空白 

足掻き10

 元総理の力を借りて警察を動かした。週刊誌の記者には防犯カメラの映像を提出させた。それで再捜査となってあの男が指名手配になった。週刊誌には次の秘書の殺しの記事と元幹事長の密会の写真を載せた。元幹事長は資金を検察に押さえられているので次の作戦に移れない。
「長男の相続の裁判は?」
「こちらの弁護士が相手の弁護士と話したようだわ。遺言には全く問題ないということで私が父を殺していなければ争いは無理だろうって」
「その件はもうすぐ片が付くさ」
 カオルが会長から預かった封筒から秘書の手帳を出してくる。私は受け取ると念入りにページを繰る。元幹事長とのやり取りが将来の保険として事細かく書かれている。これらは私の調べとも合致している。だが後半のページが気になる。
「会長の殺人依頼は事実関係からすると無理があるが?」
「ええ、それは会長自身が書かせたのよ」
「どうして?」
「会長は最後に戦うのは元幹事長と見ぬいていた。彼を殺人未遂で追い詰める予定だった」
「今となったらその嘘は2人が死んだ今暴けないな。これをいつ使うかだ」
 その時携帯が鳴って取る。
「元幹事長の秘書のマンションで貴重な映像が取れたよ」
 探偵の声だ。
「殺人者の映像だ」
「そこにいる?」
「今はいない」









足掻き9

 甲府に着いたら駅に警備会社の会長が迎えに来てくれた。会長は前日に来ていてフィクサーと話を済ませているようだ。私の膝に今朝発売の週刊誌を置いた。あの記者の殺し屋の写真が入った記事だ。そのまま無言で塾の本部がある屋敷に車が入った。
 書斎に通されるとすでにフィクサーがコーヒーを飲んでいる。
「昨夜彼と話したが、残念ながら決裂したよ。この記事も読ませてもらった」
「元幹事長の要求は?」
「私の持っている赤坂の土地を半分要求している。それだけじゃなく亡くなられた会長の土地も手に入れる予定だそうだ」
 長男と組んだのだ。長男は赤坂の土地のことを知らされたわけだ。
「もちろん私は断った。会長と組んだのだからね」
「ありがとうございます」
「どうする?」
「まず殺人犯を追い詰めます」
「だが殺人犯を殺されたら?」
「実は」
 私は鞄の中からファイルを出す。
「これは秘書とまだ反主流派のボスだった元幹事長との交渉の場面を撮った写真です。











足掻き8

「困ったことになった」
 カオルの言葉で東京に舞い戻った。わざわざカオルが駅まで迎えに来て病院に走る。病室には秘書を迎えに行った番頭が寝ている。
「歳を取りました」
 どうも東京に秘書を連れて戻った夜にホテルで襲われたようだ。
「彼は即死です。首を絞めたのです。私は物音で覗いた時に刺されました。あの殺し屋です」
「こちらの札を1枚消したのですね?」
「それだけじゃないの。長男が相続を認めない訴訟を起こした。よりによって私が父を殺したと」
 ドアが開いて探偵が入ってきた。
「それは調べてみました。長男に付いた弁護士は新党の党首のお抱えです」
「彼はどうしようと?」
「赤坂の資金に目を付けたのです。こちらで裏金を押さえていますからね」
「殺し屋を抑えるわけにはいかないかな?」
「探しているが難しい」
 探偵はかなり手を尽くしているが網にかからない。
「よし第2弾であのコンビニの防犯ビデオの映像を使おう。取り敢えずトラックから飛び降りた写真を載せよう。それから探偵は秘書が殺された病院の監視カメラをすべて調べてください」
「私は?」
「会長の弁護士を呼んで対策を練ってください。私はフィクサーに会ってきます」
 さっそく警備会社の社長に連絡を入れて一緒に甲府に行くことにした。









足掻き7

 久しぶりに大阪に戻って新聞記者と馴染の寿司屋で会う。彼も今はキャップとして『白薔薇』のママの特集を書き続けている。最近の喪服を着たカオルが写っている。すでに会長の死が伝えられていて彼はカオルが会長の暗い部分を引き継いだと勘違いをしている。
「カオルは会長の実の息子だよ」
「なら息子を抱いていたわけに!」
「あれはカオルが撒いた噂だよ。会長はカオルのグループの柱の会社を譲った」
「それで相続がもめているのだね?」
 すでに手帳にメモを入れている。おそらくこれを記事にするのだろう。
「これを見てくれませんか?」
 東京の大手の週刊誌だ。『あれからの赤坂』という見出しが付く特集が始まった。私はペラペラとページを繰る。
「かなり精密な情報だよ。誰が書いている?」
「調べてみたが書き手は分からない」
「これだけの情報を持っていて公開するのは元幹事長の新党首しかない」
「フィクサーでは?」
「彼とは会長が死ぬ前に和解が出来ている」
「こちらも赤坂の特集をという声が出てるんだ」
「なら会長の不審な死から切り込んでみたら?」
「情報はもらえるか?」
「また送っておくよ」
 8時になっているのを見て彼と別れてサエを店に迎えに行く。











足掻き6

「どうした?」
 葬式が終わってカオルと八重洲の地下で寿司屋で別れの夕食を取る。帰るという私に東京駅までついてきた。全家族反対という中での葬式だった。
「なんだか急に寂しくなった」
 私は無言で冷酒を入れてやり乾杯する。最後だと言ってからもう5本が空いている。
「私ってどうすれば?」
「統帥って言うタイプじゃないがな。親父のお土産の赤坂は終わらせよう。それから考えてもいいのじゃないか?」
「手伝ってくれるの?」
「いい友達として」
「まず何からすれば?」
「弁護士に会社の登記を急がせるんだ。それがないと赤坂の処分を進められない。それから番頭に秘書を内々に呼び戻させる」
「今日は大阪に戻ってサエを抱くんだ」
「それは抱くさ」
「明日一番で帰られない?」
「駄目だ」
「だったら私が大阪に行く。新幹線の個室で2時間たっぷりあるわ」
 もう立ち上がっている。
「予定通り家に帰るから」
「いいよ。帰るまでの体頂き!」



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学生時代に書きためたノートの埃を払って万年筆の文字を打ち直し始めた2作目です。この作品は未完で今回はなんとしても完成したいです。

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