは秘書とまだ反主流派のボスだった元幹事長との交渉の場面を撮った写真です。











足掻き8

「困ったことになった」
 カオルの言葉で東京に舞い戻った。わざわざカオルが駅まで迎えに来て病院に走る。病室には秘書を迎えに行った番頭が寝ている。
「歳を取りました」
 どうも東京に秘書を連れて戻った夜にホテルで襲われたようだ。
「彼は即死です。首を絞めたのです。私は物音で覗いた時に刺されました。あの殺し屋です」
「こちらの札を1枚消したのですね?」
「それだけじゃないの。長男が相続を認めない訴訟を起こした。よりによって私が父を殺したと」
 ドアが開いて探偵が入ってきた。
「それは調べてみました。長男に付いた弁護士は新党の党首のお抱えです」
「彼はどうしようと?」
「赤坂の資金に目を付けたのです。こちらで裏金を押さえていますからね」
「殺し屋を抑えるわけにはいかないかな?」
「探しているが難しい」
 探偵はかなり手を尽くしているが網にかからない。
「よし第2弾であのコンビニの防犯ビデオの映像を使おう。取り敢えずトラックから飛び降りた写真を載せよう。それから探偵は秘書が殺された病院の監視カメラをすべて調べてください」
「私は?」
「会長の弁護士を呼んで対策を練ってください。私はフィクサーに会ってきます」
 さっそく警備会社の社長に連絡を入れて一緒に甲府に行くことにした。









足掻き7

 久しぶりに大阪に戻って新聞記者と馴染の寿司屋で会う。彼も今はキャップとして『白薔薇』のママの特集を書き続けている。最近の喪服を着たカオルが写っている。すでに会長の死が伝えられていて彼はカオルが会長の暗い部分を引き継いだと勘違いをしている。
「カオルは会長の実の息子だよ」
「なら息子を抱いていたわけに!」
「あれはカオルが撒いた噂だよ。会長はカオルのグループの柱の会社を譲った」
「それで相続がもめているのだね?」
 すでに手帳にメモを入れている。おそらくこれを記事にするのだろう。
「これを見てくれませんか?」
 東京の大手の週刊誌だ。『あれからの赤坂』という見出しが付く特集が始まった。私はペラペラとページを繰る。
「かなり精密な情報だよ。誰が書いている?」
「調べてみたが書き手は分からない」
「これだけの情報を持っていて公開するのは元幹事長の新党首しかない」
「フィクサーでは?」
「彼とは会長が死ぬ前に和解が出来ている」
「こちらも赤坂の特集をという声が出てるんだ」
「なら会長の不審な死から切り込んでみたら?」
「情報はもらえるか?」
「また送っておくよ」
 8時になっているのを見て彼と別れてサエを店に迎えに行く。











足掻き6

「どうした?」
 葬式が終わってカオルと八重洲の地下で寿司屋で別れの夕食を取る。帰るという私に東京駅までついてきた。全家族反対という中での葬式だった。
「なんだか急に寂しくなった」
 私は無言で冷酒を入れてやり乾杯する。最後だと言ってからもう5本が空いている。
「私ってどうすれば?」
「統帥って言うタイプじゃないがな。親父のお土産の赤坂は終わらせよう。それから考えてもいいのじゃないか?」
「手伝ってくれるの?」
「いい友達として」
「まず何からすれば?」
「弁護士に会社の登記を急がせるんだ。それがないと赤坂の処分を進められない。それから番頭に秘書を内々に呼び戻させる」
「今日は大阪に戻ってサエを抱くんだ」
「それは抱くさ」
「明日一番で帰られない?」
「駄目だ」
「だったら私が大阪に行く。新幹線の個室で2時間たっぷりあるわ」
 もう立ち上がっている。
「予定通り家に帰るから」
「いいよ。帰るまでの体頂き!」



