空白 

新しい道 9

 マネージャーからの封書を持って新幹線に飛び乗った。封書の中には全身鞭の傷が生々しく鮮血を噴いている写真が3枚入っている。とくにカオルの亀頭にホッチキスが多数打ち込まれていて真っ赤に染まっている。出る前にサエに黒鞄を預けた。毎日連絡が入らなくなったら記者に渡すように伝えた。
 八重洲口に降りると待っていたようにワゴンが近づいてくる。
「車は見張られているのでホステス送迎用のワゴンで来ました。これから寮の方に入ってもらいます」
 マネージャーの顔がいつになく強張っている。
「頭取の別荘に軟禁されているのか?」
「だと思います。頭取は会長とママが組んでいると見ています」
「なぜ急に会長と組むことに?」
「頭取が関東のやくざを使って部屋と店を家探ししたのです。次はあなたが狙われるとママが動いたのです。それだけ頭取は追い詰められています。ママが前から言っていたのですが、頭取は精神的に異常になっているとのことです。もちろん殺すようなことはないと思います。ママかあなたが鍵を持っていると思っていますから」
「でも駆け引きをしないと」
「そうです。力を貸してください」
「これは二人の戦いだ」
 マネージャーは用心深く何度もバックミラーを覗きながら池袋のホテル街を入っていく。
「店にも別荘にもやくざが何人も張り付いています。これからどうしますか?」
「まず今夜にでも会長と話してみます」
 記者から第1課長から1部削除したUSBの提供を受けると連絡を貰っている。
「会長は頼りになるのですか?」
「銀行を守るところでは頭取とも同じ部分がありますが、新しい銀行から彼を排除したいと考えています」
「合併は避けれないのですか?」
「遅すぎます」
 この合併が実現すれば日本一のメガバンクになる。すでに何年もかけて総理と準備がされていたはずだ。その調査も私のUSBに入っている。














新しい道 8

 親分の息子の組長の物件を見た足で朝連絡のあった記者と会う。彼の『白薔薇』のママの連載は好評なようだ。彼とは持ちつ持たれつの関係だ。それにカオルを愛情を持って見つめてくれている。
「東京に行ってきたんだが」
「頭取の国会答弁を見ましたよ。ずいぶん疲れていたようですが?」
「どうも会長と揉めているようですよ。それに頭取とママの映像があると噂です」
「それはどこから出ているのでしょうか?」
「もちろん私の担当事件ですから調べましたよ。これはブラックジャーナル誌が流しています」
と言ってその記事を出してきて見せる。
「ここは元々会長が頭取時代に使っていた雑誌です。少し話を聞いてみたのですが、情報元は『白薔薇』のママらしい」
 やはり。カオルは危険な綱渡りをしている。
「その記者は頭取よりもっと凄い映像があると言っているんです。もちろんまだそれを手元にはしてませんが」
 私の持っている黒鞄に鍵がある。USBを見ているうちにそういう結論にたどり着いた。カオルは黙っているが私がその鍵を持っていると思っている。
「それより東京にいて『白薔薇』のママに一度も会えなかった。マネージャーも口を濁している。ホステスにも聞いてみたが、どうも店にもいないようだと。嫌な予感がする」
 頭取が軟禁したのか?
「実は私のUSBは検察に渡したものではなくもう一つあります。これが銀行の会長の手元にあります。会長とは私から話してみますが、一度取材をしてもらえませんか?」
「そんなことをしても?」
「ママが危ないのです」
 いつまでも隠れていてはカオルを守れないと東京に出かける用意をしている。






 







