空白 2020年01月
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歪める 2

 翌朝検察のあのビルに呼ばれた。前回受けた検査官と違う。
「私は東京から来ました。『白薔薇』のマネージャーからお話を聞いていました。ママはどこに出かけたのか今は不明です。どうも色々な人から話を聞いてきましたが、あなたがキーマンのように思うので是非とも会ってみたかったのです」
 事務官が調書のファイルを順番に並べてからパソコンの前に座る。
「あなたとママは伊藤が引き合わせたとマネージャが言っていますが?」
「記憶にないです」
「そうでしたね。その頃は伊藤とママの関係は終わっていて頭取がママのパトロンになっていた。でも一度も店には顔を出さなかった。頭取がママの部屋に来る時は必ずあなたが先に店に現れる。そう証言しています」
 ページを繰りながら返事は求めず顔色だけ見ている。
「あなたは頭取の連絡係のようだったと。例の3人が写真を写した日、あなたは店に現れていない。と言うことはママが社長と寝たのは伊藤の依頼で頭取は絡んでいないと」
 私は記憶がないから反応もしない。
「マネージャーは伊藤がよく取引先をママに紹介していたと。その頃あなたもよく伊藤と飲んでいたようですな。ここからは今の記憶で聞いてください。黒サングラスの男はあなたを車でぶつけた?」
「はい」
「今あなたは総合的に判断して誰の指図だと思っていますか?」
「伊藤だと」
「なぜ伊藤だと?」
「これは『白薔薇』のママに直接聞いたのです。金を貰っていた係長がママの部屋に入った私をガス栓をひねって殺そうとしたと」
「ママの部屋にどうして入りました?」
「分かりません」





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 歪める1

 ビデオの1部があの記者のネームで公開された。テレビでもぼかして放映し、西成の飲み屋街でも話題騒然で検察が現物を証拠物件として提出を要求した。あのビデオにはたっぷり伊藤の指紋がつけられている。すぐにITMファイナンスの社長も呼び出されている。だがカオルが見つからない。
 サエがその週刊誌を見て今朝涙を流していた。カオルが社長のものを屈んで咥えている。
「そこまでしないとダメだの?」
 昼にノミ屋で見たことのある刑事が事務所に現れて取調室に任意で連れて行かれた。
「この男知ってるな?」
 番頭の写真を見せる。
「番頭がな、あんたのことをしゃべっている。関東のやくざから狙われていたと」
「それは事実です」
「番頭はな、記憶が戻っていると証言してるんやがな?」
「それはないですよ」
「だがな、彼奴はあんたに恨みを持っていてな、暇を見ては事務所に張り込んでいた。この写真の男は誰や?」
 マネージャーが車で迎えに来たところだ。番頭はどこまでしゃべっているのか。その時急に戸が開いてスーツ姿の男が顔を出した。刑事は軽く頭を下げると出ていく。
「話は検察が続けて聞きます。あなたは『白薔薇』のママと何度か会っていますね?」
「・・・」
「この男は東京の『白薔薇』のマネージャーです。すでに検察に呼んで聞いています。大阪のホテルの売買の時に偶然に会ったと言っています。それから3度車で運んだと言ってます」
 3度?東京へ行ったことなどは数えていない。こういう時は迂闊にしゃべらないことだ。
「マネージャーはあなたが頭取の依頼を受けて伊藤や『白薔薇』のママを調査していたと言っています。今話題のビデオは伊藤が社長をはめるために取ったと証言しています」







真相 12

 朝一番にカオルから事務所に電話が入った。
「またあの女」
と姉さんが受話器を差し出す。彼女はこれから公園に人夫出しに出かける。最近は病院に入ったままの親分の代わりにヘルメットとステッキを持って出かける。反抗する人夫もたまにはいる。
「検察に呼ばれていたんだってな?」
「丸一日缶詰。お尻から直腸が出てきて痛くて座れないわ」
「タイで黒サングラスが?」
「聞いた。うろうろ歩き回って。それでITMファイナンスの社長がまた揺らぎだした。それでまた昨日痛いところに折檻されて血の海よ。今病院に向かっている」
 相当頭取がイライラしているようだ。
「遂に恥さらしだわ」
 最悪のケースにカオルから渡すと言われていたものがある。社長とカオルのプレイの音声付ビデオだ。この中身をホテルで見たが、社長のものが立たなくて仕方なくバイブを入れている。ここで注目すべきは福岡のラブホテルの入札の話だ。明らかに便宜を図っている。
「伊藤は?」
「これは頭取が言ってたことだけど、横浜からタンカーで伊藤を連れて日本を脱出したそうよ。途中で伊藤を捨てたと。ビデオは事務所に送った。横浜の倉庫のポストからね」
「そこからは不味いんじゃ?」
「すでに警察は倉庫を調べている。頭取はどうしても伊藤が生きていて私と組んでいたことにしたいわけ。届いたら記者に渡して。中には伊藤直筆の社長と私に裏切られた手紙が入っている。私は病院から姿をしばらく隠すけど心配しないでね」






