空白 足掻き5

足掻き5

 病室に入ると会社の顧問弁護士とカオルが枕元にいる。看護婦が計器をじっと見ている。
「では表の相続は予定通りに進めます」
 会長はマスクをしていて目で頷く。弁護士はずいぶん前に作っていただろう遺言状を開く。部屋に番頭も入ってくる。貿易、不動産業、飲食業、倉庫業など7社ほどあるがこの会社はカオルを社長とすると書いてある。カオルは正式には庶子だ。実はこの会社が目立たないが柱の企業なのだ。すべての会社の持ち株会社でもある。何より赤坂の土地を持つ会社の株式すべてを持っている。
「新堂さんは監査役をお願いします」
 弁護士の言葉に会わせて会長の目が頷いている。
「赤坂はどうしたら?」
 その声に会長の目が弁護士を見る。弁護士は封筒を出してきて私に渡す。どうやら売り先も決まっているようだ。フィクサーとも合意しているようだ。どうも赤坂のホテルに互い泊まっていたのはこのことだったのだ。だが下に降ろされた私と警備会社の会長は知らされていなかったのだ。
「合意済だったのですね?」
 うんうんと頷いてカオルの手と私の手を胸元に持ってくる。冷たい手だ。
 始めてカオルの目から涙の零れるのを見た。白衣の医師がいつの間にか後ろに立っている。脈を打っていた計器が一本の線になっている。同時に会長の目が閉じられた。
「父さん」
「ではこれから親族を呼びます」







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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