足掻き5

 病室に入ると会社の顧問弁護士とカオルが枕元にいる。看護婦が計器をじっと見ている。
「では表の相続は予定通りに進めます」
 会長はマスクをしていて目で頷く。弁護士はずいぶん前に作っていただろう遺言状を開く。部屋に番頭も入ってくる。貿易、不動産業、飲食業、倉庫業など7社ほどあるがこの会社はカオルを社長とすると書いてある。カオルは正式には庶子だ。実はこの会社が目立たないが柱の企業なのだ。すべての会社の持ち株会社でもある。何より赤坂の土地を持つ会社の株式すべてを持っている。
「新堂さんは監査役をお願いします」
 弁護士の言葉に会わせて会長の目が頷いている。
「赤坂はどうしたら?」
 その声に会長の目が弁護士を見る。弁護士は封筒を出してきて私に渡す。どうやら売り先も決まっているようだ。フィクサーとも合意しているようだ。どうも赤坂のホテルに互い泊まっていたのはこのことだったのだ。だが下に降ろされた私と警備会社の会長は知らされていなかったのだ。
「合意済だったのですね?」
 うんうんと頷いてカオルの手と私の手を胸元に持ってくる。冷たい手だ。
 始めてカオルの目から涙の零れるのを見た。白衣の医師がいつの間にか後ろに立っている。脈を打っていた計器が一本の線になっている。同時に会長の目が閉じられた。
「父さん」
「ではこれから親族を呼びます」







足掻き4

 朝からカオルの部屋に探偵が来ている。カオルは先程病院に出かけた。会長が意識を失って5日目になる。兄弟はそれぞれ弁護士を付けて大変なことになっているという。私は赤坂の土地を繋いでみて問題点を整理している。とくに廃道が可能かどうかだ。そのためには後何か所か土地を購入する必要がある。赤坂の現場に携帯を入れて地図を見ながら交渉の指示を出す。
 探偵がパソコンを開いて説明を始める。
「蜥蜴とあだ名があるこの男は60歳ほどで犯罪歴もやくざ組織にも名前がない。蜥蜴は右腕に蜥蜴の刺青があるからだそうだ。R事件の時地上げを担当していたようで、フィクサーがずっと使っていた。一時は地上げした赤坂のマンションに住んでいたようだが、今はどこに住んでいるかも不明だ」
「元幹事長とは?」
「派閥の資金稼ぎで今逃げている秘書の紹介で元幹事長が使い始めた」
「警備会社の会長は2人殺してると言っていた」
「いやもっと殺してるだろうな。私が係った事件でも彼の名前が挙がっていた。元々R社の開発担当の課長だったそうだ。それで、フィクサーが赤坂の件で彼を雇っていた」
「エリートサラリーマンか」
「あの事件で人生が変わってしまったんだよ。君とよく似ているさ」
 説明の途中カオルから携帯だ。
「今から病院に飛んできて!赤坂の件も説明してね。記憶が戻ったけど医師は長くないと言ってる」
「分かったすぐに出る」
「俺の車で送る」
 もう探偵が立ち上げっている。






足掻き3

 どうもカオルが番頭を付けてくれたようだ。フィクサーが裏にいれば警備会社の会長に会うことは罠に嵌りに行くようなものだ。だが私の勘では話した感じ白だという気がする。私は赤坂のホテルのロビーの喫茶店を指定した。
「大変でしたね?」
「まだ意識が戻っていません」
 彼は封筒から写真を数枚出してきた。
「あれからこちらの警備会社で事故の様子を調べさせました。ちょうどコンビニの前で運転席から飛び降りています。顔の部分を拡大したのがこの写真です」
 警察より手回しがいい。防犯カメラを解析したようだ。
「この男はR事件の時にも2人殺しています。それでフィクサーにも確認しましたよ。彼とはあれ以来接触していないようです。今使っているのは元幹事長とのことです。本来は先に秘書を殺すつもりだが見つからないので大本を狙った。現在捜索中です。私どもは和解を果たして早く赤坂の整理をしたいのです」
「警察には?」
「公表は控えたいのです」
 赤坂が表に浮かんできてしまう。内々で整理すべきだろう。
「契約は進められますか?」
「会長は和解には合意していますが、意識がないと動かせれません。元幹事長はなぜそんなに急いでいるのですか?」
「金が動かせないのに加え、秘書が出てきたらと考えているのですよ。追い詰めすぎたのです」
 彼と別れると番頭の車でカオルの店に走る。車の中で探偵に犯人のプロフィールを伝える。