真相 11

 姉さんが朝刊を私の前で拡げる。
「記憶喪失の第2課長が検察に現れると言うのはイサムのことね?」
「ああ」
「イサムは殺されそうになって逃げたとある」
「そうだ。サエに助けてもらった」
「昨日警察が来てやぶ医者の所にイサムの診断書を取りに来た。本当に記憶は戻ってないの?」
「記憶が戻らないほうがいいみたいだ」
 その時あの記者の顔が覗いた。
「先程あのサングラスの男がタイで写真に写っていたと大騒ぎです。これはたまたま別の事件で現地のカメラマンが撮ったものです」
 拡大したものを見せる。
「彼の車ではねられたのですね?元々伊藤が手足で使っていたと言うことを聞いていますが?」
「襲ったのは彼です」
「ところがこの写真を見てください。これは他社の記者が撮った写真です。『白薔薇』のママがこの黒塗りの車に乗った時の写真です。助手席にいるのはあの男でしょ?」
「これはいつの写真ですか?」
「伊藤が行方不明になった頃です。検察では伊藤と社長と『白薔薇』のママは組んでいたとみています。それならこれは伊藤に会うのに車の迎えが来たと言うことになります。彼女は今日検察に呼ばれています」
 カオルが向かった先は頭取の別荘である。この混同はカオルが意識して作った罠にはまっている。







真相 10

 黒サングラスの男は殺人容疑で指名手配されているが見つからない。子供が寝てしまっていて検察からボンの店で飲んでから帰った。でもまだ興奮していて部屋の中でサエの日本酒を珍しく飲む。
 どうも検察はNについての仮定を持っているようだ。だが伊藤と黒サングラスの男の行方が大きな壁になっている。私の記憶喪失については疑ってはいないようだ。
 急に背中に張り付いてきたものがある。驚いて押さえつけたが、全裸のサエがむしゃらに唇を吸ってくる。カオルより細いが反り立っているサエのものを含む。サエは私のものを同時に含んでいる。10分ほどで互いに持ちこたえられなくなって同時に口に吐き出す。サエのものは凄く濃い。それなのにもうまた反り返っている。私がお尻を向ける。サエが子犬のように何度も何度も突き刺してくる。私の背中に涙が汗のように流れてくる。
「心配だよ」
 そう言えはサエはテレビを見て新聞をみてどうなるのだろうと思っているのだ。
「逮捕されることは?」
「ないと思う」
「記憶が戻ったら?」
「戻ろうと戻らないとしても口をつぐんでいかなければならないことは分かっている。それにカオルにサエを手放さないから記憶が戻ってもサエを守ってくれと言っておいた。だが検察も真相に近づいて来ている。後は頭取のツキだろう。サエの息子は困った奴だなあ」
 もうまた反り返っている。今度は仰向けにしてサエの中に入って手こきで同時に責める。今は抱き合うことでお互いを確かめるしかない。





真相 9

 再びドアを開けると調書のファイルが先程より増えている。
「続いて聞きますよ。伊藤と『白薔薇』の東田とITMファイナンスの社長は週刊誌に出ているような関係だったのですか?」
「記憶にありませんが『白薔薇』のママからはそう聞きました」
「伊藤の行方は?」
「知りません」
「あなたは銀行で第2総務課長のポストにいたと聞いています。第2課長は頭取の直属としての仕事をしていたと?」
と言いながら頭取の調書を開いて長い文章を見せる。ITMファイナンスの伊藤との調整役と書かれてあるが、総理の件はどこにも出ていない。
「頭取がそう説明されるならそうです」
「たとえば議員などの交渉も?これは第2課の社員の発言にあります。よく国会議事堂に行かれていたと」
「憶えていません」
「あなたは銀行でパソコンを調べましたがスケジュール表は大半記号ばっかりですね」
 検察官がコピーを見ながら、
「Tは頭取、Iは伊藤と読めますが、よく出てくるKとNが分かりません。引き継いだ第2課長はKともNとも接触してないようですね」
 とくに返答は期待していないようだ。
「これによるとあなたは行方不明になる日、Tの指示でKに会いに出かけています。その時部下の係長、後に第2課長になる彼のメモに頭取から『白薔薇』に行くように指示が出ています。Kは『白薔薇』ですね。彼のメモにはチャンスが来たとあります。彼は何を指示されて『白薔薇』に行ったたのでしょうか?後の調査で彼の鞄からお金が出てきています。これについては東田は彼が伊藤からお金を貰っていたと証言しています。でも問題はNが誰かです」







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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