新しい道 7

 久しぶりの休みで朝からユイを寝かせてサエと布団に潜りこんでお互い3度も出し続けた。サエは涙を出して抱かれている。欲求不満だったのだろう。すやすや寝ているサエの横で第1課長から連絡のあった頭取の国会答弁をテレビで見る。野党の議員が新聞に書いてあることを発言しているが、頭取は表情も変えず虚空を見ている。
「伊藤をITMファイナンスに送ったのはあなたですね?」
「送ったのではなく紹介しました」
「不良債権を銀行からITMファイナンスに斡旋した?」
「そこまで私はタッチしていません」
「銀行内のITMファイナンスの負債については?」
「他行の負債と比べてまだ当行は少ないと言えます。それに単独メインではありません」
 この追求では無理だ。総理が隣の官房長官と何か話している。やはり頭取の予定通りの道筋なのだろうか。だが余裕のある顔に見えるがずいぶん痩せたなと思う。
「これは下賤な噂ですが、ある週刊誌にITMファイナンスの社長と同じように『白薔薇』のママいえ男と寝ている映像があるらしいですね?」
 まさかカオルが情報を流した?急に頭取は厳しい顔になって横を向いてしまった。
「世の中では私達は下賤なのね?」
 いつの間にか起きていたサエが哀しそうに言う。
「人はいろいろだ。サエもカオルも好きだ。昼から暖かくなったしユイを連れて動物公園でも行くか?」
「だったら晩飯はフミコ夫婦とここで鍋でもしない?」
 私はやはり目を覚ましたユイを抱き上げる。ユイには父と母に見えているのだろう。にこにこ笑っている。
「アヤの墓を頼んでいる」
 いずれユイに打ち明けて3人同じ墓に入ろうと言っている。








新しい道 6

 USBを見ながら脳に中に時々稲妻のようなものが走る。これは記憶が戻ったというものではなく、繊細に組み立てられた事実から生み出されてくるもののようだ。カオルの中に入った時に無意識に差し込む向きを変えるような行動だ。どこが深く彼女に届くか体が憶えている。
「今日で最後ですね?」
 第1総務課長がコーヒーを入れて入ってくる。
「第2課長をどう思っていましたか?」
「そうですね。焼き餅をしばらく焼きましたわ。重要なことは頭取は何も私には話されませんでしたから。それでいつの間にか会長の耳になっていました」
「銀行再編はどこまで進みましたか?」
「名前は言えませんが相手も決まっています」
「それは今回大蔵省が言ってきている相手と?」
「同じです」
「頭取の予定の道筋ですね?」
「会長は?」
「最初は抵抗を試みられましたが無理だと判断したようです。Nは総理ですね?」
「会長も?」
「このUSBを見てから確信されてようです」
「会長は今後どうされたいのですか?」
「頭取が自分の描いた絵をもう自分では歩けないだろうと。その代り会長がその道を歩こうとされています」
「どうして?」
「道はもうやも得ないが、銀行の先君の魂だけは残したいと。新堂さんは?」
「これからは全く別な道を歩きます」





新しい道 5

 親分にしばらく3時に上がらせてもらうように頼んだ。それで翌日からもう3日間タクシーに迎えに来てもらって自分のUSBを見ている。自分でも驚く作業量だ。今日は8時に福岡から戻ってくるカオルと『白薔薇』の大阪店で会う。
「どう少しは見えてきた?」
 テーブルにすでに皿が何枚も並んでいて、珍しくワインを飲んでいる。風呂は済ませたらしくバスタオルから長い脚が覗いている。
「どうも頭取は総理と金融界の再編を考えていた節がある」
「どうしてそんなことが分かるの?」
「ライバル銀行を詳細に調べさせている。それで負債に赤丸を入れている。ITMファイナンスに要注意先を年々移動させていた」
「でも自分が貸していたら同じじゃない?」
「それがかなり手の込んだことをしている。どうも伊藤には他の銀行の借り入れを増やすように指示していたようだ。作った時は80%のシェアーが30%まで落している。最後は会社を清算する腹だったようだ。ライバル銀行が3行並行メインになっている」
「修司はお金を総理に運んでいたのね?Nは総理だわ。でも会長はそこまで知っている?」
「おそらく知らない。検察もそうだ。もう少し下を見ているのかと思う。頭取が勝つか会長に軍配が上がるかまだ微妙だ」
「もう少し辛抱なのかな?」
と言いながらカオルのバスタオルは肌蹴てて立派なものが反り立っている。







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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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