足掻き2

 翌日の昼過ぎに東京の病院の個室に飛び込んだ、入口にボディガードが3人付いている。ドアを開けてもらうと番頭とカオルが座っている。
「どうなんだ?」
「まだ意識が戻らない。緊急の手術は終わったのだけど」
 番頭がカオルの顔を見て席を外す。
「警察は出会いがしらって言ってたけど、あれはプロに仕事だわ。ダンプの盗難だなんて。運転手はぶつかる前に飛び降りて行方不明」
「フィクサーの?」
「分からない。私どうしたらいい?」
「今夜には警備会社の会長に会う」
 新幹線の中で彼と連絡を取った。あの感じでは彼が仕組んだとは思えない。
「会長の家族は?」
「昨晩大変だったの。もう後釜争いでちょっと可哀そうだと思ったわ。今日は誰も来ない」
「医者は?」
「意識が戻らないかもって」
「とにかく誰が狙ったかを探そう。今のところ一番怪しいのはフィクサーだ。ここに当たってみるしかないだろう。カオルは少し寝る方がいい」
 どうも辞めるというのが先に伸びそうだ。
「それに探偵にもう一度事故を調べさせよう。これももう指示は出している」
「ご免ね。初めての家族旅行だったのにね」



足掻き1

 あの次の日カオルと池袋のホテルで朝別れて大阪に戻って10日になる。今朝の新聞で元幹事長の新党ができたが、予想の人数の半分も集まらず弱小野党に転落した。これで均衡が崩れたのか再び内閣が変わる。政治の停滞が経済の停滞に結びつく。だが元幹事長は検察からの包囲網が迫っている。
 今日はサエの店が休みで私も休みを取った。それでボンの家族と一緒に白浜温泉に来ている。ボンとの申し合わせで互いに個人貸し風呂を取った。食事前にサエがユイを抱いて家族で湯に入る。私がそっと後ろから竿を握ると恐ろしい顔で睨む。
「何とかしてサエを籍に入れようと調べているが?」
「いいのよ。でもユイにはいつか説明しないと」
 実際に元総理にはお願いしている。
「カオルの会社で仕事しているのは嫌じゃないか?」
「それは気にならならないけど、危険なことはしないで」
「赤坂の仕事が目途が見えたら辞めようと思っている。その時はサエの仕事を手伝うよ」
 どうも最近カオルは会長の後を継ぐような気がしている。あそこで番頭のような役割はごめんだ。
 部屋に戻ると携帯が点滅している。サエに夕食の部屋に行くように促す。カオルからの着信だ。
「どうした?」
「会長の車にダンプカーが突っ込んだ。運転手が即死で会長は重体」
「相手は?」
「盗難車でプロのようだと。現在調べている」
「探偵にも話しておいてくれ。今日はいけないが明日には行く」
 まさかフィクサーの和解は騙しだったのだろうか。







