空白 始まり 1
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始まり 1

 横殴りの雨が容赦もなく吹きこんでくる。それでも夕日がトンネルの天井に差し込んでいる。人だかりが私を取り巻いている。どうしたのだろう。全身が痺れていて立ち上がれない。
「あんたらな!見てるだけはあかんやろ!」
 少女の声がして、ゆっくり体が持ち上がる。坊主頭が視線を塞ぐ。
「のきな!」
 高い悲鳴の後、体がリヤカーに乗せられて横断歩道を渡る。天井の敗れたアーケードが続く。
「救急車呼ばんのか?」
「あかん!」
「どうしてや?」
 坊主頭は少年のようだ。でも二人で押している。かなりのスピードが出ている。天井の景色が流れている。
「あんな、あのぶつかった車見てへんのか?あの車はこの人とめがけてハンドルを切った」
「そうかなあ。俺には自殺に見えたんやが」
「あほか!その車は少し離れたところに留まっていたんや。それが急発進して来たんや。引いてから後部座席から男の顔が覗いていた」
 少女の声が途切れるやリヤカーが急カーブを描く。アーケードの天井が切れて夕空が覗く。
「やぶ医者!」
 その声とともにドアが開かれ白髪混じり髭面の男の顔が覗く。
「結構な血だ」
 体の隅々まで視線がはい回る。
「出血は頭だ。左手はかばったのか折れている。救急を呼ばない理由があるのやな?麻酔をかけて手当をする。一緒にベットに持ち上げてくれ」
 声を出そうとしたが声が出ない。そのうちに恐ろしい眠りがやってきた。






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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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