記憶 7
- Date
- 2018/08/13/Mon 06:40
- Category
- ミステリー
「この記事を見て見ろ」
迎えに来た探偵が週刊誌を拡げる。ITMファイナンス事件のNは総理だと書かれている。
「どうしてこんなのが出る?」
「私設秘書と折り合いがつかなかったのだろう。総理もケチだからな」
車を降りるとホテルの荷物用のエレベターに乗る。カオルから頭取との面会を頼まれている。部屋の前にはボディガードが2人ついている。私だけが部屋に通される。
「久しぶりだ。手荒い拷問で記憶が戻ったらしいな」
前と比べると血色がよくなっている。
「Nの件が出ていますが?」
「あれは儂だよ。私設秘書を抱きこんだ。総理はあれでケチだからなあ。たっぷり後任人事の資金を手に入れたのに、銀行局のポジションを渋っているのさ。人間なんてどこかせこいものだ。カオルでは儂も狂った」
「いえ、私が悪かったのです。男に恋をするとは思っても見なかったのです」
「カオルも同じことを言っていたわ。儂も伊藤の誘いにまんまと引っかかった。まさか男に狂うとはな。分からんものだ。今の気持ちは娘を嫁がせる父親の気持ちだ」
「でも私はカオルとは一緒になれません」
「それも聞いている。写真を見たが今の彼女は若い時のカオルにそっくりだ。いい相棒になってやってくれ。それと今日は最後の力になってほしい。総理に最期の一芝居を打ってほしいんだ。彼は気が弱いから武力で訴えることはない」
「ピーナッツを渡した記録ですね?」
「ああ」
「貸金庫を今触ることはできません。方法は私に任せてくれませんか?」
「もちろんだ。儂が君を騙せばカオルに殺される」
迎えに来た探偵が週刊誌を拡げる。ITMファイナンス事件のNは総理だと書かれている。
「どうしてこんなのが出る?」
「私設秘書と折り合いがつかなかったのだろう。総理もケチだからな」
車を降りるとホテルの荷物用のエレベターに乗る。カオルから頭取との面会を頼まれている。部屋の前にはボディガードが2人ついている。私だけが部屋に通される。
「久しぶりだ。手荒い拷問で記憶が戻ったらしいな」
前と比べると血色がよくなっている。
「Nの件が出ていますが?」
「あれは儂だよ。私設秘書を抱きこんだ。総理はあれでケチだからなあ。たっぷり後任人事の資金を手に入れたのに、銀行局のポジションを渋っているのさ。人間なんてどこかせこいものだ。カオルでは儂も狂った」
「いえ、私が悪かったのです。男に恋をするとは思っても見なかったのです」
「カオルも同じことを言っていたわ。儂も伊藤の誘いにまんまと引っかかった。まさか男に狂うとはな。分からんものだ。今の気持ちは娘を嫁がせる父親の気持ちだ」
「でも私はカオルとは一緒になれません」
「それも聞いている。写真を見たが今の彼女は若い時のカオルにそっくりだ。いい相棒になってやってくれ。それと今日は最後の力になってほしい。総理に最期の一芝居を打ってほしいんだ。彼は気が弱いから武力で訴えることはない」
「ピーナッツを渡した記録ですね?」
「ああ」
「貸金庫を今触ることはできません。方法は私に任せてくれませんか?」
「もちろんだ。儂が君を騙せばカオルに殺される」
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