反撃12

 8時に昔よく使った赤坂の料亭に入る。まるで女優に付くマネージャのような格好だ。部屋の前には秘書だけがいる。総理時代とは警備が違う。すでに料理や飲み物が運ばれていてどうも前客がいたようだ。
「久しぶりだなカオル」
 そう言われると無造作にスカートを上げてむき出しの竿を見せる。
「相変わらず元気だ。5寸釘を打たれたらしいが?」
「なんでもご存知ですね?」
 ビールを2人に注いでくれる。
「会長と赤坂のことを聞きたいのです」
「動き出したらしいな怪物たちが。あれはR事件の社長が地上げを始めた物件だ。カオルの旦那だった頭取が融資をしていた。その当時の総理が絡んでいた。会長は当時の総理の私設秘書で赤坂や政治資金の交渉をしていた」
「フィクサーは?」
「総理の金庫番で同じ穴の貉だ。これは事実かどうか知らないが会長が裏切って私に付いた。だが総理は裏交渉で派閥の長で残ったが、金庫番はR事件に巻き込まれた。それで長い裁判になった。だがその時に赤坂の土地をフィクサーが埋めたと聞いている」
「と言うことは当時の地上げ地はフィクサーのものだというのですね?」
「ああ、かなりの虫食い状態だったようだ。それから会長がその部分を買い続けてきた。私も頭取も絡んできたさ」
 これでかなりの部分は見えてきた。
「ところでカオルは今は会長に抱かれているようだな?」
「舐めてあげるだけの仲よ」
 総理は二人が親子だとは知らないようだ。
 1時間半ほどで料亭を出てカオルがタクシーを飛ばして池袋のホテルに入る。
「懐かしのホテルよ」






反撃11

 会長はあまりにもあっさり合意した。どうも出来レースなのかもしれない。探偵の報告ではファイクサーは今朝赤坂のホテルを引き上げたという。それに合わせたように会長も私の報告を聞いてホテルを引き上げた。どうも私に次の作業を自動的に振ったのだろう。
 記者に携帯を入れて次の原稿から警備会社とフィクサーの関連を抜いてもらい、代わりに元幹事長と金庫番の秘書の話を差し込んだ。用意していたようにカオルのところにその時代の詳細と写真が同封されて送られてきた。
「会長は何を考えている?」
「何を考えているのか分からない。それよりもう帰るの?」
 パソコンを開いて赤坂の地図を見てる。ずいぶん前から購入分の評価を出しているが、フィイクサーの分も評価し直しいる。どうも二人の争いのゴールはここにあるようだ。
「赤坂って仕上がったらいくらくらいになるの?」
「どうも二人はR事件の埋蔵金を掘りだすらしい。時価で2000億は下らないだろう」
「じゃあそれなのに私の貰うのは10億ぽっちなの?」
「変に絡むのはよせ。竿だけでは済まないぞ」
「でも」
「カオル会長の知ってることを教えてくれ」
「いいよ。私も調べたものがある」
 素早く携帯を取った。
「総理?」
「君か?元総理だ」
「晩飯どうですか?」
「今カオルのところにいるのだろう?カオルも連れて赤坂の料亭はどうだね?」
 どうも彼も会長の動きを掴んでいるようだ。カオルが頷いている。



反撃10

「だめよ!」
 携帯を取ったカオルが首を振っている。カオルはもう全裸でまだ傷が残っている竿を私の中に入れている。
「悪いな。これから車をやるから乗ってくれ。警備会社の会長に会ってほしいんだ」
 膨れてしまったカオルを置いてズボンを上げて時計を見る。もう10時を回っている。店の前に降りるとちょうど黒塗りのベンツが入ってくる。後ろの席に番頭が座っている。手書きの会長のメモを読んでいるともう赤坂の料亭に着く。私は一人で料亭の中に案内される。
「『白薔薇』のママが来るかと思ったが?君は銀行にいたね?」
「私では回答はできませんよ」
「それはお互いにだ。どうも元幹事長にはツキがない。野党の8億の追及もやまないし、ついに検察も動き出した。だが本人は今更に分党を検討しているさ。それに秘書はそちらに握られている」
「そんなに手の内を曝してもいいのですか?」
「これはボスの独り言だ。今度の総理もそう長くない。政治家ではなく官僚の時代だな。それで言うと政治家に金をかけることはない。お互いに押さえるところは押さえている」
「赤坂ですね?」
「物わかりがいいな」
「面積的にはそちらが大きいが、メイン道路に繋がらない袋地ですよね?」
「ここは争っても互いに傷がつく」
「元幹事長とは離れるということですね?」
「それとある程度そちらで使ったら秘書を預けてほしいんだよ」
「秘書は元々?」
「彼は元幹事長の金庫番だったんだ」






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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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